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アーカイブ: 2009/06

(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第十話

地獄のような日々でした。


真っ白な部屋にぽつねんと一人。


すっかり閉じ込められてただやみくもに呆然とするだけ。


開かずの間、という言葉があるけれど、開かずの間は外側からだけじゃなくて内側からも開かなかったりするんだぞ、という所を是非とも主張したい私です。


こちら側にはドアノブすらないのです。


ただ壁に切れ目が入っている、扉の様なもの、がそこにはあるのです。

終わり。


かと思うけれど・・・


でもです。


しかしです。


部屋の中身をよく吟味してみれば隠し扉があったり、その奥は食料庫だったり、温い便座の水洗便所が完備されていたり、まあ生活するには困らないっちゃあ困らないそういう環境がとりあえずはあって、風呂はないんだけどね、えっとそのこれ、なんですかシェルターなんですか、と、聞きたくなるようなまあとにかくそういうのだったんです。


窓ひとつない真っ白なこの部屋で、とりあえず白雪姫に出来ることと言ったら脱出の方法を考えるというそれに尽きたわけですが、いかんせんなにかその糸口となるような、例えば鋭利な感じだったり鈍器チックなものであったりというのは、すべからく無くて、仕組まれたように無くて、となると、とりあえず食うには困らない(お風呂はなかったですけどね)この状況を生かして、自分がこの部屋に入って来た扉こそ、自分が外界にアプローチを図る最後の手段なのだろうと自らに言い聞かせながら、その策を練っておるのでした。


ただ。


姫ですから。


我慢強くはないのですから。


あまり色々と考えることに長けてはいないのでして。


扉の様なものの前でうとうとまったりまどろんでまどろんで、というような茫漠とした時間をただなんとなく過ごしていたら、結構な年月が経っていたのです。


チャンスが無かったわけではありません。


時折、何かの拍子にこの部屋に不意に迷い込んだ誰かが、扉を開けることは幾度かあったのですが、そういう時に限って白雪姫はカンパンだのアルファ米だのといった食よりも保存という機能が前に出た非常食をチビチビやっているのです。


ひぃぃぃぃとか


うぇぇぇぇとか


北斗の拳の雑魚キャラよろしく、白雪姫のおそらくは見てくれを視界にとらえ(だって風呂が・・・)、おののいて去っていくので、咄嗟にそちらに向かい、何とか脱出を試みるのですが、いつもいつでもすんでのところで、ダメなのでした。


その日は、何か狼煙めいたものが上がったような全然上がってないような、まあどっちかよく分からないというのが正直なところですがとにかく直観的にそう思って、ハナから扉の様なその前に、げへげへいいながら待ち構えていたのです。


・・・・


またいくらかの時が流れました。


狼煙なんて上がっていなかったのだ、と諦めることはたやすく何度もそう考えてもいたのですが、そうして諦めた途端にそこが開かれでもしたら、白雪姫はもういよいよもって再起不能に陥ってしまうと考え、それも出来ず、飲食せずとも糞尿まみれで(なぜだか糞も尿も留まるところを知らないのです)、やはりずっと待っていたのです。


・・・・・


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?


遂に開きました。


そこにはうら若き、なにか美しさをかさに着たようなそういう忌々しいタイプの女がやや驚いた表情で立っておりました。


別段、その女に恨みがあったわけでもないのですが、たまらず、何もかもがたまらず、ぎぇぇぇぇとかひょぇぇぇぇとか、なんかそういう魔女的な奇声を上げつつ、襲いかかってしまう白雪姫なのでした。


あまりにも醜すぎる、女たちのバトルが、その瞬間に何の前触れも前兆もなく突然どっどーんばっしーんがっしゃーんと始まったのですよ。



続く(次回、遂に最終回!)
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第九話

幸せって束の間

つまらないOL風情が会社の屋上で星でも見ながらさもつぶやきそうなさもさもしいセリフが口をつくことさもありなん。

あーし、すっかりマリッジブルー。

だって、いつの間にか体の良いただの「お姫様」にいつしか完璧に落ち着いちゃったんだもの。

こうも分かりやすく型通りにプリンセスプリンセスしたプリンセスになってしまうと、「どうも姫です。わたくしが姫なんでございます」と、言葉使いもなんだかすっかりこうなのです。

とは言いつつも、まあなんだかんだでそんなに悪くない暮らし向きなわけで、だってダージリンとかアッサムとかジャスミンとか?なんかそういう香りばかりが良い色つきのお湯がしばしば振る舞われちゃうような?そういうので食事と食事の間の時間をつぶすみたいな?つぶれた時間を丁寧に裏ごししたピューレを、予め用意しておいた生地と混ぜてねってこんがり焼いたらおいしい源氏パイ的なものが、え、てか源氏パイの源氏ってなによなんなのよ!あんた!!みたいな?ああなんだかよく分からないけれど、とにかくそんなこんなで時間がじゃんじゃん過ぎて、なんやかんやであーだこーだのすったもんだで2年の月日が経ちました。



ずばーん(時間経過を知らせる音)



えーとぉ・・・・

・・・慣れた。

慣れちゃった。

でも習慣というのはしばしば怠惰を生み出します。
怠惰な毎日。
そこでひらめいちゃった。

取り巻きの目を盗んでのアドベンチャー。
それっきゃない。

それほどにこのお城は広い。

で。

わたくしは、城内アドベンチャーに出発したのであります。

目に着く扉は全部開けて食べ物があれば食べ飲めそうなものはすすり、まるで灰をかぶってたあの頃に戻ったかのよう。

そしたら。

そしたらですよ。

なんか一個だけ、どうにも奇妙な扉が、目につくのです。

一言で言えばそう、何か「邪気」のようなものがそこからはにゅるりと、鍵穴や扉の隙間からにゅるにゅるりと、目には見えないはずのそうしたアレがなんか強く感じられてたまらないのです。

あまりにもたまらなかったので。

オープン。

じゅびじょめじっちゃんぼう!!!!

あまりにも醜い、女の戦いが、なぜだかその瞬間に何の前触れも前兆もなく突然どっどーんと始まったのです



あともう少し、続く
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第八話

白雪姫はすぅすぅしたので目を覚まし、すぅすぅする原因は非常に簡単なもので、要するに全裸だったのだ。

なぜ自分がこんな場所にいるのか

まずはベタだがそこからである。

眠っていたベッドが先日までのものとは違う、というか「ウヨウヨ」とか「ワラワラ」とか言う表現ばかりがしっくりとくるあの五人組が、既に周りにいないことにややさびしさを覚えたのも事実。

だが白雪姫としてはそうしたわからなさと同時に「ああでもわたしって姫だし。姫ってこんなだし」と納まるところに納まるべきものがしっかと納まったんだという納まりの良さへの一定の理解を示していた。

けど。

どうやらお城の中らしいことは分かって、なぜなら窓からは見慣れた城壁も城門も門番も見えるし、部屋の中だって自分のお気に入りの調度品やら何やらが溢れていて・・・っていうかよく見たら実家だった。

不思議体験→実家のベッド、の流れは禁断の「夢オチ」を彷彿とさせるわけで、それは既に長期連載と化している本シリーズの根幹を揺るがしかねないスキャンダルである。

でも大丈夫、全然夢じゃないことが白雪姫にとってはっきりと分かったのは、自分の体に以前にはなかった異変、全裸だからこそ分かるエマージェンシー、つまるところ、両の乳首が、白かった。

それがあのお母様がくれたリンゴを食べたせいなのか、それとも別の理由故なのか、いまいちピンとこなかったが、はっきりしてるのは差し当ってビーチクがろいしーで、「白雪姫」の名をまさに欲しいままにするにふさわしい状況がはっきりここにある、ということだった。

さあどうしようかどうしたもんか何をどうすればなにがどうなっていくのか、とノーヒントノーチャンスな状態のまま考えあぐねていた時、何やら城門の方が騒がしくなり、とりあえずベッドのシーツを身に巻きつけてそちらに目を向けると、なにやら大変なことになっていた。

奇。

間違いなく、あの状況を漢字一文字で世相とかを反映しつつ表現するならば、そうなる。

(象+金髪パンク野郎+泥・煤・灰だらけの女)×シタール-理性=・・・・

こんな方程式は誰にだって解けやしない。

でも解けなくたって現にこうして「ある」わけだから、バストサークルイズホワイトな現状をなんとか受け入れたのと同様に、これも受け止めなくてはならないのだろう。

だってここは実家なのだから。

どんなに理不尽だと思っても、こっそりコードレス電話を使えば怒られ、ズル休みした日にスーパーにお菓子を買いに行けばチクられ、風呂場の扉は完全には閉まらない。

実家とはつまり、そういう場所なのだ。

さて、では考えてみよう。

この実家が今、どういった状況下にあるのか。

適当に服を見繕って白雪姫は部屋を出る。

すぐ右に曲がって左手にある三つ目の部屋。

お母様の部屋。

ノックもせずに扉に手をかけぐいっと押しこむと、部屋は壁から天井から全てが真っ白で、がらんどうだ。

お母様の大切にしていた鏡も何もかもが、そこにはなかった。

不思議に思って部屋に入り呆然と立ち尽くしていると、背後で「がっしん」という大きな音がする。

「ざぼっ」と振り返ると、もちろん扉が閉まっていた。

ご想像の通り、鍵で「くぴーん」と施錠されており、白雪姫はあっさり閉じ込められていた。

乳首も白いし私どうなっちゃうの。

素直にそう思うばかりの白雪姫であった。



まだもう少し、続く
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(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第七話

あーし的に、舞踏会から帰って来てからの生活は悪くなかった。

相変わらず灰まみれだしあんま風呂とかも入れない毎日だったからこういう言い方が果たして正しいのかどうか、微妙なラインだったけど

垢抜けた

っていうのがなんか一番しっくりくるような、そういうサッパリ感だった。

でもそんな爽快リフレッシュなあーしに、マンデラとアラファトとスーチー含む継母一同、何かとあらぬ疑いをかけたものだった。

マンデラ「やいシンデレラ、ここんとこずいぶんご機嫌じゃないか。なんだいなんだい、親友のドブネズミが婚約でも発表したかい?」

アラファト「何言ってるのマン姉さん違うわよ。シンデレラが親友だったドブネズミと友情を遥かにこえて晴れて結納を交わしたって話じゃないの」

スーチー「マン姉もアラ姉も読みが甘いわ。シンデレラは婚約してたドブネズミにすんでのところで捨てられて、落ち込みながらもめげずに頑張ってるのよ。ねぇ?」

すごいイマジネーションだと思った。

人は、いじわるをするという目的のためだけにこんなにも色彩豊かにあらぬ物語をクリエイトすることが出来るのだわ、と感心するばかりだった。

シンデレラ「とんでもねえですよ。奥手なもんで、ドブネズミさんにはまだ声もかけられてねえです。お姉さま方に恋の手ほどきをいつかしてもらいたいもんです」

こういうあからさまで巧みでOLの皆さんが今日からでもすぐに使えそうなおべっかにも、どこか誇りを持って取り組むことができる自分がいることに、あーしは喜びを覚えていた。

それもこれも、あの一夜だ。

あの一夜で浴びた視線の数々が、あーしをこうもいい意味で増長させていたのだ。


増長しつつの、ある日のことだ。

明らかに街がどよめいていた。

理由は簡単だった。

白馬に乗った王子様、とはとても言い難い、サラサラだったヘアが無重力を感じさせるほどに逆立ち、鋲やらクギやらドクロやらで全身をガッチガチに固めた、舌も俄かにはみでつつ目もドロリンとした元王子が、シタールの重奏の音色響き渡る中を専用のエレファントに乗ってやってきているのを目の当たりにしたのだ。

そらどよめくわな。

思わず、あーしは汚いまんま、忌まわしきお屋敷をえいやっと、飛び出した。

ちょうどエレファントの巨大な左後ろ足が、お屋敷の目の前を通過しようとする時で、元王子はあーしにすぐ気が付いた。

シンデレラ「なにしにきたんだい?」

元王子「ど、どうだ?これで」

シンデレラ「60点だね。赤点ぎりぎり」

元王子「・・・赤点」

シンデレラ「あと40点はなんだかわかる?」

元王子「・・・ちょっと」

シンデレラ「ばかだねぇ。ばかばかばかばかばかあーしに決まってんだろ?あーしが横にいれば100点満点ですらなくなるよばか」

元王子「え・・・てことは」

シンデレラ「行ってやろうじゃないかあんたの城に」

元王子「ほほんと?」

シンデレラ「身なりはこんなでもね、嘘はつかないあーしだよ。ほら、あーしの靴貸しなあんたが持ってんだろ気持ち悪いボケくそおたんこなす」

こうしてあーしはエレファントに揺られて城に向かった。

その後、継母たちがどうなったかはよく知らない。

従順な召使を失って、元々結束力のなかったあいつらのことだから、あっさり野垂れ死んでるかもしれない。

それはそれで、まあありだ。

だってあたし、いま、最高に幸せだもの。

てへ。


続く
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