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アーカイブ: 2009/04/22

(シンデレラ×白雪姫)+ケータイ小説 第一話

あたしの名前はシンデレラ。
完全に孤児。

ママはあたしが生まれる前に事故で死んだ。
パパはあたしが2歳の時に女を作って失踪。

みなしごになったあたしはすぐに孤児院に預けられ、6歳の時に今の家に召使として引き取られた。
それからのあたしの人生の停滞ぶりったらなかった。

「シンデレラ、なんだいこれは。わたしにこんな埃まみれの履物で外へ行けと言うのかい?」
継母が鬼コワ、これはまあ常識。

「あらドブネズミが鎮座してると思ったらシンデレラじゃないか汚いねぇ」
「ほんとだ汚泥がにじり寄って来たと思ったらシンデレラじゃないか吐きそうだよ匂いで」
継母の娘たちからのいじめ、こんなの当たり前。

「お前にこんな布切れもったいないわ剥いでやる剥いでやるって!」
「ぎゃおー」
継父が肉体関係を迫ってくる、これもまあよくある話。

とにかくそういうつまらないアンハッピーを全身で背負いながら、毎日をただ淡々と鬱々と過ごすのが、あたしの日常だった。

あの日だっていつもの通り、そうなるはずだった。

「シンデレラ!シンデレラ!」

継母の、鼻に引っ掛かった嫌味なダミ声が屋敷中に響いた。
あたしは急いで階段を昇り、継母一同がいる食卓に向かった。

「おやおやシンデレラ、今日も黄ばんだドレスがとってもお似合いで」
「あらお姉さま、火であぶったスチールウールさながらにチリッチリの黒髪もセクシーですわよ」
「いえいえ何と言ってもスラっと伸びた指先の爪の黒ずみが炭坑夫を思わせてたくましい限りよ」

継母の娘であるマンデラ、アラファト、スーチーの三姉妹が今朝も全開だ。

「こらあなたたち、大事な召使いをそんな風に言うんじゃありません。こう見えても週給20ザビエルの高給取りなんだからねムホホ」

継母も不敵な笑みを浮かべながら嫌味を言う。

「お母様、20ペリーの間違いじゃないですか?20ザビエルって、イヤリング片耳分だって買えませんわ」

そりゃそうだ。
正確にはそこから源泉徴収で2ザビエル、国民年金で3ザビエル29イエズス引かれた上に食費や光熱費も払わされるので、出来ても市場でカラフルなヒヨコ買うくらいなもんだ別に絶対全く買わないけど。

「奥様、ご用件はなんだったでしょうか」
「シンデレラはせっかちねぇ、小粋なトークを楽しんだりする余裕はないのかしら」

余計な御世話だよばばあ。

「私たち、今日、お城で舞踏会があるのね。それでシンデレラには私たちのお召し物の用意と馬車の手配をやってもらいたいの。出来るわね?」
「はいかしこまりました」

舞踏会か…

「じゃあ行ってくるわねシンデレラ、旦那様以外にお客が来ても絶対に扉を開けてはいけませんよ」
「そりゃそうよお母様。私たちのような美女が出てくるならまだしもこんなヘドロが服着て歩いてるみたいな女が目の前に現れたら、誰でも卒倒しますもの」
「言いすぎよマンデラ、ヘドロなんて。ムホホ。じゃ行きましょ」

馬車はカポカポ音を立てて、小道をゆっくりと進んで行った。

まあなにはともあれ、これで束の間の安息が訪れるのだわ、とシンデレラは胸をときめかせていた。

ピンポーン。
・・・・
ピンポピンポーン
・・・・・・・
ピンポピンポピンポピピピピピピンポーーーーーン

しつこいぞバカやろう。
シンデレラは空気の読めないガサツな糞野郎に、インターフォンの正しい押し方を教えてやると言う名目の一喝を、ビシバシ浴びせかけてやろうと玄関に向かった。

ゆっくりと扉を開けると、そこにいたのは「醜女(しこめ)」の名を欲しいままにするクソババアだった。

続く
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