新しいむかしばなし
「桃太郎+官能小説」 第一話
- 2009.01.25 Sunday
- 桃太郎+官能小説

でんじろう(85)は、妻のおふじ(70)が、密かに他の男と密会しているのではないかという疑念を取り去る事が出来ないでいた。
おふじは気立てが良く、自分にはもったいなすぎる女だとでんじろうは常々思っていたのだが、ひとたび疑念を抱いてしまうと、おふじの一挙手一投足が全て怪しく感じられ、万国の老人よろしく早起きをしてしまうのであった。
早起きと言っても、でんじろうの起きたころには、おふじは既に朝食の支度をしているのが常で、でんじろうはかまどで火を焚き汗を流しているおふじの背中にビタッ!とはりついた襦袢を見ては、下腹部のウィニーが噛み応えのあるシャウエッセンを経て遂にはチョリソー先生の異名をとるまでに至る成長物語を見届けつつ、二度寝するのが日課となっていた。
が。
ある朝のことである。
でんじろうはいつもの通り二度寝をし、朝食を食んで、柴刈りの仕事に向かうつもりだった。
だが、出かける直前に、「私は川へ洗濯に行きます」と言ったおふじの表情を仕事への道すがら思い出し、でんじろうは「はて?」と思った。
「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」
傍から見ればそうとしか言いようのない状況がそこにはあるわけだが、洗濯を川にしに行くのは今に始まったことではない。
いつだって洗濯は川で行なってきたはずなのである。
なのに。
今朝のおふじは「行ってくる」とだけ言ったでんじろうに、わざわざ「川へ洗濯に行きます」と告げたのである。
これは怪しいではないか。
でんじろうよりも15年も後に生まれたおふじの肌の色つやが、でんじろうと同世代の女たちと全く異なっていることは言うまでもないが、でんじろうはぷっくらとした唇こそが彼女の魅力であると確信していて、どこぞの若造の、いつも目の前にあるチョリソー先生ではなく大味なジャンボフランクをほおばっている様を想像せずにはいられなかった。
そこまで考えが至ると、でんじろうは己の足が自然と川に向くのを止めることができなかった。
しかし、自分の知らない男とおふじがどんなまぐわいをしてきたのかしているのかしていくのか、という過去現在未来すべてをまたにかける壮大なエロ大河を夢想しながらだったので、傍から見れば「老人ののらりくらり」に他ならなかった。
ちなみにエロ大河、こんな内容である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
おふじは、夫のでんじろうがいつもの様に山に柴刈りに行き、その背中を見送った後、そそくさと出かける準備をし、やや早足で川に向かった。
川近くのひときわ汚い平屋がおふじの密通相手でんきち(仮名・60)の住まいである。
でんきちはだれの目にも明らかなほどの荒くれ者だった。
褐色の肌に切れ長の目、横に広がった大きな鼻と拳が丸々入りそうな大きな口、太い首に厚い胸板、太い指先にはいびつに割れた爪がおまけのように付いており、爪と皮膚の間には泥とも血ともいえぬ黒ずんだ何かがこびりついていた。
そういう汚い男に、なぜだかおふじは惹かれた。
洗濯をしに来てるのに汚い男と関係し体を汚す、という禁忌も去ることながら、夫であるでんじろうに無い獰猛さ加減がおふじには塩梅が良かった。
でんきちはおふじが平屋に入ってくるや否や、飛びかかるように迫ってきて、着物を剥いだ。
脱がせた、というよりも、剥いだ、という表現がしっくりとくる、そういう乱暴さである。
すっかり全身を剥がれたおふじは、自分の全身が炭火で焼かれる肉塊のように徐々に火照り、でんきちの厚切りタンがねっとりと、肩ロースからサーロイン、ヒレを経て遂にはテールに至るのを感じ、負けじと搾りたてのレモン汁を塩ダレと一緒に滴らせつつ、黒々としたサンチュに赤ミソをまぶしてでんきちの口に押し込んだ。
意外にあっさりだな
栄養満点よ
などといった爽やかな会話が交わされた後、でんきちが自慢のリブロースを取り出すと事態は急転した。
おふじは骨付きスペアリブさながらの頑強さを誇るそれに、特製ダレには目もくれず豪快にむしゃぶりついたかと思うと、程なくして自慢の唇はデラデラ、でんきちはすっかり骨抜き、どころかユッケになっていた。
口元をお手拭きでぬぐいながら、おふじは網の交換を申し出た。
束の間の、焼肉パーティは終わった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
というようなものである。
でんじろうはそれでもなかなかのスピードで山を駆け下り、家を通り過ぎ、もうすぐで川にたどりつく。
だが、そのとき既におふじは帰宅し、包丁を片手に巨大なそれと対峙していることを、でんじろうが知る由はなかった。
続く
「桃太郎+官能小説」 第二話
- 2009.02.04 Wednesday
- 桃太郎+官能小説
でんじろうの妄想をよそに、ふじこは川で洗濯をしていた。
これといって特徴のないつまらない洗濯を、ただただやっていた。
そういうつまらなさが、生まれも育ちも質素なふじこにとって「生きる」ということだった。
なので、上流から、トータルで見てかなり傷だらけの巨桃が、ざんぶらどんぶらゆっくりもったり流されてきたのには驚くというよりは興奮した。
だってこんな巨桃が流れてくるなんて普通じゃない。
→きっと上流では大変なことになっているはず。
→つまりそれはエロトラブルよきっと。
ちなみにふじこの妄想したエロトラブルの内容はこんな感じである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早くに妻を亡くし、果樹園を営んでいたブチャラティ(78)は、娘のボチャミティ(59)がその夫のベチャルティ(82)にいよいよ愛想を尽かし、夜の賭場で知り合ったバチャメティ(94)に夢中であることを郵便配達の吉田君(17)に聞かされ、激怒した。
毎度毎度、父親の自分より年上の男ばかり選ぶ娘を咎めに彼女の家に向かうと、窓の外からもはっきりくっきり見通せる分かりやすさで、二人は既に交わっていた。
バチャメティは色が白く線の細い童顔の男で、悔しいが、実際の年齢よりも10~20歳程度若く見え、肌感がピチピチしているのが、悔しいながらも、窓越しにもわかった。
自分の娘がハレンチにいそしむ姿をじっくりと見ちゃうのはどう考えても禁忌だが、「咎めに来た」という父親としての大義が、ブチャラティをそこに留まらせた。
久々に見たボチャミティの裸はその、なんというか、ええっとそのうーんと、死んだ妻のビチャゲティ(享年61)にそっくりだった。
それだけでブチャラティの木製バットは、いつの間にやらゴリッゴリの、いわば阪神・金本の大腿筋の如くだった。
そして事情は窓のこっち(レフトスタンド)もあっち(ライトスタンド)も同じらしく、バチャムティのこけしバットもガチッガチの、いわばカブス・福留の臀部筋のごたるで、ネクストバッターズサークルにいながら思わず代打を申し出そうになったほどである。
だが、トゥーボールワンスティックからの4球目、ボチャミティのロッテ・渡辺を思わせる下方からの、あわや退場かと球場を一瞬ざわめかせた危険球は見事にバチャムティの一本足打法を封じ、「記録よりも記憶よりも実は恥辱にまみれたいっす」との名言を残させつつ、裏の攻防へと突入した。
「夜の走攻守が揃ってるよね」と各所で定評のあるバチャムティだったが、外野からのマリナーズ・イチローを思わせるレーザービームもいざボチャミティにバックホーム!となると今一歩届かず、その見事なバット捌きに連打を浴びると、自慢のIT野球が誇る勝利の方程式・JFK(準備・ファ●ク・金払う)なぞもはや意味がなかった。
結局、ボチャミティのつるりとしたバックスクリーンに並ぶおたまじゃくし達が、バチャムティのコールド負けと、その日のナイター中継が延長しないことを告げていた。
思わずブチャラティはあさっての方向に走り出した。
なんだか知らないけど、「永久に不滅だ」と思った。
そんな折、彼の果樹園でひっそりと育っていた巨桃が、こうした一連とは全く無関係にごろりと落ち転がり川に流れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というようなものである。
巨桃が落ちた話とエロトラブルの一件には、誰の目にも明らかなほど因果関係がないわけだが、巨桃を持ち帰り、既に包丁を手にしたふじこにはそんな細かいことはもうどうでもよかった。
ふじこは、何の迷いもなくその巨桃にズバッと包丁を入れた。
出てきたのは言うまでもなくギャアギャア泣きわめく赤ん坊であった。
正確にいえば、体の真ん中にすーっと一本の出来たての切り傷の入った、裸の赤ん坊であった。
血がドバドバ出たのは言うまでもないが、赤ん坊がなぜ泣いているのか、つまらない人生を送ってきたふじこにはサッパリだった。
続く
これといって特徴のないつまらない洗濯を、ただただやっていた。
そういうつまらなさが、生まれも育ちも質素なふじこにとって「生きる」ということだった。
なので、上流から、トータルで見てかなり傷だらけの巨桃が、ざんぶらどんぶらゆっくりもったり流されてきたのには驚くというよりは興奮した。
だってこんな巨桃が流れてくるなんて普通じゃない。
→きっと上流では大変なことになっているはず。
→つまりそれはエロトラブルよきっと。
ちなみにふじこの妄想したエロトラブルの内容はこんな感じである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早くに妻を亡くし、果樹園を営んでいたブチャラティ(78)は、娘のボチャミティ(59)がその夫のベチャルティ(82)にいよいよ愛想を尽かし、夜の賭場で知り合ったバチャメティ(94)に夢中であることを郵便配達の吉田君(17)に聞かされ、激怒した。
毎度毎度、父親の自分より年上の男ばかり選ぶ娘を咎めに彼女の家に向かうと、窓の外からもはっきりくっきり見通せる分かりやすさで、二人は既に交わっていた。
バチャメティは色が白く線の細い童顔の男で、悔しいが、実際の年齢よりも10~20歳程度若く見え、肌感がピチピチしているのが、悔しいながらも、窓越しにもわかった。
自分の娘がハレンチにいそしむ姿をじっくりと見ちゃうのはどう考えても禁忌だが、「咎めに来た」という父親としての大義が、ブチャラティをそこに留まらせた。
久々に見たボチャミティの裸はその、なんというか、ええっとそのうーんと、死んだ妻のビチャゲティ(享年61)にそっくりだった。
それだけでブチャラティの木製バットは、いつの間にやらゴリッゴリの、いわば阪神・金本の大腿筋の如くだった。
そして事情は窓のこっち(レフトスタンド)もあっち(ライトスタンド)も同じらしく、バチャムティのこけしバットもガチッガチの、いわばカブス・福留の臀部筋のごたるで、ネクストバッターズサークルにいながら思わず代打を申し出そうになったほどである。
だが、トゥーボールワンスティックからの4球目、ボチャミティのロッテ・渡辺を思わせる下方からの、あわや退場かと球場を一瞬ざわめかせた危険球は見事にバチャムティの一本足打法を封じ、「記録よりも記憶よりも実は恥辱にまみれたいっす」との名言を残させつつ、裏の攻防へと突入した。
「夜の走攻守が揃ってるよね」と各所で定評のあるバチャムティだったが、外野からのマリナーズ・イチローを思わせるレーザービームもいざボチャミティにバックホーム!となると今一歩届かず、その見事なバット捌きに連打を浴びると、自慢のIT野球が誇る勝利の方程式・JFK(準備・ファ●ク・金払う)なぞもはや意味がなかった。
結局、ボチャミティのつるりとしたバックスクリーンに並ぶおたまじゃくし達が、バチャムティのコールド負けと、その日のナイター中継が延長しないことを告げていた。
思わずブチャラティはあさっての方向に走り出した。
なんだか知らないけど、「永久に不滅だ」と思った。
そんな折、彼の果樹園でひっそりと育っていた巨桃が、こうした一連とは全く無関係にごろりと落ち転がり川に流れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というようなものである。
巨桃が落ちた話とエロトラブルの一件には、誰の目にも明らかなほど因果関係がないわけだが、巨桃を持ち帰り、既に包丁を手にしたふじこにはそんな細かいことはもうどうでもよかった。
ふじこは、何の迷いもなくその巨桃にズバッと包丁を入れた。
出てきたのは言うまでもなくギャアギャア泣きわめく赤ん坊であった。
正確にいえば、体の真ん中にすーっと一本の出来たての切り傷の入った、裸の赤ん坊であった。
血がドバドバ出たのは言うまでもないが、赤ん坊がなぜ泣いているのか、つまらない人生を送ってきたふじこにはサッパリだった。
続く
「桃太郎+官能小説」 第三話
- 2009.02.11 Wednesday
- 桃太郎+官能小説
「ヨッ、桃から生まれた桃太郎!!」
と声をかけられれば、ニヤニヤしながら「へぇそうでやんす」と答えるほかない自らの宿命に、桃太郎(4)は、嫌気が差していた。
だから鬼退治に行くことにした。
早速その旨をでんじろうとふじこに告げると、彼らは驚くやら喜ぶやら腰は抜かすわその拍子に色んな指を骨折するわでてんやわんやそのものだったが、どこから引っ張り出したのか、あか抜けない随所に桃がプリントされた装束一式と、「日本一」とヨレヨレの字ででんじろうが書いたのぼりを用意した。
だせーと思った。
しごく単純な話であるが、普通の人間であれば16歳~20歳くらいの年齢にあたる桃太郎にとって、「イケてない」と言うのは万死に値した。
やっぱりだせー
そう改めて思ったのは峠を越えようと山道に入り、最初の休憩をとった時のことだった。
ふじこが「道中に食うのだよ」と渡してきた包みを戯れに開いてみたら、中から出てきたのはきびだんごである。
昨日のおやつじゃねえか。
桃太郎にとっては、喉も渇く道中で表面にかようにたっぷりときびの粉がまぶしてあるこんなものをほおばるなんてのは、まじありえないことで、つうかそもそも桃太郎は桃から生まれた割には甘いものが嫌いだった。
そんな折。
大きめの犬だか狼だかを連れた、髪はこざっぱりとしたショートカットで、顔に赤いペイントと大きめのイヤリングをつけた少女が現れた。
桃太郎は直感した。
この娘は桃太郎に恋をしている、と。
それが高じてエロエロしい気持ちでここに出てきたのだ、と。
こうなったら桃太郎の妄想は加速するばかりであった。
ちなみにそのエロファンタジーはこんな内容である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生まれてこの方ずっと山で獣たちと育ってきた少女ザン(推定17)は、同世代のどんな娘たちよりも猛々しく荒々しい、高枝切りバサミでヘアカットするような、まあそういう女だった。
だから「峠の山道」というこのシチュエーションは、彼女との攻防にはうってつけと言えたし、桃太郎は桃から生まれた割には気性の荒い方だったので、相手に不足なしといった所だった。
巨犬の遠吠えがゴング代わりとなった。
桃太郎はザンのまわしにまず右手をかけた。
次に左手を突き出し、両差しの形を取ろうとするがザンが繰り出したのはなんとローキックによる金的である。
執拗なまでのローブローの連続に、すぐさまコーナーに追いやられた桃太郎はたまらずクリンチ、からのテイクダウンを狙うが、グレコローマンなザンによるシャイニングウィザードからのスモールパッケージホールドにフォール寸前まで追い詰められ、たまらず白いアレを出そうとしつつも、「なんだかヌルヌルするよヌルヌルするんだよ」といった抗議が受け入れられることもなく、やや不正の臭いもする束の間の猪木・アリ状態を経て、地獄車や三角絞めといった古式ゆかしい技で攻められるうちヌルヌルもいつしか快感になり、よく分からないうちにレフェリーストップによるTKO負けを喫していた。
桃太郎は思った。
後ろ手にフリル付ブラジャーのホックを留めるザンの方がよっぽど鬼らしく、鬼退治などただの絵空事だったんじゃないか、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というようなものである。
そんな妄想に身震いしているうちに娘はどこかに消えていて、気付けば桃太郎はすっかり裸だった。
女山賊に襲われているショックを、エロファンタジーに自ら変換して紛らわせていたと考えることも出来るだろう。
その場に残されたのは、ださい装束とのぼりと・・・・その辺に転がってるきびだんごに群がる小動物たち。
桃太郎は考えるのも嫌だったので、その小動物たちを「ショー」と「ロン」と「ポー」と名付けた。
桃太郎が、困ったらこいつらを食料に、と思っていたのは言うまでもない。
続く
と声をかけられれば、ニヤニヤしながら「へぇそうでやんす」と答えるほかない自らの宿命に、桃太郎(4)は、嫌気が差していた。
だから鬼退治に行くことにした。
早速その旨をでんじろうとふじこに告げると、彼らは驚くやら喜ぶやら腰は抜かすわその拍子に色んな指を骨折するわでてんやわんやそのものだったが、どこから引っ張り出したのか、あか抜けない随所に桃がプリントされた装束一式と、「日本一」とヨレヨレの字ででんじろうが書いたのぼりを用意した。
だせーと思った。
しごく単純な話であるが、普通の人間であれば16歳~20歳くらいの年齢にあたる桃太郎にとって、「イケてない」と言うのは万死に値した。
やっぱりだせー
そう改めて思ったのは峠を越えようと山道に入り、最初の休憩をとった時のことだった。
ふじこが「道中に食うのだよ」と渡してきた包みを戯れに開いてみたら、中から出てきたのはきびだんごである。
昨日のおやつじゃねえか。
桃太郎にとっては、喉も渇く道中で表面にかようにたっぷりときびの粉がまぶしてあるこんなものをほおばるなんてのは、まじありえないことで、つうかそもそも桃太郎は桃から生まれた割には甘いものが嫌いだった。
そんな折。
大きめの犬だか狼だかを連れた、髪はこざっぱりとしたショートカットで、顔に赤いペイントと大きめのイヤリングをつけた少女が現れた。
桃太郎は直感した。
この娘は桃太郎に恋をしている、と。
それが高じてエロエロしい気持ちでここに出てきたのだ、と。
こうなったら桃太郎の妄想は加速するばかりであった。
ちなみにそのエロファンタジーはこんな内容である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生まれてこの方ずっと山で獣たちと育ってきた少女ザン(推定17)は、同世代のどんな娘たちよりも猛々しく荒々しい、高枝切りバサミでヘアカットするような、まあそういう女だった。
だから「峠の山道」というこのシチュエーションは、彼女との攻防にはうってつけと言えたし、桃太郎は桃から生まれた割には気性の荒い方だったので、相手に不足なしといった所だった。
巨犬の遠吠えがゴング代わりとなった。
桃太郎はザンのまわしにまず右手をかけた。
次に左手を突き出し、両差しの形を取ろうとするがザンが繰り出したのはなんとローキックによる金的である。
執拗なまでのローブローの連続に、すぐさまコーナーに追いやられた桃太郎はたまらずクリンチ、からのテイクダウンを狙うが、グレコローマンなザンによるシャイニングウィザードからのスモールパッケージホールドにフォール寸前まで追い詰められ、たまらず白いアレを出そうとしつつも、「なんだかヌルヌルするよヌルヌルするんだよ」といった抗議が受け入れられることもなく、やや不正の臭いもする束の間の猪木・アリ状態を経て、地獄車や三角絞めといった古式ゆかしい技で攻められるうちヌルヌルもいつしか快感になり、よく分からないうちにレフェリーストップによるTKO負けを喫していた。
桃太郎は思った。
後ろ手にフリル付ブラジャーのホックを留めるザンの方がよっぽど鬼らしく、鬼退治などただの絵空事だったんじゃないか、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というようなものである。
そんな妄想に身震いしているうちに娘はどこかに消えていて、気付けば桃太郎はすっかり裸だった。
女山賊に襲われているショックを、エロファンタジーに自ら変換して紛らわせていたと考えることも出来るだろう。
その場に残されたのは、ださい装束とのぼりと・・・・その辺に転がってるきびだんごに群がる小動物たち。
桃太郎は考えるのも嫌だったので、その小動物たちを「ショー」と「ロン」と「ポー」と名付けた。
桃太郎が、困ったらこいつらを食料に、と思っていたのは言うまでもない。
続く
「桃太郎+官能小説」 第四話
- 2009.02.18 Wednesday
- 桃太郎+官能小説
ショーとロンとポーは揃いも揃ってみなしごだった。
みなしごだったからこそ、肉食する側とされる側という種族も超えて、まあたまにはうっかり羽根噛み切ったりなんとなく耳突き破ったり思いつきで足半分くらいもいだりはしたけれど、ある意味それも「じゃれあい」の範疇に含めることが出来ると皆それぞれが信じていたし、あ、そうだ言うの忘れてたけどショーがイヌでロンがキジでポーがサルね、なんかそういう距離感が心地よかった。
で、お団子発見。
味、まあまあ。
目の前の裸の男が、言葉巧みに三匹を「鬼退治」に連れて行こうとする一連の説明の中で、実はこいつもまたみなしごだと分かり、まあ一緒に行くことにした。
で、迷子になった。
みなしごで迷子。
0点である。
都は思いのほか広く冷たく、そしてよそ者に手厳しい。
それゆえに叩き出された0点だ。
とぼとぼ
とぼとぼとぼ
そんな音を立てながら歩いていた。
で
都の外れでスプリングセールしてた老婆が、あまりにも優しかったので、一人と三匹は見事に発情した。
「獣込み1600円」
はっきりしてたのは、ここで1600円を払ってしまうと、財布が「おしまい」になるということだった。
でもそうこう考える前に、桃太郎は既に、ていうかずっと、全裸だった。
どうせ0点じゃねえか。
おしまいからはじめようじゃねえか。
そして獣たちは仲睦まじく、同じエロティックコスモスな妄想にその小さなオツムをすっかり支配された。
ちなみにそのエロティックコスモス、こんな内容である。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ショーとロンとポーはすぐに片道切符を購入した。
帰ってくる必要などない、ただいくだけ。
そういう決意があったのだ。
ウリザネ(仮名・91)の半自動扉を開閉ボタンによって開けてみると、連結部分の揺れがすさまじく、「モハ!」とか「クハ!」と吐息をもらさせることに成功。
獣たちの御成門駅にもう戻らないという決意は固かったが、たまプラーザから亀有を結ぶリニアモーターガールと化した彼女へのピストン輸送は、パンタグラフからセクシャルエナジーを取り入れようと奮闘しても結局、脱線と人身事故を起こすばかり。
そんな獣たちのチンチン電車を尻目にワンマン電車でかつ快速ラビットなウリザネは、簡単にトンネルを抜けちゃって、まっちろな世界ばかりがその眼前には広がっていたのである。
ぽぽー
あ、汽笛が鳴った。
よし、ぼくたちのふるさとにむけて、しゅっぱつしんこーだ。
わーいわーい。
・・・・・・・・・・・
というような、予想にたがわぬやや頭の足りないものであった。
そして、ウリザネは言った。
あすこの橋さ渡ってどんつきが、鬼が島だで。
キター
全員文無し骨抜きワールドイズエンドって感じだったが、まあとりあえずそっちに歩き始めた。
ずいぶん寄り道が過ぎたが、いよいよ次回、最終回である。
続く
みなしごだったからこそ、肉食する側とされる側という種族も超えて、まあたまにはうっかり羽根噛み切ったりなんとなく耳突き破ったり思いつきで足半分くらいもいだりはしたけれど、ある意味それも「じゃれあい」の範疇に含めることが出来ると皆それぞれが信じていたし、あ、そうだ言うの忘れてたけどショーがイヌでロンがキジでポーがサルね、なんかそういう距離感が心地よかった。
で、お団子発見。
味、まあまあ。
目の前の裸の男が、言葉巧みに三匹を「鬼退治」に連れて行こうとする一連の説明の中で、実はこいつもまたみなしごだと分かり、まあ一緒に行くことにした。
で、迷子になった。
みなしごで迷子。
0点である。
都は思いのほか広く冷たく、そしてよそ者に手厳しい。
それゆえに叩き出された0点だ。
とぼとぼ
とぼとぼとぼ
そんな音を立てながら歩いていた。
で
都の外れでスプリングセールしてた老婆が、あまりにも優しかったので、一人と三匹は見事に発情した。
「獣込み1600円」
はっきりしてたのは、ここで1600円を払ってしまうと、財布が「おしまい」になるということだった。
でもそうこう考える前に、桃太郎は既に、ていうかずっと、全裸だった。
どうせ0点じゃねえか。
おしまいからはじめようじゃねえか。
そして獣たちは仲睦まじく、同じエロティックコスモスな妄想にその小さなオツムをすっかり支配された。
ちなみにそのエロティックコスモス、こんな内容である。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ショーとロンとポーはすぐに片道切符を購入した。
帰ってくる必要などない、ただいくだけ。
そういう決意があったのだ。
ウリザネ(仮名・91)の半自動扉を開閉ボタンによって開けてみると、連結部分の揺れがすさまじく、「モハ!」とか「クハ!」と吐息をもらさせることに成功。
獣たちの御成門駅にもう戻らないという決意は固かったが、たまプラーザから亀有を結ぶリニアモーターガールと化した彼女へのピストン輸送は、パンタグラフからセクシャルエナジーを取り入れようと奮闘しても結局、脱線と人身事故を起こすばかり。
そんな獣たちのチンチン電車を尻目にワンマン電車でかつ快速ラビットなウリザネは、簡単にトンネルを抜けちゃって、まっちろな世界ばかりがその眼前には広がっていたのである。
ぽぽー
あ、汽笛が鳴った。
よし、ぼくたちのふるさとにむけて、しゅっぱつしんこーだ。
わーいわーい。
・・・・・・・・・・・
というような、予想にたがわぬやや頭の足りないものであった。
そして、ウリザネは言った。
あすこの橋さ渡ってどんつきが、鬼が島だで。
キター
全員文無し骨抜きワールドイズエンドって感じだったが、まあとりあえずそっちに歩き始めた。
ずいぶん寄り道が過ぎたが、いよいよ次回、最終回である。
続く
「桃太郎+官能小説」 第五話(最終回)
- 2009.02.25 Wednesday
- 桃太郎+官能小説
赤鬼(1036)は、その日もこれまでの毎日と全く同じ朝が来、やがてこれまでの毎日と全く同じ夜が来るものだと、そう思っていた。
そもそも、鬼退治、と言えばなんだか聞こえはいいが、要するにそれは人種差別である。
人を見た目で判断し、肌の色で人間の価値を決める。
これをアパルトヘイトと呼ばずに何と呼ぼうか。
腹立たしいのはやまやまだが、ひとつ問題があった。
・・・タイプだった。
桃太郎イズマイライフ。
とか、赤鬼が考えてたとは露知らず、桃太郎一行は、鬼を、ズタズタにして殺した。
その模様をダイジェストで伝えると、大体こんな感じである。
桃太郎はまず、赤鬼の胸元に、何となく丁度良いような気がして、ロン(キジ)を投げつけた。
ロンはついばんだ。
夢中でついばんだ。
次に自主的に向かって行ったのは、血の気の多い性格でおなじみのポー(サル)である。
背中をひっかいた。
やたらとひっかいた。
最後に嫌々突っ込んでいったのは、実は既にその体が不治の病に冒されているショー(イヌ)である。
後ろから首をかんだ。
ただかんだ。
桃太郎はとどめに、家から持ってきたけど一度も使ってないからちょっとさびてる刺身包丁を、もうほとんど息も絶え絶えの赤鬼の下腹部につきたてた。
ズブブブッ、と言う音だけがやにわに響いていた。
大体こんなのである。
だが、赤鬼にとっては、ちょっとしたエロパラダイスだった。
赤鬼目線でもう一度、プレイバック。
胸元への鋭いついばみは彼の乳頭温泉をビンビンに湧き立て、背中への爪を立てたる愛撫は彼の一角獣、すなわちユニコーンをより屈強にけたたましくしたのだし、首元への強かなるギャートルズ的な肉を思わせるかぶりつきは、足元が、ていうかそこら一帯が、頸動脈からドバドバ出た血で、ビタビタになっていたけれど、誰にも渡したくないよお前をという気持ちで、キムタクで言う所の「俺じゃダメか」的な、そういうつまりはあすなろ白書だった。
そして何より、タイプのゴリゴリ眉太ヤングマンにちょっと鋭利な金棒で、下腹部をズブリズブリと刺される最高のフィニッシュホールドには、二つの意味で昇天するしかなかったのだった。
こうして鬼は死んだ。
桃太郎は思い切りよく、手分けをして、鬼の首を切り取って、記念に持ち帰ることにした。
帰るまでにまた多くの時間を要したので、鬼の首には蛆が、引くほどわいちゃあいたが、そもそも土に帰るのかどうかも微妙だったので、我慢した。
無事、帰宅。
ただ、桃太郎が「ああ人生っていろいろ」と思ったのは、家に帰るとでんじろうとふじこと誰だか知らない汚いでかい男が、誰がどう見ても争った形跡をそこかしこに残して、コッテリ血まみれで、もつれるように死んでいたことだ。
ハエがたかっていた。
ハエがたかっているそれと、ウジがわいた鬼の首とぐちょぐちょに腐りきってる犬の死骸(だいぶ前に病死)を抱え帰って来た桃太郎は、それをそれの隣に置いて、それらを横目に、隣で、久々に布団を敷いてぐっすりと眠った。
いろいろと面倒なことはすべて先送りにして。
その夜、桃太郎は7歳になった。
普通の人間でいえば、30歳そこそこと言ったところである。
はい、めでたしめでたし
そもそも、鬼退治、と言えばなんだか聞こえはいいが、要するにそれは人種差別である。
人を見た目で判断し、肌の色で人間の価値を決める。
これをアパルトヘイトと呼ばずに何と呼ぼうか。
腹立たしいのはやまやまだが、ひとつ問題があった。
・・・タイプだった。
桃太郎イズマイライフ。
とか、赤鬼が考えてたとは露知らず、桃太郎一行は、鬼を、ズタズタにして殺した。
その模様をダイジェストで伝えると、大体こんな感じである。
桃太郎はまず、赤鬼の胸元に、何となく丁度良いような気がして、ロン(キジ)を投げつけた。
ロンはついばんだ。
夢中でついばんだ。
次に自主的に向かって行ったのは、血の気の多い性格でおなじみのポー(サル)である。
背中をひっかいた。
やたらとひっかいた。
最後に嫌々突っ込んでいったのは、実は既にその体が不治の病に冒されているショー(イヌ)である。
後ろから首をかんだ。
ただかんだ。
桃太郎はとどめに、家から持ってきたけど一度も使ってないからちょっとさびてる刺身包丁を、もうほとんど息も絶え絶えの赤鬼の下腹部につきたてた。
ズブブブッ、と言う音だけがやにわに響いていた。
大体こんなのである。
だが、赤鬼にとっては、ちょっとしたエロパラダイスだった。
赤鬼目線でもう一度、プレイバック。
胸元への鋭いついばみは彼の乳頭温泉をビンビンに湧き立て、背中への爪を立てたる愛撫は彼の一角獣、すなわちユニコーンをより屈強にけたたましくしたのだし、首元への強かなるギャートルズ的な肉を思わせるかぶりつきは、足元が、ていうかそこら一帯が、頸動脈からドバドバ出た血で、ビタビタになっていたけれど、誰にも渡したくないよお前をという気持ちで、キムタクで言う所の「俺じゃダメか」的な、そういうつまりはあすなろ白書だった。
そして何より、タイプのゴリゴリ眉太ヤングマンにちょっと鋭利な金棒で、下腹部をズブリズブリと刺される最高のフィニッシュホールドには、二つの意味で昇天するしかなかったのだった。
こうして鬼は死んだ。
桃太郎は思い切りよく、手分けをして、鬼の首を切り取って、記念に持ち帰ることにした。
帰るまでにまた多くの時間を要したので、鬼の首には蛆が、引くほどわいちゃあいたが、そもそも土に帰るのかどうかも微妙だったので、我慢した。
無事、帰宅。
ただ、桃太郎が「ああ人生っていろいろ」と思ったのは、家に帰るとでんじろうとふじこと誰だか知らない汚いでかい男が、誰がどう見ても争った形跡をそこかしこに残して、コッテリ血まみれで、もつれるように死んでいたことだ。
ハエがたかっていた。
ハエがたかっているそれと、ウジがわいた鬼の首とぐちょぐちょに腐りきってる犬の死骸(だいぶ前に病死)を抱え帰って来た桃太郎は、それをそれの隣に置いて、それらを横目に、隣で、久々に布団を敷いてぐっすりと眠った。
いろいろと面倒なことはすべて先送りにして。
その夜、桃太郎は7歳になった。
普通の人間でいえば、30歳そこそこと言ったところである。
はい、めでたしめでたし
かぐや姫+SF小説 第一話
- 2009.03.04 Wednesday
- かぐや姫+SF小説
ニブ エ ダッセシ マラッキキダゲルポドフ
(お好み焼きだからって何いれてもいいってわけじゃないんだぜ)
ルカ福音書 第3章58節
かぐや姫は自分の運命を呪っていた。
姫とは名ばかりの、国王の第11側室の次女にすぎない自分のようなものは、こうして見知らぬ星の臭い植物の内側に身をひそめて佇んでいるのがお似合いなんだよと、昔からウマの合わないジュリトン姫が陰で言っているような、そういう気がなんだかずっとしていた。
早く星に帰りたい。
星に帰ったからと言って、そこそこに虐げられるであろうかぐや姫を待ち受けている運命などたかが知れていたが、それでもこんなところにいるよりはましだと、思っていた。
かぐや姫の生まれたウリウリ系M110星雲ボリンガには、成人女性になるその前に、ユン・ホイズラー博士の開発したニンゲッカイルポージポ装置によって急速に幼児化された後、チンダルーリワープによって適当な星に送り込まれ、伝説など適度に残しつつなんとか生き残れば晴れて大人、生き方が平凡だったり野蛮な獣とかに捕食されて生き残れなければそのまま追放っていうかさよなら、みたいなほとんど罰ゲームの様なならわしがあり、馬鹿言ってんじゃねえようざってえよケツの穴に豚トロぶちこんで雑に割った割り箸でぐちゅっとするぞこの野郎、とだれもが皆一様に思うようなしきたりながらも、黙ってそれを受け入れざるを得ない自分の残念な生い立ちには、嫌気がさすばかりだった。
だが、そうは言っても、ここまで来たからにはきちんと成果を残して帰りたいと思うのがかぐや姫の案外真面目なところでもあり、こうしてヒッテレに似た植物の中に身をひそめているのも、初めの出のテンションを大事にしたいというのと、なにはなくともちっちゃいのは無条件にかわいがってもらえるもの、というのを身をもって知っていたからであった。
だもんで。
かぐや姫を発見したのが耄碌した老人だったのは幸いであった。
既に視神経がいかれ現実と夢の境界が精神的にも視覚的にもあいまいなその老翁は、自分はまだまだボケちゃいないんだと言うことを主張すべく、たまたま切った竹の中から偶然少女が出てきたという事実を、竹藪の中で光っていた竹を見つけ切ってみたら玉のようにかわいい少女がいた、という思いがけずレジェンドな方向に捻じ曲げてくれた。
こうしてかぐや姫は期せずして、この星である程度スペシャルでいられる基盤を手に入れ、そして、ほとんど病気のようなスピードで成長した。
通常、ニンゲッカイルポージポ装置によって幼児化したボリンガ人の女性が、ウンツク製薬のショルタリンBを毎食後2錠ずつ服用した場合にのみ、3年程度で元の状態に戻ることが出来るわけだが、おそらくこの星の大気の状態や老人たちがふるまってくれる食事(かぐや姫は筑前煮と呼ばれるブルレッロからオレペレの実を抜いたような料理が特に好物だった)が何らかの、ベオブラボリンに似た成分を含んでいた結果、そういうことになったのだろう。
そうして、数カ月の間に元の、年相応の姿に戻っていったこともまた、かぐや姫の生涯をいい感じにレジェンディックな装いにしてくれたので、幸いだったと言える。
しかし、こうなってくると気になりだすのは、かぐや姫は果たしていつどのタイミングでこの星から帰ることができるのか、と言うことだった。
ボリンガ星のそもそものならわしでは、「生き残る」と言うことがかなり重要なわけで、それは幼児化したボリンガ星人の女性はしばしば獣の餌食になりやすいからなわけだが、これだけ手厚く過保護に扱われていたらそういう心配もなく、なので要するに、もうすぐにでも帰還できるのではないかと期待してしまうのも無理がないのであった。
だがそううまくもいかない。
テリターリおじさんがよく言っていた「ゲレ イポリーポ ユル フェッタ インヴォス!」というあの諺をつい、思い出してしまう。
ある日、老人たちがかぐや姫に示したのは、この星の背の低い男たちとの「結婚」という、もう元も子もない提案だったのだ。
続く
(お好み焼きだからって何いれてもいいってわけじゃないんだぜ)
ルカ福音書 第3章58節
かぐや姫は自分の運命を呪っていた。
姫とは名ばかりの、国王の第11側室の次女にすぎない自分のようなものは、こうして見知らぬ星の臭い植物の内側に身をひそめて佇んでいるのがお似合いなんだよと、昔からウマの合わないジュリトン姫が陰で言っているような、そういう気がなんだかずっとしていた。
早く星に帰りたい。
星に帰ったからと言って、そこそこに虐げられるであろうかぐや姫を待ち受けている運命などたかが知れていたが、それでもこんなところにいるよりはましだと、思っていた。
かぐや姫の生まれたウリウリ系M110星雲ボリンガには、成人女性になるその前に、ユン・ホイズラー博士の開発したニンゲッカイルポージポ装置によって急速に幼児化された後、チンダルーリワープによって適当な星に送り込まれ、伝説など適度に残しつつなんとか生き残れば晴れて大人、生き方が平凡だったり野蛮な獣とかに捕食されて生き残れなければそのまま追放っていうかさよなら、みたいなほとんど罰ゲームの様なならわしがあり、馬鹿言ってんじゃねえようざってえよケツの穴に豚トロぶちこんで雑に割った割り箸でぐちゅっとするぞこの野郎、とだれもが皆一様に思うようなしきたりながらも、黙ってそれを受け入れざるを得ない自分の残念な生い立ちには、嫌気がさすばかりだった。
だが、そうは言っても、ここまで来たからにはきちんと成果を残して帰りたいと思うのがかぐや姫の案外真面目なところでもあり、こうしてヒッテレに似た植物の中に身をひそめているのも、初めの出のテンションを大事にしたいというのと、なにはなくともちっちゃいのは無条件にかわいがってもらえるもの、というのを身をもって知っていたからであった。
だもんで。
かぐや姫を発見したのが耄碌した老人だったのは幸いであった。
既に視神経がいかれ現実と夢の境界が精神的にも視覚的にもあいまいなその老翁は、自分はまだまだボケちゃいないんだと言うことを主張すべく、たまたま切った竹の中から偶然少女が出てきたという事実を、竹藪の中で光っていた竹を見つけ切ってみたら玉のようにかわいい少女がいた、という思いがけずレジェンドな方向に捻じ曲げてくれた。
こうしてかぐや姫は期せずして、この星である程度スペシャルでいられる基盤を手に入れ、そして、ほとんど病気のようなスピードで成長した。
通常、ニンゲッカイルポージポ装置によって幼児化したボリンガ人の女性が、ウンツク製薬のショルタリンBを毎食後2錠ずつ服用した場合にのみ、3年程度で元の状態に戻ることが出来るわけだが、おそらくこの星の大気の状態や老人たちがふるまってくれる食事(かぐや姫は筑前煮と呼ばれるブルレッロからオレペレの実を抜いたような料理が特に好物だった)が何らかの、ベオブラボリンに似た成分を含んでいた結果、そういうことになったのだろう。
そうして、数カ月の間に元の、年相応の姿に戻っていったこともまた、かぐや姫の生涯をいい感じにレジェンディックな装いにしてくれたので、幸いだったと言える。
しかし、こうなってくると気になりだすのは、かぐや姫は果たしていつどのタイミングでこの星から帰ることができるのか、と言うことだった。
ボリンガ星のそもそものならわしでは、「生き残る」と言うことがかなり重要なわけで、それは幼児化したボリンガ星人の女性はしばしば獣の餌食になりやすいからなわけだが、これだけ手厚く過保護に扱われていたらそういう心配もなく、なので要するに、もうすぐにでも帰還できるのではないかと期待してしまうのも無理がないのであった。
だがそううまくもいかない。
テリターリおじさんがよく言っていた「ゲレ イポリーポ ユル フェッタ インヴォス!」というあの諺をつい、思い出してしまう。
ある日、老人たちがかぐや姫に示したのは、この星の背の低い男たちとの「結婚」という、もう元も子もない提案だったのだ。
続く
かぐや姫+SF小説 第二話
- 2009.03.11 Wednesday
- かぐや姫+SF小説
オポリ ゲ ダビーラ ヨムヤムヘレデスオイト ガンダギャンドゥイ(では早速、片栗粉でとろみをつけていきまーす)
ジャック・ラカン「野菜と梅毒より」
かぐや姫にとって「地球で老人によって持ちかけられる縁談、その後結婚」というシナリオほど、生きる気力をそぐものはなかった。
ボリンガ星人にとって、異星人との結婚はそのまま異星への永住を意味するのであって、話に聞いたことしかないジュレティおばさんの様な悲惨で滑稽な人生を歩むわけにはいかないので、かぐや姫は真剣に考えていた。
そもそもこの星に嫌々ながらも送られてきたのは、無事に帰るため、帰って大人になるためなのであり、ボリンガに帰った後、『ダダビリの昼下がり』や『キーラ・デッセ・オマン―ニンタポの物語―』などで知られる俳優のケゲレー・ウドンコスタのようなタイプの男子と出会えないとも限らないし、割と思い込みの激しいタイプでもあるかぐや姫にとっては、そういう出会いがまず間違いなく訪れるであろうとほぼ確信していた。
だので。
どんな奴が求婚に来ようとも、ヴェンドポ地方出身の女性らしく、言葉とテクニックで首尾よく追い払うような算段を、ほぼ毎夜、ボリンガのある方角の空をじっと眺めながら繰り返していた。
時は来た。
かぐや姫の前には五人の男たちがずらりと並んだ。
地球の男たち、それも強欲にまみれた連中特有の、脂ぎった精神が作り出す汚い笑顔をそれぞれが個性なく浮かべながら、群がっていた。
どいつもこいつもなかなかに高貴な身分らしく、この星での流行を取り入れた奇抜なファッションに身を包んでいたが、異星人の立場からものを言わせてもらえば、どれもこれも見るに堪えない、例えるならばユーゲダの死骸にゼンポニやゲジュンがプンプンたかっているような(まあそれは言いすぎだが)、そういうひどいものだった。
だから無茶苦茶を言った。
仏の御石の鉢も蓬莱の玉の枝も火鼠の裘も龍の首の珠も燕の子安貝も、ボリンガではたやすく手に入る類の別段珍しいわけでもない代物だったが(とはいってもその辺に落ちてるとかそういうことではなく、ウェンジズ爺さんに頼んでインダボ・フェンダボの術を使って出してもらうわけだが)、地球にはその手の超人がいないのでまあ見つけてくるのはどだい無理な話と踏んで、「これを持って来たら結婚してやる」と高らかに宣言してやった。
5人のうち4人までは、まあ精神が淀んでいたのだろうこともあって偽物をこしらえたり、的外れなものを持ってきたり天気が悪くなったので探すのをやめたりしていたが、ちょっと好青年タイプの(俳優でいえばミン・ダッセ!)男が、いささか誠実な探しっぷりであと一歩のところまで肉薄してしまったので、まあ彼には悪いことをしたがサクッと絶命してもらった。
はい残念~
心の中でかぐや姫はニマニマしながら、なんとか縁談の危機を乗り切ったのでいよいよさあやっとこさついに帰れるぞ帰るぞ帰ってやるぞと、盛り上がっていた。
なのに。
かぐや姫の噂を聞きつけたこの国のトップオブセンターオブジアースが、つまりは帝が、「ちんかぐや姫にあいたいちん」と言ってきた。
正直面倒だったが、まあそこ押さえておけば箔が付くのは間違いなかったので、まあとりあえず行ってみた。
だがそれが悲劇の始まりだった。
後世に「ボイヘレンの乱」と語り継がれる宇宙大戦争の序章と、この対面がなろうとは、送られてきた帝からの招待状に描かれた帝の顔に、落書きしそれに飽き、寝て、厠に行きたいとごね、何でさっき言わなかったんだと諭され、さっきはしたくなかったんだもんといじけ、寝て、こんな狭い籠で運ばれる私、を、飛脚がかつぐ荷にたとえ、こんな歌を詠んだかぐや姫は、知る由もなかった。
ニタラグデ イタルデレンヴォ ココタミル ヒングラベベド キニスカヤンゲ
思いがけず名歌が詠めたので、またニマニマしつつ、何度も言うようだがこの時のかぐや姫には知る由もなかったがこの後、えらい大変なことになるのであった。
次回早くも最終回!
続く
ジャック・ラカン「野菜と梅毒より」
かぐや姫にとって「地球で老人によって持ちかけられる縁談、その後結婚」というシナリオほど、生きる気力をそぐものはなかった。
ボリンガ星人にとって、異星人との結婚はそのまま異星への永住を意味するのであって、話に聞いたことしかないジュレティおばさんの様な悲惨で滑稽な人生を歩むわけにはいかないので、かぐや姫は真剣に考えていた。
そもそもこの星に嫌々ながらも送られてきたのは、無事に帰るため、帰って大人になるためなのであり、ボリンガに帰った後、『ダダビリの昼下がり』や『キーラ・デッセ・オマン―ニンタポの物語―』などで知られる俳優のケゲレー・ウドンコスタのようなタイプの男子と出会えないとも限らないし、割と思い込みの激しいタイプでもあるかぐや姫にとっては、そういう出会いがまず間違いなく訪れるであろうとほぼ確信していた。
だので。
どんな奴が求婚に来ようとも、ヴェンドポ地方出身の女性らしく、言葉とテクニックで首尾よく追い払うような算段を、ほぼ毎夜、ボリンガのある方角の空をじっと眺めながら繰り返していた。
時は来た。
かぐや姫の前には五人の男たちがずらりと並んだ。
地球の男たち、それも強欲にまみれた連中特有の、脂ぎった精神が作り出す汚い笑顔をそれぞれが個性なく浮かべながら、群がっていた。
どいつもこいつもなかなかに高貴な身分らしく、この星での流行を取り入れた奇抜なファッションに身を包んでいたが、異星人の立場からものを言わせてもらえば、どれもこれも見るに堪えない、例えるならばユーゲダの死骸にゼンポニやゲジュンがプンプンたかっているような(まあそれは言いすぎだが)、そういうひどいものだった。
だから無茶苦茶を言った。
仏の御石の鉢も蓬莱の玉の枝も火鼠の裘も龍の首の珠も燕の子安貝も、ボリンガではたやすく手に入る類の別段珍しいわけでもない代物だったが(とはいってもその辺に落ちてるとかそういうことではなく、ウェンジズ爺さんに頼んでインダボ・フェンダボの術を使って出してもらうわけだが)、地球にはその手の超人がいないのでまあ見つけてくるのはどだい無理な話と踏んで、「これを持って来たら結婚してやる」と高らかに宣言してやった。
5人のうち4人までは、まあ精神が淀んでいたのだろうこともあって偽物をこしらえたり、的外れなものを持ってきたり天気が悪くなったので探すのをやめたりしていたが、ちょっと好青年タイプの(俳優でいえばミン・ダッセ!)男が、いささか誠実な探しっぷりであと一歩のところまで肉薄してしまったので、まあ彼には悪いことをしたがサクッと絶命してもらった。
はい残念~
心の中でかぐや姫はニマニマしながら、なんとか縁談の危機を乗り切ったのでいよいよさあやっとこさついに帰れるぞ帰るぞ帰ってやるぞと、盛り上がっていた。
なのに。
かぐや姫の噂を聞きつけたこの国のトップオブセンターオブジアースが、つまりは帝が、「ちんかぐや姫にあいたいちん」と言ってきた。
正直面倒だったが、まあそこ押さえておけば箔が付くのは間違いなかったので、まあとりあえず行ってみた。
だがそれが悲劇の始まりだった。
後世に「ボイヘレンの乱」と語り継がれる宇宙大戦争の序章と、この対面がなろうとは、送られてきた帝からの招待状に描かれた帝の顔に、落書きしそれに飽き、寝て、厠に行きたいとごね、何でさっき言わなかったんだと諭され、さっきはしたくなかったんだもんといじけ、寝て、こんな狭い籠で運ばれる私、を、飛脚がかつぐ荷にたとえ、こんな歌を詠んだかぐや姫は、知る由もなかった。
ニタラグデ イタルデレンヴォ ココタミル ヒングラベベド キニスカヤンゲ
思いがけず名歌が詠めたので、またニマニマしつつ、何度も言うようだがこの時のかぐや姫には知る由もなかったがこの後、えらい大変なことになるのであった。
次回早くも最終回!
続く
かぐや姫+SF小説 第三話(最終回)
- 2009.03.18 Wednesday
- かぐや姫+SF小説
ヤマデーブゲッリヤマデーブゲッリヤマデーブゲッリ、オマ デーリゲルンパ(芋を煮たい芋を煮たい芋を煮たい、そして食いたい)
マルセル・プルースト『コンビニライフにぞっこんだぜ 第9巻』
大変なことが起きるきっかけと言うのは概してくだらないものだ。
ボリンガ星史を振り返ってみればそれは一目瞭然で、星中を巻き込んで1000年以上も続いた第三次モウタイ大戦争は、ダッデム国王43世がフェデリク湖岸で暗殺されたのがきっかけで、その暗殺を企てたのは第3側室のビラーデル姫であり、その決断に至ったのは国王が姫たちに配ったカシューナッツ(この星で言う所の羊羹)の大きさがまちまちであったばかりか、セメント(この星で言う所のお茶)はぬるく、箸休めとして用意されたじゃがりこ(この星で言う所のじゃがりこ)があまりにも堅かったことに腹を立てたその日が、観測史上最も暑く湿度も高くイライラジメジメする日だった、という理由からである。
かぐや姫が巻き込まれることになったボリンガ星VS地球の全面的大戦争、「ボイヘレンの乱」のきっかけは、そのえっとなんていうか・・・帝の恋心であった。
帝くらいになっちゃうと、世の中に自分の言うこと聞かない奴なんてまあいないわけだが、かぐや姫にはそれが通用しなかった。
だってノット地球人だから。
帝と会い、帝にアドレスを聞かれ、面倒だがしつこいので教え、帰りの道中にもう連絡があり、長文で、すんごい長文で、簡単にいえば「好きっす」ってことで、あーかったりぃ、と思ってる間に、もう次のが来、だりぃだりぃと思ってる間に、どうにか帰宅し、それからというもの、とにかくしつこくやってくるその連絡に、うんざりぐったりしつつ、でも時には返し、すると信じられない速さで信じられない分量の返事が来、やっべえこれドロ沼、ドロ沼ラビリンスっしょ、とか思ってたら、なんか涙出てきて、なんかもう止まんなくて、着物ビッショビショで、重くて、いいやもう寝ちゃお、と、思ってたら、空のあっちの遠くの向こうの方から、来た。
お迎えが、来た。
あれだけ待ってたものが、本当に現れたときのリアクションなんて、たかが知れている。
んあー
かぐや姫から実際に出た言葉はそんなもんだった。
んぽー
と言いながら立ち上がり
んきゅー
と言いながら老夫婦に事情を話し
んんどばーじゅらっちゃんーぎゅりどふぇん!
と言いながら明日お世話になった人にあいさつ回りをしたのち、ボリンガ星に帰ろう、と心に決めた。
でも帝はどこまでも粘着質な奴だった。
かぐや姫のそうした事情を耳にした途端、軍勢を率い、かぐや姫を腕づくで我が物にしようとした。
ボリンガ星人たちにとって、「送りこんだ娘がそこでモテちゃう」なんてのはまあよくある話だったので、戦の準備はあった。
あったが、いつもとは事情が違った。
つい先日のことだ。
ボリンガ星の現国王イポリン8世と、彼の第11側室マッタイン姫の長女ジュリトン姫との間に子供が出来た。(こんなこと覚えてる人は皆無だろうが、第11側室マッタイン姫はかぐや姫の母親であり、ジュリトン姫はかぐや姫の姉である。そして側室の娘と国王が通じてたなんてのは万国共通・言語道断のタブーである)
このスキャンダルを受け、イポリン8世は「自分は誘惑されただけだ」とコメントしたため、瞬く間にマッタイン姫とジュリトン姫の処刑が決まり、つい先頃、執行された。
つまり、かぐや姫はもう地球にいる理由がなくなったから、もう姫でも何でもないから連れ戻されるのである。
そうとは知らず故郷に帰れることをやみくもに喜ぶかぐや姫、それを何とか阻止しようと励む帝、詳しくは聞かされてないけどとにかくかぐや姫を連れ戻さないと自分が何をされるかわかったもんじゃない、下っ端ボリンガ星人たち。
この微妙にずれた三者の在り様こそが、「ボイヘレンの乱」が不必要に長引いた一番の原因である。(余談だが、ポップラー波を銃口から放つ最新式のヨンヨンレーザーガンに対し、竹槍を担いだ軍勢が、案外健闘したことで、ボリンガ星では竹に似たヒッテレの再評価がこの戦争をきっかけに進んだのは有名な話である。)
結果的には、下馬評通り、ボリンガ星の圧勝に終わった。(余談だが、この戦争で唯一犠牲になったボリンガ星人であるイクリナス・エモ・ダンビダンビ・ルーネンバーの死を悼む、という名目で作られた「エモ公園」は、先ごろ、ホームレスや暴走族の溜まり場と化し、風紀を乱しているから無くせという住民の声があまりにも多かったため、完全に消滅した。今は、彼の故郷であるベッシラ駅前に「竹槍に串刺しにされたエモ・ダンビダンビ像」だけが寄贈され、若者たちの待ち合わせ場所として使われている。)
帝はそうなるといともあっさりと手を引き、何事もなかったかのように「ちん、ちん」言っていた。
老夫婦もまた、何事もなかったかのように、老夫婦らしい背伸びをしない生活に戻っていた。
かぐや姫は・・・・心弾ませていた。
ボリンガ星の言葉で「希望」と言う意味を持つ「サトーン号」の窓から見える円形の宇宙を見つめながら、これからの自分にわけもなくわくわくしていた。
思わずこんな詩を、曇った窓ガラスに書いていた。
ク デレーオラ イヴェデンサ イオ ポムニ オリ オリタ ラッパエス
もちろんこの時のかぐや姫に、星に戻ってから自分の身に降りかかる運命など想像することすらできなかった。
彼女にできることと言えば、ただぼーっとして、なぜだか流れてくる涙を拭きながら、少しずつ遠ざかっていく地球を見つめることくらいだったのである。
はい、めでたしめでたしですね。
かぐや姫+SF小説、完。
マルセル・プルースト『コンビニライフにぞっこんだぜ 第9巻』
大変なことが起きるきっかけと言うのは概してくだらないものだ。
ボリンガ星史を振り返ってみればそれは一目瞭然で、星中を巻き込んで1000年以上も続いた第三次モウタイ大戦争は、ダッデム国王43世がフェデリク湖岸で暗殺されたのがきっかけで、その暗殺を企てたのは第3側室のビラーデル姫であり、その決断に至ったのは国王が姫たちに配ったカシューナッツ(この星で言う所の羊羹)の大きさがまちまちであったばかりか、セメント(この星で言う所のお茶)はぬるく、箸休めとして用意されたじゃがりこ(この星で言う所のじゃがりこ)があまりにも堅かったことに腹を立てたその日が、観測史上最も暑く湿度も高くイライラジメジメする日だった、という理由からである。
かぐや姫が巻き込まれることになったボリンガ星VS地球の全面的大戦争、「ボイヘレンの乱」のきっかけは、そのえっとなんていうか・・・帝の恋心であった。
帝くらいになっちゃうと、世の中に自分の言うこと聞かない奴なんてまあいないわけだが、かぐや姫にはそれが通用しなかった。
だってノット地球人だから。
帝と会い、帝にアドレスを聞かれ、面倒だがしつこいので教え、帰りの道中にもう連絡があり、長文で、すんごい長文で、簡単にいえば「好きっす」ってことで、あーかったりぃ、と思ってる間に、もう次のが来、だりぃだりぃと思ってる間に、どうにか帰宅し、それからというもの、とにかくしつこくやってくるその連絡に、うんざりぐったりしつつ、でも時には返し、すると信じられない速さで信じられない分量の返事が来、やっべえこれドロ沼、ドロ沼ラビリンスっしょ、とか思ってたら、なんか涙出てきて、なんかもう止まんなくて、着物ビッショビショで、重くて、いいやもう寝ちゃお、と、思ってたら、空のあっちの遠くの向こうの方から、来た。
お迎えが、来た。
あれだけ待ってたものが、本当に現れたときのリアクションなんて、たかが知れている。
んあー
かぐや姫から実際に出た言葉はそんなもんだった。
んぽー
と言いながら立ち上がり
んきゅー
と言いながら老夫婦に事情を話し
んんどばーじゅらっちゃんーぎゅりどふぇん!
と言いながら明日お世話になった人にあいさつ回りをしたのち、ボリンガ星に帰ろう、と心に決めた。
でも帝はどこまでも粘着質な奴だった。
かぐや姫のそうした事情を耳にした途端、軍勢を率い、かぐや姫を腕づくで我が物にしようとした。
ボリンガ星人たちにとって、「送りこんだ娘がそこでモテちゃう」なんてのはまあよくある話だったので、戦の準備はあった。
あったが、いつもとは事情が違った。
つい先日のことだ。
ボリンガ星の現国王イポリン8世と、彼の第11側室マッタイン姫の長女ジュリトン姫との間に子供が出来た。(こんなこと覚えてる人は皆無だろうが、第11側室マッタイン姫はかぐや姫の母親であり、ジュリトン姫はかぐや姫の姉である。そして側室の娘と国王が通じてたなんてのは万国共通・言語道断のタブーである)
このスキャンダルを受け、イポリン8世は「自分は誘惑されただけだ」とコメントしたため、瞬く間にマッタイン姫とジュリトン姫の処刑が決まり、つい先頃、執行された。
つまり、かぐや姫はもう地球にいる理由がなくなったから、もう姫でも何でもないから連れ戻されるのである。
そうとは知らず故郷に帰れることをやみくもに喜ぶかぐや姫、それを何とか阻止しようと励む帝、詳しくは聞かされてないけどとにかくかぐや姫を連れ戻さないと自分が何をされるかわかったもんじゃない、下っ端ボリンガ星人たち。
この微妙にずれた三者の在り様こそが、「ボイヘレンの乱」が不必要に長引いた一番の原因である。(余談だが、ポップラー波を銃口から放つ最新式のヨンヨンレーザーガンに対し、竹槍を担いだ軍勢が、案外健闘したことで、ボリンガ星では竹に似たヒッテレの再評価がこの戦争をきっかけに進んだのは有名な話である。)
結果的には、下馬評通り、ボリンガ星の圧勝に終わった。(余談だが、この戦争で唯一犠牲になったボリンガ星人であるイクリナス・エモ・ダンビダンビ・ルーネンバーの死を悼む、という名目で作られた「エモ公園」は、先ごろ、ホームレスや暴走族の溜まり場と化し、風紀を乱しているから無くせという住民の声があまりにも多かったため、完全に消滅した。今は、彼の故郷であるベッシラ駅前に「竹槍に串刺しにされたエモ・ダンビダンビ像」だけが寄贈され、若者たちの待ち合わせ場所として使われている。)
帝はそうなるといともあっさりと手を引き、何事もなかったかのように「ちん、ちん」言っていた。
老夫婦もまた、何事もなかったかのように、老夫婦らしい背伸びをしない生活に戻っていた。
かぐや姫は・・・・心弾ませていた。
ボリンガ星の言葉で「希望」と言う意味を持つ「サトーン号」の窓から見える円形の宇宙を見つめながら、これからの自分にわけもなくわくわくしていた。
思わずこんな詩を、曇った窓ガラスに書いていた。
ク デレーオラ イヴェデンサ イオ ポムニ オリ オリタ ラッパエス
もちろんこの時のかぐや姫に、星に戻ってから自分の身に降りかかる運命など想像することすらできなかった。
彼女にできることと言えば、ただぼーっとして、なぜだか流れてくる涙を拭きながら、少しずつ遠ざかっていく地球を見つめることくらいだったのである。
はい、めでたしめでたしですね。
かぐや姫+SF小説、完。
さるかに合戦+法廷が舞台の小説 第一話
- 2009.03.25 Wednesday
- さるかに合戦+法廷が舞台の小説
世の中というものはどこまでも醜い。
だが人一倍正義感の強かった私が、裁判官と言う仕事を選んだのはその醜い世界にも「やり直し」が有効なのだという信念があったからに他ならない。
あった。
そう。
確かにあったのだ、あのときまでは。
事の始まりは、法廷に現れた原告が人間ではなく親猿(とみこ)で、ビッチョビチョに泣き濡れていたあの日まで遡る。
とみこが説明した事件の全貌はこうだ。
とみこの一人息子である子猿(ゆめたろう)は、近所でも有名なやんちゃ坊主で、その日もやんちゃにやいのやいのと野外で遊び呆けていた。
そこに現れたのが、蟹(カニ江)だ。
カニ江はなぜだかおにぎりを持っていて、遊び相手が欲しかったゆめたろうは何とか理由をつけてカニ江に話しかけようとし、その辺に落ちていた柿の種を拾って、「交換しようぜ」と持ちかけた。
カニ江は拒否した。
おにぎりと柿の種の交換が割に合わなかったからではない。
ゆめたろうの風体が気持ち悪かったからである。
トータルで14点だ、とカニ江は思った。
禿げあがった頭頂部は勿論、全身の毛がまばらであることやぎょろりとした目が何を考えているのか分からない、というのもかなりその採点には影響していた。
ああやっぱり2点だ、とカニ江は採点をし直した。
日増しに点が下がっていくような、そういう気持ち悪さがゆめたろうにはあった。
が、結局、交換には応じることになった。
気持ち悪すぎて、もはや言葉のやり取りをすること自体に嫌気が差してきたからである。
おにぎりを失ったカニ江は、あんな野郎の手垢がついた柿の種を手元に置いておくのは嫌だったので、すぐにそれを埋めやった。
そしたら育っちゃった。
育っちゃったものは仕方ないので、収穫に踏み切ろうとも思ったが、いかんせんカニ江は蟹だった。
蟹であることをこんなにもおぞましいと思ったことはなかった。
カニ江がたわわに実った実をただ見上げるだけの、つまらない毎日を送っていたある日、ゆめたろうが再びやってきた。
ゆめたろうは猿だ。
猿は木登りだ。
そしてゆめたろうはさっさか木を登り、柿の実をがしっと、その手で器用に採って見せた。
だけどゆめたろうは素直になれない。
一人っ子だったからですか、母子家庭だったからなのですかと、とみこは泣き叫ぶ。
理由はどうあれ、ゆめたろうの口から出てくる言葉は意地悪なものばかりだ。
そして一つ目の事件は起こった。
得意なはずの木登りも、初めて友達が出来るかもしれないと気持ちが浮ついていては、し損じる。
足をトゥルリと滑らせたゆめたろうは、地面に落ちそうになるつかの間になんとか体を翻し両腕をとっさに枝に引っ掛け、運良く転落は避けた。
だがその際の強い振動によって、柿の実(それも全く熟していない)が落ち、カニ江に強かに当たった。
当りどころも悪ければ、そのタイミングも最悪だった。
カニ江は臨月だった。
そして柿の実が当たったショックで生まれたのが子蟹(カニ兵衛)である。
そしてカニ兵衛は現場の状況を後から聞き、激怒した。
状況証拠からゆめたろうが犯人であることは容易に想像ができた。
そしてかの復讐劇が巻き起こったのである。
とみこは言った。
「ゆめたろうが何をしたって言うんですか。あの子は何にも悪くありません、なんとしてもゆめたろうをあんな風にした本当の犯人を捕まえてください」
それがとみこの強い願いだった。
私はそれを静かに聞き、獣臭や生臭さ、普通にうんこの匂いとかもするこの法廷で、自分なりの正義を貫く決断をした。
こうして、私の長い一日が始まったのである。
続く
だが人一倍正義感の強かった私が、裁判官と言う仕事を選んだのはその醜い世界にも「やり直し」が有効なのだという信念があったからに他ならない。
あった。
そう。
確かにあったのだ、あのときまでは。
事の始まりは、法廷に現れた原告が人間ではなく親猿(とみこ)で、ビッチョビチョに泣き濡れていたあの日まで遡る。
とみこが説明した事件の全貌はこうだ。
とみこの一人息子である子猿(ゆめたろう)は、近所でも有名なやんちゃ坊主で、その日もやんちゃにやいのやいのと野外で遊び呆けていた。
そこに現れたのが、蟹(カニ江)だ。
カニ江はなぜだかおにぎりを持っていて、遊び相手が欲しかったゆめたろうは何とか理由をつけてカニ江に話しかけようとし、その辺に落ちていた柿の種を拾って、「交換しようぜ」と持ちかけた。
カニ江は拒否した。
おにぎりと柿の種の交換が割に合わなかったからではない。
ゆめたろうの風体が気持ち悪かったからである。
トータルで14点だ、とカニ江は思った。
禿げあがった頭頂部は勿論、全身の毛がまばらであることやぎょろりとした目が何を考えているのか分からない、というのもかなりその採点には影響していた。
ああやっぱり2点だ、とカニ江は採点をし直した。
日増しに点が下がっていくような、そういう気持ち悪さがゆめたろうにはあった。
が、結局、交換には応じることになった。
気持ち悪すぎて、もはや言葉のやり取りをすること自体に嫌気が差してきたからである。
おにぎりを失ったカニ江は、あんな野郎の手垢がついた柿の種を手元に置いておくのは嫌だったので、すぐにそれを埋めやった。
そしたら育っちゃった。
育っちゃったものは仕方ないので、収穫に踏み切ろうとも思ったが、いかんせんカニ江は蟹だった。
蟹であることをこんなにもおぞましいと思ったことはなかった。
カニ江がたわわに実った実をただ見上げるだけの、つまらない毎日を送っていたある日、ゆめたろうが再びやってきた。
ゆめたろうは猿だ。
猿は木登りだ。
そしてゆめたろうはさっさか木を登り、柿の実をがしっと、その手で器用に採って見せた。
だけどゆめたろうは素直になれない。
一人っ子だったからですか、母子家庭だったからなのですかと、とみこは泣き叫ぶ。
理由はどうあれ、ゆめたろうの口から出てくる言葉は意地悪なものばかりだ。
そして一つ目の事件は起こった。
得意なはずの木登りも、初めて友達が出来るかもしれないと気持ちが浮ついていては、し損じる。
足をトゥルリと滑らせたゆめたろうは、地面に落ちそうになるつかの間になんとか体を翻し両腕をとっさに枝に引っ掛け、運良く転落は避けた。
だがその際の強い振動によって、柿の実(それも全く熟していない)が落ち、カニ江に強かに当たった。
当りどころも悪ければ、そのタイミングも最悪だった。
カニ江は臨月だった。
そして柿の実が当たったショックで生まれたのが子蟹(カニ兵衛)である。
そしてカニ兵衛は現場の状況を後から聞き、激怒した。
状況証拠からゆめたろうが犯人であることは容易に想像ができた。
そしてかの復讐劇が巻き起こったのである。
とみこは言った。
「ゆめたろうが何をしたって言うんですか。あの子は何にも悪くありません、なんとしてもゆめたろうをあんな風にした本当の犯人を捕まえてください」
それがとみこの強い願いだった。
私はそれを静かに聞き、獣臭や生臭さ、普通にうんこの匂いとかもするこの法廷で、自分なりの正義を貫く決断をした。
こうして、私の長い一日が始まったのである。
続く
さるかに合戦+法廷が舞台の小説 第二話
- 2009.04.01 Wednesday
- さるかに合戦+法廷が舞台の小説
プロである私の目から見て、まず初めに論争の焦点になるのは、カニ江の死が事故だったのかどうかについてだろう。
・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?
すまない。
ぞろぞろと入場する弁護側の顔ぶれを見て、声もなく驚いてしまった私だ。
弁護士の親臼(ウス岡)を先頭に、今回の被告であるカニ兵衛、蜂(ビーリー・ミリガン)、栗(クリントン)、子臼(ウス吾朗)、牛糞(ウンコ)がそぞろ歩いてやってきた。
「オールスター」という言葉が一瞬だけ脳裏をよぎったが、すぐにたち消えた。
色々この集団を手際よく括る愛称を考えてみたが、結局私は「今日、なんか祭りなんだ」と思うことで決着をつけた。
・・・・・・・・・・・!!??
あ、ああすまない。
検察側の求刑が、まあ予想通りと言うかなんというか「死刑」だったもので、ちょっとぼうっとしてた。
それも被告側全員の死刑を望むそうだ。
そうして検察側の冒頭陳述が終わり、早速、ウス吾朗が証言台に立つ。
ウス吾朗は臼だが、おそらくは昨日、父親のウス岡とみっちり丹念に練習を重ねたであろう証言を、淀みなくすらすらと述べていた。
まず、カニ江への渋柿攻撃は、はっきりと意図されたものであり、そこに殺意があったのは間違いがないということ。
そして、自分たちがカニ兵衛と結託してゆめたろうへのリベンジを決行したという話は、検察側のでっち上げたシナリオに他ならず、というのもその当日、むしろゆめたろうこそがカニ兵衛を襲撃しようとたくらんでいて、それを見破った自分たちによる正当防衛が、結果的にゆめたろうの惨殺につながってしまった、ということ。
ゆめたろうには悪いことをしたと思っているが、大前提としてゆめたろうのような悪猿に迫られたら普通に怖いじゃないですか、と、汗で落ちそうになった銀縁眼鏡を器用に臼の縁の部分で持ち上げながら私に訴えた。
その証言はどの証拠と照らし合わせても、妥当なものであり、更に言えば、非常に残念な話ではあるのだが、ゆめたろうの常軌を非常に逸した外見が、今回の一件に関して、非常にゆめたろう自身にとって非常に不利に非常に働いているというのは非常に間違いがなかった。
私も彼の遺影や現場での死体写真でその風貌を確認したが、ここだけの話、生前と死後の写真の区別が全くつかなかった。
生きながらに死んでいるとでも言えばいいだろうか、まさに「これで死んでるんだぜ」を地で行く、そういうリアルかっちゃんだったのである。
司法が、ある個人の顔面を根拠に揺らぐようなことがあっては決してならないことは百も承知であるが、そういう大前提を覆しかねない神の悪戯が、確かに眼前に現前しているのだという事実だけは是非とも覚えて帰ってもらいたい、いや、出来れば帰ってほしくはない。
・・・☆∂◆¢£§ΞЁ㍽Ж¥鬱¶≠!!!???
ああ、言葉にならなすぎて、つい呪詛ってしまった。
こんな理路整然としたウス吾朗の証言に対し、検察官(ポン太←これでも人間)は、「検察側の質問はないです!」と高らかに言い放った。
死刑を求刑しているのに検察側が最初の被告人質問をスルー。
私は察した。
この裁判には何かからくりがある。
そして気づいた。
今のところ、私にはその正体について、皆目見当がつかないということを。
そしてその謎を解くカギは、いま眼下で震えわなないている大学生の二人、ビーリー・ミリガンとクリントンが握っている。
ということにしようと、筆者はいま、なんとなく思っている。
続く
・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?
すまない。
ぞろぞろと入場する弁護側の顔ぶれを見て、声もなく驚いてしまった私だ。
弁護士の親臼(ウス岡)を先頭に、今回の被告であるカニ兵衛、蜂(ビーリー・ミリガン)、栗(クリントン)、子臼(ウス吾朗)、牛糞(ウンコ)がそぞろ歩いてやってきた。
「オールスター」という言葉が一瞬だけ脳裏をよぎったが、すぐにたち消えた。
色々この集団を手際よく括る愛称を考えてみたが、結局私は「今日、なんか祭りなんだ」と思うことで決着をつけた。
・・・・・・・・・・・!!??
あ、ああすまない。
検察側の求刑が、まあ予想通りと言うかなんというか「死刑」だったもので、ちょっとぼうっとしてた。
それも被告側全員の死刑を望むそうだ。
そうして検察側の冒頭陳述が終わり、早速、ウス吾朗が証言台に立つ。
ウス吾朗は臼だが、おそらくは昨日、父親のウス岡とみっちり丹念に練習を重ねたであろう証言を、淀みなくすらすらと述べていた。
まず、カニ江への渋柿攻撃は、はっきりと意図されたものであり、そこに殺意があったのは間違いがないということ。
そして、自分たちがカニ兵衛と結託してゆめたろうへのリベンジを決行したという話は、検察側のでっち上げたシナリオに他ならず、というのもその当日、むしろゆめたろうこそがカニ兵衛を襲撃しようとたくらんでいて、それを見破った自分たちによる正当防衛が、結果的にゆめたろうの惨殺につながってしまった、ということ。
ゆめたろうには悪いことをしたと思っているが、大前提としてゆめたろうのような悪猿に迫られたら普通に怖いじゃないですか、と、汗で落ちそうになった銀縁眼鏡を器用に臼の縁の部分で持ち上げながら私に訴えた。
その証言はどの証拠と照らし合わせても、妥当なものであり、更に言えば、非常に残念な話ではあるのだが、ゆめたろうの常軌を非常に逸した外見が、今回の一件に関して、非常にゆめたろう自身にとって非常に不利に非常に働いているというのは非常に間違いがなかった。
私も彼の遺影や現場での死体写真でその風貌を確認したが、ここだけの話、生前と死後の写真の区別が全くつかなかった。
生きながらに死んでいるとでも言えばいいだろうか、まさに「これで死んでるんだぜ」を地で行く、そういうリアルかっちゃんだったのである。
司法が、ある個人の顔面を根拠に揺らぐようなことがあっては決してならないことは百も承知であるが、そういう大前提を覆しかねない神の悪戯が、確かに眼前に現前しているのだという事実だけは是非とも覚えて帰ってもらいたい、いや、出来れば帰ってほしくはない。
・・・☆∂◆¢£§ΞЁ㍽Ж¥鬱¶≠!!!???
ああ、言葉にならなすぎて、つい呪詛ってしまった。
こんな理路整然としたウス吾朗の証言に対し、検察官(ポン太←これでも人間)は、「検察側の質問はないです!」と高らかに言い放った。
死刑を求刑しているのに検察側が最初の被告人質問をスルー。
私は察した。
この裁判には何かからくりがある。
そして気づいた。
今のところ、私にはその正体について、皆目見当がつかないということを。
そしてその謎を解くカギは、いま眼下で震えわなないている大学生の二人、ビーリー・ミリガンとクリントンが握っている。
ということにしようと、筆者はいま、なんとなく思っている。
続く
1/3 >>
