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「桃太郎+官能小説」 第二話

でんじろうの妄想をよそに、ふじこは川で洗濯をしていた。

これといって特徴のないつまらない洗濯を、ただただやっていた。
そういうつまらなさが、生まれも育ちも質素なふじこにとって「生きる」ということだった。

なので、上流から、トータルで見てかなり傷だらけの巨桃が、ざんぶらどんぶらゆっくりもったり流されてきたのには驚くというよりは興奮した。

だってこんな巨桃が流れてくるなんて普通じゃない。

→きっと上流では大変なことになっているはず。

→つまりそれはエロトラブルよきっと。

ちなみにふじこの妄想したエロトラブルの内容はこんな感じである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

早くに妻を亡くし、果樹園を営んでいたブチャラティ(78)は、娘のボチャミティ(59)がその夫のベチャルティ(82)にいよいよ愛想を尽かし、夜の賭場で知り合ったバチャメティ(94)に夢中であることを郵便配達の吉田君(17)に聞かされ、激怒した。

毎度毎度、父親の自分より年上の男ばかり選ぶ娘を咎めに彼女の家に向かうと、窓の外からもはっきりくっきり見通せる分かりやすさで、二人は既に交わっていた。

バチャメティは色が白く線の細い童顔の男で、悔しいが、実際の年齢よりも10~20歳程度若く見え、肌感がピチピチしているのが、悔しいながらも、窓越しにもわかった。

自分の娘がハレンチにいそしむ姿をじっくりと見ちゃうのはどう考えても禁忌だが、「咎めに来た」という父親としての大義が、ブチャラティをそこに留まらせた。

久々に見たボチャミティの裸はその、なんというか、ええっとそのうーんと、死んだ妻のビチャゲティ(享年61)にそっくりだった。

それだけでブチャラティの木製バットは、いつの間にやらゴリッゴリの、いわば阪神・金本の大腿筋の如くだった。

そして事情は窓のこっち(レフトスタンド)もあっち(ライトスタンド)も同じらしく、バチャムティのこけしバットもガチッガチの、いわばカブス・福留の臀部筋のごたるで、ネクストバッターズサークルにいながら思わず代打を申し出そうになったほどである。

だが、トゥーボールワンスティックからの4球目、ボチャミティのロッテ・渡辺を思わせる下方からの、あわや退場かと球場を一瞬ざわめかせた危険球は見事にバチャムティの一本足打法を封じ、「記録よりも記憶よりも実は恥辱にまみれたいっす」との名言を残させつつ、裏の攻防へと突入した。

「夜の走攻守が揃ってるよね」と各所で定評のあるバチャムティだったが、外野からのマリナーズ・イチローを思わせるレーザービームもいざボチャミティにバックホーム!となると今一歩届かず、その見事なバット捌きに連打を浴びると、自慢のIT野球が誇る勝利の方程式・JFK(準備・ファ●ク・金払う)なぞもはや意味がなかった。

結局、ボチャミティのつるりとしたバックスクリーンに並ぶおたまじゃくし達が、バチャムティのコールド負けと、その日のナイター中継が延長しないことを告げていた。

思わずブチャラティはあさっての方向に走り出した。

なんだか知らないけど、「永久に不滅だ」と思った。

そんな折、彼の果樹園でひっそりと育っていた巨桃が、こうした一連とは全く無関係にごろりと落ち転がり川に流れた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

というようなものである。

巨桃が落ちた話とエロトラブルの一件には、誰の目にも明らかなほど因果関係がないわけだが、巨桃を持ち帰り、既に包丁を手にしたふじこにはそんな細かいことはもうどうでもよかった。

ふじこは、何の迷いもなくその巨桃にズバッと包丁を入れた。

出てきたのは言うまでもなくギャアギャア泣きわめく赤ん坊であった。

正確にいえば、体の真ん中にすーっと一本の出来たての切り傷の入った、裸の赤ん坊であった。

血がドバドバ出たのは言うまでもないが、赤ん坊がなぜ泣いているのか、つまらない人生を送ってきたふじこにはサッパリだった。

続く

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