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肉布団京一の作文教室

宇宙 人(うちゅう じん)のSF絵日記 vol.3

おれの名は「宇宙 人(うちゅう じん)」。

地球から遠く離れたある惑星から来て日本に帰化した、ほんのりワイルドな地球外生命体だ。

先週予告したように、おれはこないだ人生で初めて「合コン」というやつに参加してきた。

・・・・なに?

結果が気になるだって??

黙ってこれでも見やがれってんだ


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      おれとまきこちゃん(46)のツーショット


ま、物珍しさも手伝ってこんなところよ

得意のエイリアンジョークがバッシバシ決まってたからな

しかしだ

こんな調子で気分を良くしたおれの気高きミッションであるところの「地球外生命体の地位向上」に水を差す不届き者を見つけちまった。

とにかく見てくれ


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     2年1組 呂比須ワグナー タイトル『熊人』


これは、「かっぱ寿司presents 第1回創作宇宙人コンテスト」で審査員特別賞に選ばれた高知県在住の呂比須ワグナーくんという小学生による作品だ。

はぁー

おれ、悲しい通り越してもうわかんないよ

なぜに熊と足し算だ?

なぜにその目つきだ?

今回ばかりは頭にきたので絵以外にさしたる特技のない怒りに震えながら描いた怒るおれの自画像を見せてやろう。

これだ。


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               怒りの自画像


これできちんと伝わったことだろうな

おまえらのクソの足しにもなりゃしない悩み相談に乗ってやりたいけどさ、今日この後、英会話教室なんだわ。

まというわけで、今日も最後は、地球上で活躍するおれの仲間を紹介して締めたいと思う。


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コードネームはどんぐり。特技は「4点ポジションからのひざ蹴り」


あばよ

宇宙 人
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宇宙 人(うちゅう じん)のSF絵日記 vol.2

おれの名は「宇宙 人(うちゅう じん)」。

地球から遠く離れたある惑星から来て日本に帰化した、ちょっとお茶目な地球外生命体だ。

突然だがお前ら、『トイストーリー3』は見たか?

エイリアンのおれが言うのもなんだが、あれはいいぞ。


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          見事な銃さばきだったぜ

こんなシーンあったかどうか、どころかこんな奴が出演してたかどうか、体の部位のディティールがぞんざい過ぎやしないかと、まあ出るとこ出たら訴訟にでもなりかねないが、それはともかくとしてだ。

おれの崇高なる野望であるところの「地球外生命体の地位向上」を阻みかねない輩をまた見つけてしまったんだ。

まあこれを見てほしい

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     3年2組ラモス瑠偉 タイトル『夢の宇宙人』

これは、「かっぱ寿司presents 第1回 夢で見た宇宙人コンテスト」で準グランプリに選ばれた京都府在住のラモス瑠偉くんという小学生による作品だ。

はぁー

おれはついぞ悲しいよ

なんでだ。

なんで足の処理はそんななんだ?

目つきもずいぶん悪いしよ

前回も言ったようにさ、おれとお前らはそれほど大差ねぇんだよ

今回も絵以外にさしたる特技のないおれが、下半身込みの無修正自画像をプレゼントだ。

ほらよ


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              おれの自画像


・・・うんまあ

絶句しちゃうお前らの気持ちが分からないでもないよ

ちょっと虫じみてるのね、おれって

で、で、で、でも、これでおれの全てを知ったと思うなよ

おれだってセール時期に街に繰り出したりしたいから今はこうやって世をしのぶ感じだけど、まだまだ月の満ち欠けとか気圧の関係とかで、フォルムは色々変わっていくんだからな!

・・・と色々払しょくできたところで

悩めるお前らの宇宙の藻屑同然の悩み相談に乗ってやりたいのは山々だけどさ

おれ実は、これから合コンなのよ

ま、次回その成果については報告するからよ

今日はこれくらいでご勘弁、つうことで。

最後は、地球上で活躍するおれの仲間を紹介して締めたいと思う。

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     特技は遷都。コードネームは「しかあたま」


あばよ

宇宙 人
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宇宙 人(うちゅう じん)のSF絵日記 vol.1

おれの名は「宇宙 人(うちゅう じん)」。

地球から遠く離れたある惑星から来た、地球外生命体だ。

そんな一介のエイリアンに過ぎないおれが、今年の春、晴れて日本に帰化することが出来たある理由についてはこのブログで追々説明をしていくとして、おれは憂いている。

何はともあれこれを見てほしい。

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    4年3組 宮沢ミッシェル タイトル『宇宙人』

これは、「かっぱ寿司presents 第一回宇宙人似顔絵コンテスト」で見事グランプリを勝ち取った、東京都に住む宮沢ミッシェル君という小学生が書いたものだ。

…おれは悲しい。

日本は差別や格差がない国だと、祖国の両親は言っていたのに。

こんな宇宙人宇宙人したステレオタイプ、本当に信じてるやつらがいるなんてさ。

こんな誤解が繰り返されないように、絵以外にさしたる特技のないおれがこしらえた自画像を掲載しておきたいと思う。

これだ。

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             宇宙 人の肖像画

どうだろう。

お分かりいただけただろうか。

おれ「宇宙 人」は、お前らと一見ほとんど変わりないということを。(では逆にどの辺りが異なっているのかという話もまた追々)

さて、誤解の芽をすっかりつんだところで、このブログ「宇宙 人のSF絵日記」の主旨を説明しておこう。

まずおれの最大の目的は「地球外生命体の地位向上」だ。

おれは、たまたま運よく史上初めて日本国籍を取得し、帰化に成功することが出来たけども、これはほんのきっかけに過ぎない。

いつか故郷の両親と一緒にこっちで暮らせる日を夢見ている。

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            おれの愛する両親

こんな愛くるしい両親との生活のためにも、この絵日記を一人でも多くの人に見てもらい、エイリアンの素晴らしさをたくさんの人に理解してもらう必要がある。

そこでお前らが知らない最新の宇宙事情を報告して興味を引いたり、時にはお前らが抱える宇宙のチリにも及ばないちょこざいな悩みに、おれが宇宙的視野を駆使して答えてやってもいいとすら思っている。

というわけだから何か聞いてみたいことがあれば、このブログのコメント欄にでも気軽に書きこんでみてくれ。

まあとりあえず第一回はそんなところかな。

最後に、地球上で活躍するおれの仲間のひとりを紹介して締めてみようと思う。

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    コードネームはマライア。特技は「暗殺」


あばよ

宇宙 人
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『新しいむかしばなし』連載終了のお知らせ

  • 2009.07.08 Wednesday
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振り返ろうと思う。

ネットテキストなのに、分量とか行間のみっちり感が厄介だった連載であることはとうに分かっていた。

しかしそれを分かっていながら止められなかったのは、アイデアが次々あふれ出るからである。

これを見てほしい。

momo
        ≪桃太郎≫


私は、どんな物語を書く際でも必ず、こうした入念でかつ綿密なイメージ画像を描き、そこから作品世界を構築する。

こうした試みの裏側には、私が小説を書く者である以前に、絵を描く者として活動してきた、自身の半生が色濃くあるといえるだろう。

一たび筆をとれば神童だのなんだのとあげつらわれて生きてきた私にとって、何かを描くことは、バケットをかじることや、そのバケットにハムやチーズを挟むことや、そのバケットが最後には糞になり糞をひる時には得てして尿が出てしまうことと同じくらい、要するに必然的なことだったといえる。

だから私はこういうものを描いた。

かぐや
        ≪かぐや姫≫


「書くために描くのではない。お金が欲しいだけなのだ」、という私の往年の名言が、どれほど君たち庶民に伝わるのか、はなはだ疑問ではあるが、ひとつだけ言えることはつまり、私にとってこの「新しいむかしばなし」という連載は、ひとつの生きる糧であったということだ。
その証拠がこれである。

さるかに
      ≪さるかに合戦≫


作品には作家自身が投影されるとはよくいったものだが、今回を含む全24回が、私の分身であることはこれを見ればよりくっきりと分かるはずである。


しんでれ
   ≪白雪姫VSシンデレラ≫


しかしまあ、こうした作業で私は消耗するのである。
ゆえに今回で、この連載はひとまず終了。

私が描くのを得意とする世界的な人気者の肖像画をもって、最後の挨拶とかえさせていただきます。

みっきー
      ≪舞浜においでよ≫


肉布団京一
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第十一話(最終回)

シンデレラが部屋に入るために扉を開け、そこを白雪姫の面影乏しいなんか気持ち悪いの、が急襲する。

咄嗟に反応したシンデレラは、召使時代に暗闇での小動物への対応などで培ったその俊敏さで、毛むくじゃらで香ばしさと生臭さの同居したにおいを発するそいつの、うでぃおー、とか、めじゃれー、とか言いながらのタックルをぴゅいっと、かわす。

なぜかそのタイミングで再び、不自然に、扉は閉まる。

密室に二人。

タックルのどさくさにまぎれて部屋からの脱出をも考えていた白雪姫としては、もう何が何やらという感じで、ていうかこいつ綺麗な格好して腹立つんですけど、と、シンデレラを睨みつけ、そもそも二人で仲良くやっていこうなんて到底思えなかったし、なによりシンデレラ、かなりの臨戦態勢に入っていた。

シンデレラはシンデレラで、アドベンチャーの最中に不意に入った部屋でこんなのに襲われて、元々の育ちの悪さもあるし、おいそこのその汚い奴なんばしよっとね、という素直なむかつきもあり、結果的に、猛々しい眼差しでファイティングポーズをとるような、体の温まりきったファイターあとゴング待つだけ、という、そういうことに落ち着いていたのだ。

カーン。

なんか、鳴った。

女性同士のガチの喧嘩を実際に目の当たりにしたことのある人は分かるだろうが、最初に行われるのは大体が髪や服の引っ張り合いである。

引っ張り合ってなにがしかの優劣がついたところから、奇声を発しながら引っ掻いたり、マウントポジションから引っ掻いたり引っ掻かれたり、あとかじったりかじられたりかじられてもかじったり、あと引っ掻いたり―あれをキャットファイトと最初に命名した人は天才―まあ色々あって決着というのが、女子校の放課後に体育館の裏などで一年を通じて季節を問わずによく見られるタイプの女の決闘であり、今回のこれもそういう類のものだったと言っていい。

結果。

白雪姫、完膚なきまでにやられる。

今の見てくれはどうあれ、そもそもが姫である彼女はこうしたシビアな「争いごと」とは鋭く無縁だったわけで、それに引き換えシンデレラは今の容姿はどうあれ、そりゃもうウルトラハードな日々を送って来たのであって、そうした日常が育んできたたくましさには到底太刀打ちが出来なかったのである。

とうに消え入りそうな虫の息である白雪姫をちらりと見つつ、シンデレラは部屋を見渡す。

足元には白雪姫のものであろう糞尿が、既に床の木目などにまでみっちり染み付きこびりつき、元々は「白くてがらんどうの部屋」だったろうに、経年とはあなおそろしや、という狼狽を隠せない。

だだだだだだっだっだっだっだっだっだっだっだ。

何やら聞こえる。

だっだだだだっだっだどどどどどっどっどっどっどーーーーー

すごく聞こえる。

・・・・・・・

ピタッとやむ。

どん、ぎぃぃぃぃぃぃぃ。

扉が、勢い良くちょっと開く。

白雪姫の体が邪魔になって、扉の勢いが、死ぬ。

ざざざっと動く白雪姫の体。

いやでも視界に入る、賑やかな人々。

ぱぱかぱんぱんぱーん。

シタールが出せる最大限ファンキーな音。

陽気な顔をした派手な衣装を身にまとった、満面の笑みを浮かべた・・・・ま、じょ?

魔女だ。

あの魔女だ。

そう気づくや否や、魔女と目が合う。

シンデレラを視界にとらえその像が網膜に映し出され、脳にそれが伝わり認識した魔女の、顔はみるみると青ざめていく。

さっと視線を落とすと手元には何やら看板的な、そういうのを持っている。

魔女はそれを咄嗟に隠す。

ちょっと見えた範囲で、シンデレラは「ドッキ・・・成功」までは確認した。

リ、だろう。

隠れていた文字は「リ」だろうが。

魔女は引き連れた賑やかな人々と一緒に部屋に入ってきて、シンデレラ以外にもう一人、部屋にいることを確認する。

・・・・・・・・

いまは、もう、動かない。

そもそもが白雪姫が仕掛けてきた争いであり、さらに、先程の扉を開けた勢いでとどめをさされたのだろう。

だがそんな細かい状況は彼らには関係がない。

2年越しの監禁ドッキリ、というどだい無茶な企画がハッピーエンドで終わると思っていた彼らの思い込みの強さは、なかなかのものだ。

魔女「お、まえ」

シンデレラ「・・・」

魔女「台無し、じゃないか」

シンデレラ「・・・すいま、せん」

目の前でドッキリをかけ大成功を告げるはずだった白雪姫がボロボロの遺骸となり、その近くで軽傷は負っているが元気に佇んでいるシンデレラがいるという状況は、彼らにとっては実に、「十分」だった。

魔女「逃がさない、からな」

シンデレラ「・・・はい」

あの王子も苦く笑っていた。


・・・・・・・・・・・・・


少し時が経つ。

シンデレラ、とかつて呼ばれていたその女は、いつのまにか二人の娘を産んだ。

あれは誰の子なのか、と口にすることはタブーとなっていた。

城中の誰もが知っていたが城中の誰もが知らないことになっていた。

その娘の一人は生まれてすぐに城を追い出され、とある目の釣りあがった手厳しい継母の下に預けられた。

もう一人は、城で大事に大事に育てられた。

シンデレラ、とかつて呼ばれていた女は、いつのまにかコスプレを趣味とするようになり、若干の魔法とかもたしなみ、対外的には真っ白な部屋に閉じ込められつつも、一人っきりでもまあまあ楽しんで、何やら幻を見てはボソボソとしゃべるという日々を送っていた。

そんなでも、城に残した娘を可愛がっていたかつてシンデレラと呼ばれていた女だったが、ある日、とある決断をする。

とある決断・・・・・・・・・・・



あの娘の大好きなリンゴに毒を仕込みながら、メルヘンなカボチャの馬車をせっせと仕込みながら、一人ごちる魔女がそこにはいたのだった。

ひすとりー、りぴーつ、いっとせるふ


はい。




めでたしめでたしだね。





終わり
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第十話

地獄のような日々でした。


真っ白な部屋にぽつねんと一人。


すっかり閉じ込められてただやみくもに呆然とするだけ。


開かずの間、という言葉があるけれど、開かずの間は外側からだけじゃなくて内側からも開かなかったりするんだぞ、という所を是非とも主張したい私です。


こちら側にはドアノブすらないのです。


ただ壁に切れ目が入っている、扉の様なもの、がそこにはあるのです。

終わり。


かと思うけれど・・・


でもです。


しかしです。


部屋の中身をよく吟味してみれば隠し扉があったり、その奥は食料庫だったり、温い便座の水洗便所が完備されていたり、まあ生活するには困らないっちゃあ困らないそういう環境がとりあえずはあって、風呂はないんだけどね、えっとそのこれ、なんですかシェルターなんですか、と、聞きたくなるようなまあとにかくそういうのだったんです。


窓ひとつない真っ白なこの部屋で、とりあえず白雪姫に出来ることと言ったら脱出の方法を考えるというそれに尽きたわけですが、いかんせんなにかその糸口となるような、例えば鋭利な感じだったり鈍器チックなものであったりというのは、すべからく無くて、仕組まれたように無くて、となると、とりあえず食うには困らない(お風呂はなかったですけどね)この状況を生かして、自分がこの部屋に入って来た扉こそ、自分が外界にアプローチを図る最後の手段なのだろうと自らに言い聞かせながら、その策を練っておるのでした。


ただ。


姫ですから。


我慢強くはないのですから。


あまり色々と考えることに長けてはいないのでして。


扉の様なものの前でうとうとまったりまどろんでまどろんで、というような茫漠とした時間をただなんとなく過ごしていたら、結構な年月が経っていたのです。


チャンスが無かったわけではありません。


時折、何かの拍子にこの部屋に不意に迷い込んだ誰かが、扉を開けることは幾度かあったのですが、そういう時に限って白雪姫はカンパンだのアルファ米だのといった食よりも保存という機能が前に出た非常食をチビチビやっているのです。


ひぃぃぃぃとか


うぇぇぇぇとか


北斗の拳の雑魚キャラよろしく、白雪姫のおそらくは見てくれを視界にとらえ(だって風呂が・・・)、おののいて去っていくので、咄嗟にそちらに向かい、何とか脱出を試みるのですが、いつもいつでもすんでのところで、ダメなのでした。


その日は、何か狼煙めいたものが上がったような全然上がってないような、まあどっちかよく分からないというのが正直なところですがとにかく直観的にそう思って、ハナから扉の様なその前に、げへげへいいながら待ち構えていたのです。


・・・・


またいくらかの時が流れました。


狼煙なんて上がっていなかったのだ、と諦めることはたやすく何度もそう考えてもいたのですが、そうして諦めた途端にそこが開かれでもしたら、白雪姫はもういよいよもって再起不能に陥ってしまうと考え、それも出来ず、飲食せずとも糞尿まみれで(なぜだか糞も尿も留まるところを知らないのです)、やはりずっと待っていたのです。


・・・・・


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?


遂に開きました。


そこにはうら若き、なにか美しさをかさに着たようなそういう忌々しいタイプの女がやや驚いた表情で立っておりました。


別段、その女に恨みがあったわけでもないのですが、たまらず、何もかもがたまらず、ぎぇぇぇぇとかひょぇぇぇぇとか、なんかそういう魔女的な奇声を上げつつ、襲いかかってしまう白雪姫なのでした。


あまりにも醜すぎる、女たちのバトルが、その瞬間に何の前触れも前兆もなく突然どっどーんばっしーんがっしゃーんと始まったのですよ。



続く(次回、遂に最終回!)
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第九話

幸せって束の間

つまらないOL風情が会社の屋上で星でも見ながらさもつぶやきそうなさもさもしいセリフが口をつくことさもありなん。

あーし、すっかりマリッジブルー。

だって、いつの間にか体の良いただの「お姫様」にいつしか完璧に落ち着いちゃったんだもの。

こうも分かりやすく型通りにプリンセスプリンセスしたプリンセスになってしまうと、「どうも姫です。わたくしが姫なんでございます」と、言葉使いもなんだかすっかりこうなのです。

とは言いつつも、まあなんだかんだでそんなに悪くない暮らし向きなわけで、だってダージリンとかアッサムとかジャスミンとか?なんかそういう香りばかりが良い色つきのお湯がしばしば振る舞われちゃうような?そういうので食事と食事の間の時間をつぶすみたいな?つぶれた時間を丁寧に裏ごししたピューレを、予め用意しておいた生地と混ぜてねってこんがり焼いたらおいしい源氏パイ的なものが、え、てか源氏パイの源氏ってなによなんなのよ!あんた!!みたいな?ああなんだかよく分からないけれど、とにかくそんなこんなで時間がじゃんじゃん過ぎて、なんやかんやであーだこーだのすったもんだで2年の月日が経ちました。



ずばーん(時間経過を知らせる音)



えーとぉ・・・・

・・・慣れた。

慣れちゃった。

でも習慣というのはしばしば怠惰を生み出します。
怠惰な毎日。
そこでひらめいちゃった。

取り巻きの目を盗んでのアドベンチャー。
それっきゃない。

それほどにこのお城は広い。

で。

わたくしは、城内アドベンチャーに出発したのであります。

目に着く扉は全部開けて食べ物があれば食べ飲めそうなものはすすり、まるで灰をかぶってたあの頃に戻ったかのよう。

そしたら。

そしたらですよ。

なんか一個だけ、どうにも奇妙な扉が、目につくのです。

一言で言えばそう、何か「邪気」のようなものがそこからはにゅるりと、鍵穴や扉の隙間からにゅるにゅるりと、目には見えないはずのそうしたアレがなんか強く感じられてたまらないのです。

あまりにもたまらなかったので。

オープン。

じゅびじょめじっちゃんぼう!!!!

あまりにも醜い、女の戦いが、なぜだかその瞬間に何の前触れも前兆もなく突然どっどーんと始まったのです



あともう少し、続く
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第八話

白雪姫はすぅすぅしたので目を覚まし、すぅすぅする原因は非常に簡単なもので、要するに全裸だったのだ。

なぜ自分がこんな場所にいるのか

まずはベタだがそこからである。

眠っていたベッドが先日までのものとは違う、というか「ウヨウヨ」とか「ワラワラ」とか言う表現ばかりがしっくりとくるあの五人組が、既に周りにいないことにややさびしさを覚えたのも事実。

だが白雪姫としてはそうしたわからなさと同時に「ああでもわたしって姫だし。姫ってこんなだし」と納まるところに納まるべきものがしっかと納まったんだという納まりの良さへの一定の理解を示していた。

けど。

どうやらお城の中らしいことは分かって、なぜなら窓からは見慣れた城壁も城門も門番も見えるし、部屋の中だって自分のお気に入りの調度品やら何やらが溢れていて・・・っていうかよく見たら実家だった。

不思議体験→実家のベッド、の流れは禁断の「夢オチ」を彷彿とさせるわけで、それは既に長期連載と化している本シリーズの根幹を揺るがしかねないスキャンダルである。

でも大丈夫、全然夢じゃないことが白雪姫にとってはっきりと分かったのは、自分の体に以前にはなかった異変、全裸だからこそ分かるエマージェンシー、つまるところ、両の乳首が、白かった。

それがあのお母様がくれたリンゴを食べたせいなのか、それとも別の理由故なのか、いまいちピンとこなかったが、はっきりしてるのは差し当ってビーチクがろいしーで、「白雪姫」の名をまさに欲しいままにするにふさわしい状況がはっきりここにある、ということだった。

さあどうしようかどうしたもんか何をどうすればなにがどうなっていくのか、とノーヒントノーチャンスな状態のまま考えあぐねていた時、何やら城門の方が騒がしくなり、とりあえずベッドのシーツを身に巻きつけてそちらに目を向けると、なにやら大変なことになっていた。

奇。

間違いなく、あの状況を漢字一文字で世相とかを反映しつつ表現するならば、そうなる。

(象+金髪パンク野郎+泥・煤・灰だらけの女)×シタール-理性=・・・・

こんな方程式は誰にだって解けやしない。

でも解けなくたって現にこうして「ある」わけだから、バストサークルイズホワイトな現状をなんとか受け入れたのと同様に、これも受け止めなくてはならないのだろう。

だってここは実家なのだから。

どんなに理不尽だと思っても、こっそりコードレス電話を使えば怒られ、ズル休みした日にスーパーにお菓子を買いに行けばチクられ、風呂場の扉は完全には閉まらない。

実家とはつまり、そういう場所なのだ。

さて、では考えてみよう。

この実家が今、どういった状況下にあるのか。

適当に服を見繕って白雪姫は部屋を出る。

すぐ右に曲がって左手にある三つ目の部屋。

お母様の部屋。

ノックもせずに扉に手をかけぐいっと押しこむと、部屋は壁から天井から全てが真っ白で、がらんどうだ。

お母様の大切にしていた鏡も何もかもが、そこにはなかった。

不思議に思って部屋に入り呆然と立ち尽くしていると、背後で「がっしん」という大きな音がする。

「ざぼっ」と振り返ると、もちろん扉が閉まっていた。

ご想像の通り、鍵で「くぴーん」と施錠されており、白雪姫はあっさり閉じ込められていた。

乳首も白いし私どうなっちゃうの。

素直にそう思うばかりの白雪姫であった。



まだもう少し、続く
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第七話

あーし的に、舞踏会から帰って来てからの生活は悪くなかった。

相変わらず灰まみれだしあんま風呂とかも入れない毎日だったからこういう言い方が果たして正しいのかどうか、微妙なラインだったけど

垢抜けた

っていうのがなんか一番しっくりくるような、そういうサッパリ感だった。

でもそんな爽快リフレッシュなあーしに、マンデラとアラファトとスーチー含む継母一同、何かとあらぬ疑いをかけたものだった。

マンデラ「やいシンデレラ、ここんとこずいぶんご機嫌じゃないか。なんだいなんだい、親友のドブネズミが婚約でも発表したかい?」

アラファト「何言ってるのマン姉さん違うわよ。シンデレラが親友だったドブネズミと友情を遥かにこえて晴れて結納を交わしたって話じゃないの」

スーチー「マン姉もアラ姉も読みが甘いわ。シンデレラは婚約してたドブネズミにすんでのところで捨てられて、落ち込みながらもめげずに頑張ってるのよ。ねぇ?」

すごいイマジネーションだと思った。

人は、いじわるをするという目的のためだけにこんなにも色彩豊かにあらぬ物語をクリエイトすることが出来るのだわ、と感心するばかりだった。

シンデレラ「とんでもねえですよ。奥手なもんで、ドブネズミさんにはまだ声もかけられてねえです。お姉さま方に恋の手ほどきをいつかしてもらいたいもんです」

こういうあからさまで巧みでOLの皆さんが今日からでもすぐに使えそうなおべっかにも、どこか誇りを持って取り組むことができる自分がいることに、あーしは喜びを覚えていた。

それもこれも、あの一夜だ。

あの一夜で浴びた視線の数々が、あーしをこうもいい意味で増長させていたのだ。


増長しつつの、ある日のことだ。

明らかに街がどよめいていた。

理由は簡単だった。

白馬に乗った王子様、とはとても言い難い、サラサラだったヘアが無重力を感じさせるほどに逆立ち、鋲やらクギやらドクロやらで全身をガッチガチに固めた、舌も俄かにはみでつつ目もドロリンとした元王子が、シタールの重奏の音色響き渡る中を専用のエレファントに乗ってやってきているのを目の当たりにしたのだ。

そらどよめくわな。

思わず、あーしは汚いまんま、忌まわしきお屋敷をえいやっと、飛び出した。

ちょうどエレファントの巨大な左後ろ足が、お屋敷の目の前を通過しようとする時で、元王子はあーしにすぐ気が付いた。

シンデレラ「なにしにきたんだい?」

元王子「ど、どうだ?これで」

シンデレラ「60点だね。赤点ぎりぎり」

元王子「・・・赤点」

シンデレラ「あと40点はなんだかわかる?」

元王子「・・・ちょっと」

シンデレラ「ばかだねぇ。ばかばかばかばかばかあーしに決まってんだろ?あーしが横にいれば100点満点ですらなくなるよばか」

元王子「え・・・てことは」

シンデレラ「行ってやろうじゃないかあんたの城に」

元王子「ほほんと?」

シンデレラ「身なりはこんなでもね、嘘はつかないあーしだよ。ほら、あーしの靴貸しなあんたが持ってんだろ気持ち悪いボケくそおたんこなす」

こうしてあーしはエレファントに揺られて城に向かった。

その後、継母たちがどうなったかはよく知らない。

従順な召使を失って、元々結束力のなかったあいつらのことだから、あっさり野垂れ死んでるかもしれない。

それはそれで、まあありだ。

だってあたし、いま、最高に幸せだもの。

てへ。


続く
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第六話

サラサラヘアの王子は、空腹を我慢できずにつまんだキノコでキメキメのテンションで、白馬に乗ってやってきた。

ラリラリ王子は、白馬からこの世のものとは思えぬほどデタラメなやり方で下に降り、小屋に入って来た。

王子「たのもー」

赤ドワーフ「なにやつ!」

王子「王子。知らない?森抜けたとこにあるお城の」

赤ドワーフ「え?ほんとに?だってなんか・・・」

王子「眼がとろんとしてるからって高貴な身分にあらずって、とんだ偏見じゃないかい」

青ドワーフ「我々としたことが!偏見や差別には小人一倍敏感であるべき我々としたことがっ!」

王子「まあまあ。僕だって君らとは違う種類の偏見にさらされてるからさ、分かるよそういうの」

緑ドワーフ「そいつはどうだか。そんなサラサラヘアたなびかせてさ、さぞかし陰毛もキューティクルなんでしょうよ」

青ドワーフ「おい!初対面の王子に言っていいことのレベルをはるかに凌駕してるぞお前!」

茶ドワーフ「そんなにキューティクルなんですか?」

青ドワーフ「お前もきくな!」

王子「そこはご想像に・・・」

青ドワーフ「答えるな王子も!」

赤ドワーフ「まあ落ちつけよ。王子がこんなとこに来たのには何か理由があるんじゃないですか?とか聞けよせっかくなんだから」

一同「・・・」

赤ドワーフ「黙るなよ!なんだよ、ベタは嫌いか?転じて、俺のこと全部嫌いか!」

王子「僕がここに来た理由はね」

赤ドワーフ「あー言っちゃうんだー聞かれてもないのに言っちゃうパターンなんだぁ」

王子「そこの、ほらえっと、ねぇ分かるだろ?君たちが密かにそこでそうやってさ・・・」

茶ドワーフ「なななななななんのことですか?ななななななぁ?」

緑ドワーフ「そそそそそそうだな。ううううううううん」

王子「素直なミニヒューマンたちだな。別にただでよこせって言ってるわけじゃないんだよ。ほらこれ」

王子が差し出したもの、それは職人技の光るあまりにも精巧に作られたドワーフ全員分の身の丈サイズのラブドールだった。

ドワーフ一同「・・・・」

王子「言葉を失うのも良く分かる。でもさ、よく考えてもみなよ、いま彼女はさ、現にああなっちゃってるわけじゃない…さすがにいたたまれないし、そもそも君たち彼女に…」

黄ドワーフ「王子さん!」

王子「はい?」

黄ドワーフ「これで、手を打ちましょう」

赤ドワーフ「お、おい、お前初登場でそんな」

黄ドワーフ「考えるまでもないだろ。白雪姫は確かにいいよ。ぐっと来る。でもさ、俺らだって馬鹿じゃない。彼女が自分たちにとって不釣り合いな存在だってことくらいは分かってる」

赤ドワーフ「おまえ・・・」

黄ドワーフ「王子さん、でも今回の取引には一つだけ条件がある。僕たちは彼女がここ数日、微動だにしないのをいいことに色々ないたずらをしてきました。いたずら、ってかわいげのある表現だけど、僕らの風体に不似合いなほどえげつないことも実際いくつかやっています。それを、そのなんていうか」

王子「不問だよ」

黄ドワーフ「王子さん」

王子「だってそうだろ?君たちだって男だ。男は、えげつない」

黄ドワーフ「みんな、聞いたか?」

ドワーフ一同「(言葉にならない声)」

王子「じゃあ行くよ。先を急ぐんで」

ドワーフ一同「(言葉にならないがなんとなくそう聞こえるような感じで)おしあわせに」

王子は、ぐったりとうなだれた白雪姫を小脇に抱えてカポカポと去っていった。

七人はそれぞれの性癖にあったやり方でラブドールを愛し、思いつく限りのいたずらにいたずらを重ね、森の奥でそこそこに差別をされながらも何となく幸せに暮らすのであった。

一方、王子は城に帰り、白雪姫を連れ帰った本当の目的を果たすべく、サラサラヘアの奥に潜む濁った瞳で、ベッドに横たわる白雪姫を見つめていた。

ちなみに、五人が施したえげつないいたずらのせいで、彼女の覚醒が大幅に遅れていることには、誰も気づくことはなかった。

何が行われたかは・・・私には書けない。

そしてふわっとも、七人は活躍しなかった、ね。


続く
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