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アーカイブ: 2009/04/01

さるかに合戦+法廷が舞台の小説 第二話

プロである私の目から見て、まず初めに論争の焦点になるのは、カニ江の死が事故だったのかどうかについてだろう。


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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?


すまない。


ぞろぞろと入場する弁護側の顔ぶれを見て、声もなく驚いてしまった私だ。


弁護士の親臼(ウス岡)を先頭に、今回の被告であるカニ兵衛、蜂(ビーリー・ミリガン)、栗(クリントン)、子臼(ウス吾朗)、牛糞(ウンコ)がそぞろ歩いてやってきた。


「オールスター」という言葉が一瞬だけ脳裏をよぎったが、すぐにたち消えた。


色々この集団を手際よく括る愛称を考えてみたが、結局私は「今日、なんか祭りなんだ」と思うことで決着をつけた。


・・・・・・・・・・・!!??


あ、ああすまない。


検察側の求刑が、まあ予想通りと言うかなんというか「死刑」だったもので、ちょっとぼうっとしてた。


それも被告側全員の死刑を望むそうだ。


そうして検察側の冒頭陳述が終わり、早速、ウス吾朗が証言台に立つ。


ウス吾朗は臼だが、おそらくは昨日、父親のウス岡とみっちり丹念に練習を重ねたであろう証言を、淀みなくすらすらと述べていた。


まず、カニ江への渋柿攻撃は、はっきりと意図されたものであり、そこに殺意があったのは間違いがないということ。


そして、自分たちがカニ兵衛と結託してゆめたろうへのリベンジを決行したという話は、検察側のでっち上げたシナリオに他ならず、というのもその当日、むしろゆめたろうこそがカニ兵衛を襲撃しようとたくらんでいて、それを見破った自分たちによる正当防衛が、結果的にゆめたろうの惨殺につながってしまった、ということ。


ゆめたろうには悪いことをしたと思っているが、大前提としてゆめたろうのような悪猿に迫られたら普通に怖いじゃないですか、と、汗で落ちそうになった銀縁眼鏡を器用に臼の縁の部分で持ち上げながら私に訴えた。


その証言はどの証拠と照らし合わせても、妥当なものであり、更に言えば、非常に残念な話ではあるのだが、ゆめたろうの常軌を非常に逸した外見が、今回の一件に関して、非常にゆめたろう自身にとって非常に不利に非常に働いているというのは非常に間違いがなかった。


私も彼の遺影や現場での死体写真でその風貌を確認したが、ここだけの話、生前と死後の写真の区別が全くつかなかった。


生きながらに死んでいるとでも言えばいいだろうか、まさに「これで死んでるんだぜ」を地で行く、そういうリアルかっちゃんだったのである。


司法が、ある個人の顔面を根拠に揺らぐようなことがあっては決してならないことは百も承知であるが、そういう大前提を覆しかねない神の悪戯が、確かに眼前に現前しているのだという事実だけは是非とも覚えて帰ってもらいたい、いや、出来れば帰ってほしくはない。


・・・☆∂◆¢£§ΞЁ㍽Ж¥鬱¶≠!!!???


ああ、言葉にならなすぎて、つい呪詛ってしまった。


こんな理路整然としたウス吾朗の証言に対し、検察官(ポン太←これでも人間)は、「検察側の質問はないです!」と高らかに言い放った。


死刑を求刑しているのに検察側が最初の被告人質問をスルー。


私は察した。


この裁判には何かからくりがある。


そして気づいた。


今のところ、私にはその正体について、皆目見当がつかないということを。


そしてその謎を解くカギは、いま眼下で震えわなないている大学生の二人、ビーリー・ミリガンとクリントンが握っている。


ということにしようと、筆者はいま、なんとなく思っている。


続く
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