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新しいむかしばなし

「桃太郎+官能小説」 第四話

ショーとロンとポーは揃いも揃ってみなしごだった。

みなしごだったからこそ、肉食する側とされる側という種族も超えて、まあたまにはうっかり羽根噛み切ったりなんとなく耳突き破ったり思いつきで足半分くらいもいだりはしたけれど、ある意味それも「じゃれあい」の範疇に含めることが出来ると皆それぞれが信じていたし、あ、そうだ言うの忘れてたけどショーがイヌでロンがキジでポーがサルね、なんかそういう距離感が心地よかった。

で、お団子発見。

味、まあまあ。

目の前の裸の男が、言葉巧みに三匹を「鬼退治」に連れて行こうとする一連の説明の中で、実はこいつもまたみなしごだと分かり、まあ一緒に行くことにした。

で、迷子になった。

みなしごで迷子。

0点である。

都は思いのほか広く冷たく、そしてよそ者に手厳しい。

それゆえに叩き出された0点だ。

とぼとぼ

とぼとぼとぼ

そんな音を立てながら歩いていた。



都の外れでスプリングセールしてた老婆が、あまりにも優しかったので、一人と三匹は見事に発情した。

「獣込み1600円」

はっきりしてたのは、ここで1600円を払ってしまうと、財布が「おしまい」になるということだった。

でもそうこう考える前に、桃太郎は既に、ていうかずっと、全裸だった。

どうせ0点じゃねえか。

おしまいからはじめようじゃねえか。

そして獣たちは仲睦まじく、同じエロティックコスモスな妄想にその小さなオツムをすっかり支配された。

ちなみにそのエロティックコスモス、こんな内容である。

・・・・・・・・・・・・・・・・

ショーとロンとポーはすぐに片道切符を購入した。

帰ってくる必要などない、ただいくだけ。
そういう決意があったのだ。

ウリザネ(仮名・91)の半自動扉を開閉ボタンによって開けてみると、連結部分の揺れがすさまじく、「モハ!」とか「クハ!」と吐息をもらさせることに成功。

獣たちの御成門駅にもう戻らないという決意は固かったが、たまプラーザから亀有を結ぶリニアモーターガールと化した彼女へのピストン輸送は、パンタグラフからセクシャルエナジーを取り入れようと奮闘しても結局、脱線と人身事故を起こすばかり。

そんな獣たちのチンチン電車を尻目にワンマン電車でかつ快速ラビットなウリザネは、簡単にトンネルを抜けちゃって、まっちろな世界ばかりがその眼前には広がっていたのである。

ぽぽー

あ、汽笛が鳴った。

よし、ぼくたちのふるさとにむけて、しゅっぱつしんこーだ。

わーいわーい。

・・・・・・・・・・・

というような、予想にたがわぬやや頭の足りないものであった。

そして、ウリザネは言った。

あすこの橋さ渡ってどんつきが、鬼が島だで。

キター

全員文無し骨抜きワールドイズエンドって感じだったが、まあとりあえずそっちに歩き始めた。

ずいぶん寄り道が過ぎたが、いよいよ次回、最終回である。

続く
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「桃太郎+官能小説」 第三話

「ヨッ、桃から生まれた桃太郎!!」

と声をかけられれば、ニヤニヤしながら「へぇそうでやんす」と答えるほかない自らの宿命に、桃太郎(4)は、嫌気が差していた。

だから鬼退治に行くことにした。

早速その旨をでんじろうとふじこに告げると、彼らは驚くやら喜ぶやら腰は抜かすわその拍子に色んな指を骨折するわでてんやわんやそのものだったが、どこから引っ張り出したのか、あか抜けない随所に桃がプリントされた装束一式と、「日本一」とヨレヨレの字ででんじろうが書いたのぼりを用意した。

だせーと思った。

しごく単純な話であるが、普通の人間であれば16歳~20歳くらいの年齢にあたる桃太郎にとって、「イケてない」と言うのは万死に値した。

やっぱりだせー

そう改めて思ったのは峠を越えようと山道に入り、最初の休憩をとった時のことだった。

ふじこが「道中に食うのだよ」と渡してきた包みを戯れに開いてみたら、中から出てきたのはきびだんごである。

昨日のおやつじゃねえか。

桃太郎にとっては、喉も渇く道中で表面にかようにたっぷりときびの粉がまぶしてあるこんなものをほおばるなんてのは、まじありえないことで、つうかそもそも桃太郎は桃から生まれた割には甘いものが嫌いだった。

そんな折。

大きめの犬だか狼だかを連れた、髪はこざっぱりとしたショートカットで、顔に赤いペイントと大きめのイヤリングをつけた少女が現れた。

桃太郎は直感した。

この娘は桃太郎に恋をしている、と。

それが高じてエロエロしい気持ちでここに出てきたのだ、と。

こうなったら桃太郎の妄想は加速するばかりであった。

ちなみにそのエロファンタジーはこんな内容である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

生まれてこの方ずっと山で獣たちと育ってきた少女ザン(推定17)は、同世代のどんな娘たちよりも猛々しく荒々しい、高枝切りバサミでヘアカットするような、まあそういう女だった。

だから「峠の山道」というこのシチュエーションは、彼女との攻防にはうってつけと言えたし、桃太郎は桃から生まれた割には気性の荒い方だったので、相手に不足なしといった所だった。

巨犬の遠吠えがゴング代わりとなった。

桃太郎はザンのまわしにまず右手をかけた。

次に左手を突き出し、両差しの形を取ろうとするがザンが繰り出したのはなんとローキックによる金的である。

執拗なまでのローブローの連続に、すぐさまコーナーに追いやられた桃太郎はたまらずクリンチ、からのテイクダウンを狙うが、グレコローマンなザンによるシャイニングウィザードからのスモールパッケージホールドにフォール寸前まで追い詰められ、たまらず白いアレを出そうとしつつも、「なんだかヌルヌルするよヌルヌルするんだよ」といった抗議が受け入れられることもなく、やや不正の臭いもする束の間の猪木・アリ状態を経て、地獄車や三角絞めといった古式ゆかしい技で攻められるうちヌルヌルもいつしか快感になり、よく分からないうちにレフェリーストップによるTKO負けを喫していた。

桃太郎は思った。

後ろ手にフリル付ブラジャーのホックを留めるザンの方がよっぽど鬼らしく、鬼退治などただの絵空事だったんじゃないか、と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

というようなものである。

そんな妄想に身震いしているうちに娘はどこかに消えていて、気付けば桃太郎はすっかり裸だった。

女山賊に襲われているショックを、エロファンタジーに自ら変換して紛らわせていたと考えることも出来るだろう。

その場に残されたのは、ださい装束とのぼりと・・・・その辺に転がってるきびだんごに群がる小動物たち。

桃太郎は考えるのも嫌だったので、その小動物たちを「ショー」と「ロン」と「ポー」と名付けた。

桃太郎が、困ったらこいつらを食料に、と思っていたのは言うまでもない。

続く
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「桃太郎+官能小説」 第二話

でんじろうの妄想をよそに、ふじこは川で洗濯をしていた。

これといって特徴のないつまらない洗濯を、ただただやっていた。
そういうつまらなさが、生まれも育ちも質素なふじこにとって「生きる」ということだった。

なので、上流から、トータルで見てかなり傷だらけの巨桃が、ざんぶらどんぶらゆっくりもったり流されてきたのには驚くというよりは興奮した。

だってこんな巨桃が流れてくるなんて普通じゃない。

→きっと上流では大変なことになっているはず。

→つまりそれはエロトラブルよきっと。

ちなみにふじこの妄想したエロトラブルの内容はこんな感じである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

早くに妻を亡くし、果樹園を営んでいたブチャラティ(78)は、娘のボチャミティ(59)がその夫のベチャルティ(82)にいよいよ愛想を尽かし、夜の賭場で知り合ったバチャメティ(94)に夢中であることを郵便配達の吉田君(17)に聞かされ、激怒した。

毎度毎度、父親の自分より年上の男ばかり選ぶ娘を咎めに彼女の家に向かうと、窓の外からもはっきりくっきり見通せる分かりやすさで、二人は既に交わっていた。

バチャメティは色が白く線の細い童顔の男で、悔しいが、実際の年齢よりも10~20歳程度若く見え、肌感がピチピチしているのが、悔しいながらも、窓越しにもわかった。

自分の娘がハレンチにいそしむ姿をじっくりと見ちゃうのはどう考えても禁忌だが、「咎めに来た」という父親としての大義が、ブチャラティをそこに留まらせた。

久々に見たボチャミティの裸はその、なんというか、ええっとそのうーんと、死んだ妻のビチャゲティ(享年61)にそっくりだった。

それだけでブチャラティの木製バットは、いつの間にやらゴリッゴリの、いわば阪神・金本の大腿筋の如くだった。

そして事情は窓のこっち(レフトスタンド)もあっち(ライトスタンド)も同じらしく、バチャムティのこけしバットもガチッガチの、いわばカブス・福留の臀部筋のごたるで、ネクストバッターズサークルにいながら思わず代打を申し出そうになったほどである。

だが、トゥーボールワンスティックからの4球目、ボチャミティのロッテ・渡辺を思わせる下方からの、あわや退場かと球場を一瞬ざわめかせた危険球は見事にバチャムティの一本足打法を封じ、「記録よりも記憶よりも実は恥辱にまみれたいっす」との名言を残させつつ、裏の攻防へと突入した。

「夜の走攻守が揃ってるよね」と各所で定評のあるバチャムティだったが、外野からのマリナーズ・イチローを思わせるレーザービームもいざボチャミティにバックホーム!となると今一歩届かず、その見事なバット捌きに連打を浴びると、自慢のIT野球が誇る勝利の方程式・JFK(準備・ファ●ク・金払う)なぞもはや意味がなかった。

結局、ボチャミティのつるりとしたバックスクリーンに並ぶおたまじゃくし達が、バチャムティのコールド負けと、その日のナイター中継が延長しないことを告げていた。

思わずブチャラティはあさっての方向に走り出した。

なんだか知らないけど、「永久に不滅だ」と思った。

そんな折、彼の果樹園でひっそりと育っていた巨桃が、こうした一連とは全く無関係にごろりと落ち転がり川に流れた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

というようなものである。

巨桃が落ちた話とエロトラブルの一件には、誰の目にも明らかなほど因果関係がないわけだが、巨桃を持ち帰り、既に包丁を手にしたふじこにはそんな細かいことはもうどうでもよかった。

ふじこは、何の迷いもなくその巨桃にズバッと包丁を入れた。

出てきたのは言うまでもなくギャアギャア泣きわめく赤ん坊であった。

正確にいえば、体の真ん中にすーっと一本の出来たての切り傷の入った、裸の赤ん坊であった。

血がドバドバ出たのは言うまでもないが、赤ん坊がなぜ泣いているのか、つまらない人生を送ってきたふじこにはサッパリだった。

続く
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「桃太郎+官能小説」 第一話

桃太郎第一話

でんじろう(85)は、妻のおふじ(70)が、密かに他の男と密会しているのではないかという疑念を取り去る事が出来ないでいた。

おふじは気立てが良く、自分にはもったいなすぎる女だとでんじろうは常々思っていたのだが、ひとたび疑念を抱いてしまうと、おふじの一挙手一投足が全て怪しく感じられ、万国の老人よろしく早起きをしてしまうのであった。

早起きと言っても、でんじろうの起きたころには、おふじは既に朝食の支度をしているのが常で、でんじろうはかまどで火を焚き汗を流しているおふじの背中にビタッ!とはりついた襦袢を見ては、下腹部のウィニーが噛み応えのあるシャウエッセンを経て遂にはチョリソー先生の異名をとるまでに至る成長物語を見届けつつ、二度寝するのが日課となっていた。

が。

ある朝のことである。

でんじろうはいつもの通り二度寝をし、朝食を食んで、柴刈りの仕事に向かうつもりだった。

だが、出かける直前に、「私は川へ洗濯に行きます」と言ったおふじの表情を仕事への道すがら思い出し、でんじろうは「はて?」と思った。

「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」

傍から見ればそうとしか言いようのない状況がそこにはあるわけだが、洗濯を川にしに行くのは今に始まったことではない。

いつだって洗濯は川で行なってきたはずなのである。

なのに。

今朝のおふじは「行ってくる」とだけ言ったでんじろうに、わざわざ「川へ洗濯に行きます」と告げたのである。

これは怪しいではないか。

でんじろうよりも15年も後に生まれたおふじの肌の色つやが、でんじろうと同世代の女たちと全く異なっていることは言うまでもないが、でんじろうはぷっくらとした唇こそが彼女の魅力であると確信していて、どこぞの若造の、いつも目の前にあるチョリソー先生ではなく大味なジャンボフランクをほおばっている様を想像せずにはいられなかった。

そこまで考えが至ると、でんじろうは己の足が自然と川に向くのを止めることができなかった。

しかし、自分の知らない男とおふじがどんなまぐわいをしてきたのかしているのかしていくのか、という過去現在未来すべてをまたにかける壮大なエロ大河を夢想しながらだったので、傍から見れば「老人ののらりくらり」に他ならなかった。

ちなみにエロ大河、こんな内容である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

おふじは、夫のでんじろうがいつもの様に山に柴刈りに行き、その背中を見送った後、そそくさと出かける準備をし、やや早足で川に向かった。

川近くのひときわ汚い平屋がおふじの密通相手でんきち(仮名・60)の住まいである。

でんきちはだれの目にも明らかなほどの荒くれ者だった。

褐色の肌に切れ長の目、横に広がった大きな鼻と拳が丸々入りそうな大きな口、太い首に厚い胸板、太い指先にはいびつに割れた爪がおまけのように付いており、爪と皮膚の間には泥とも血ともいえぬ黒ずんだ何かがこびりついていた。

そういう汚い男に、なぜだかおふじは惹かれた。

洗濯をしに来てるのに汚い男と関係し体を汚す、という禁忌も去ることながら、夫であるでんじろうに無い獰猛さ加減がおふじには塩梅が良かった。

でんきちはおふじが平屋に入ってくるや否や、飛びかかるように迫ってきて、着物を剥いだ。

脱がせた、というよりも、剥いだ、という表現がしっくりとくる、そういう乱暴さである。

すっかり全身を剥がれたおふじは、自分の全身が炭火で焼かれる肉塊のように徐々に火照り、でんきちの厚切りタンがねっとりと、肩ロースからサーロイン、ヒレを経て遂にはテールに至るのを感じ、負けじと搾りたてのレモン汁を塩ダレと一緒に滴らせつつ、黒々としたサンチュに赤ミソをまぶしてでんきちの口に押し込んだ。

意外にあっさりだな
栄養満点よ

などといった爽やかな会話が交わされた後、でんきちが自慢のリブロースを取り出すと事態は急転した。

おふじは骨付きスペアリブさながらの頑強さを誇るそれに、特製ダレには目もくれず豪快にむしゃぶりついたかと思うと、程なくして自慢の唇はデラデラ、でんきちはすっかり骨抜き、どころかユッケになっていた。

口元をお手拭きでぬぐいながら、おふじは網の交換を申し出た。

束の間の、焼肉パーティは終わった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

というようなものである。

でんじろうはそれでもなかなかのスピードで山を駆け下り、家を通り過ぎ、もうすぐで川にたどりつく。

だが、そのとき既におふじは帰宅し、包丁を片手に巨大なそれと対峙していることを、でんじろうが知る由はなかった。

続く
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