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デリカシーの機微が問われる現代社会のさまざまな局面に、ぼんやりと警鐘を鳴らす無神経なコラム。

アーカイブ: 2009/07/29

第22回 「噛まぬなら落としてしまおうホトトギス」

第22回 「噛まぬなら落としてしまおうホトトギス」

どうも、2週間ぶりです。

ご存知の通りこのコラムは、世にはびこるデリカシーという名の
偽善と欺瞞について考える、熱血硬派な社会派コラムなのであって。

当然、その執筆者である私は、デリカシーの粋を知り尽くし、
デリケートな所のかゆみを自分で治せる、デリカシーの猛者です。
人は私のことを陰でフェミニーナ軟膏と呼んで慕っています。

しかし、やんぬるかな、そんな私も「締め切り」に対する
デリカシーだけは、すこぶる甘い。
それはもう、中学生男子の将来設計のように甘い。
その甘さたるや、「マックスコーヒーだと思って飲んだら、
福田の締め切りだった
」と勘違いされるほどである。

そして、喩えに凝るあまり、今、多くの読者を理解の対岸へ
置いてきぼりにしている気がするのですが、みなさん大丈夫でしょうか。
つまらなくてもこれが俺の持ち味なので、がんばって付いてきてください

ともかく、いくらこの連載のタイトルが
『気まぐれフクスケのぼちぼち更新コラム』だからといって、
さすがに2週連続で更新を落とすと、
『大塚ニューコーポ』での私の立場がなくなる。
ていうか、もうほとんどない。

つい先日も、8月更新予定の単発企画の制作をしていたのだが、
さまざまなシチュエーションの下、外で写真を撮るというこの企画で、
私は被写体として脱いだり裸になったり裸の上に食べ物を乗せられたり
なんだかやたらと体を張らされるモルモット的な立場だった。

なんだか最近こういう役回りが多いな…とは思っていたが、
よく考えたらこれは要するに、「言葉で笑いをとれない能無しは、
体を張って笑いをとるしかないぞ
」という戦力外通告だったのか。

やばいなあ。
じわじわと崖っぷちに追い詰められてきている気がするのよ。
周囲の顔が片平なぎさに見える瞬間だ。

差別的なことを言うつもりはないけど、現実問題として、
頭を使って笑いを取る人間は、体を張って笑いを取る人間を見くびっていると思うわけ。
つまり、知らず知らずのうちに体を張らされているということは、
マイルドにフェードをかけながら引導を渡されているのと同じことだ。
それだけは、ええいああ、なんとしても避けたい。

おもしろきゃいいとは思っているが、対等じゃないのは嫌だ。
少なくとも、裸になったり痛がったりして笑わせるのは、俺のガラじゃない。
だから今はまだ、がんばって頭と言葉を使ってコラムを書こうと思う。

とはいえ、私が締め切りや計画さえきっちり守る人間だったら、
事態はもう少しどうにかなっていると思うのだ。
なぜ、なーぜこんなにも締め切りを守れないのかなこの俺様は!
という問題は、下山事件以上に戦後史最大のミステリーなのである。

昔はそれでも、なんとかなってたのよ。
さながら窮鼠が猫を噛むように、火事場の天才的能力が発揮できる
ギリギリの「追いつめられ」のデッドラインを心得ていたもの。
それが、いつしか追いつめられすぎて、猫にのどぶえを
噛み切られてジ・エンド
になることが増えてきた。

そうなのだ。
チョロQが、一度うしろに引かなければ走れないように、
私は生まれてこの方、追いつめられることなく、
自分から猫を噛みにいったことなんてないのかもしれない。
だとしたら、ちょうどいい追いつめられ方のタイミングを
見きわめられなくなってきた勘の鈍りは、私にとって死活問題だ。

「締め切りを守って、なおかつおもしろいものを書く」ことが両立できない人間は、
「締め切りを優先させて、そこそこのものを書く」か、
「締め切りは破るけど、超おもしろいものを書く」か、
どちらかしか、生きる道がない。
そして後者の道は、売れるか偉くなるかしないと認められないのです。
人は誰もがリリー・フランキーにはなれないのですからしてー!

窮鼠にしかなれないのならば、計画的に窮鼠になるしかない。
だったら私は、「窮鼠になるテク」を磨きたい。
窮鼠初段になりたい。

誰か、『猫に噛みつく窮鼠力』というタイトルで
ビジネス書でも出してくれないでしょうか。
もしくは、『片平なぎさは、なぜ崖に犯人を追いつめるのか』という新書でもいいですから。

そんなわけで今とにかく私は、
遅れたコンテンツの更新を取り戻すために、
次の更新がさらにまた滞っていくという悪循環の回し車を、
カラカラカラカラ走っているハムスター
である。

ああ、今なら連載時の作画の乱れを単行本収録時に直すために、
本誌の連載を休んでいた富樫義博先生の気持ちがわかる。
カラカラわかる。

モルモットになったりネズミになったりハムスターになったり、
どうにもげっ歯目なキャラから抜け出せない私なのだった。
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