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かぐや姫+SF小説 第一話

ニブ エ ダッセシ マラッキキダゲルポドフ
(お好み焼きだからって何いれてもいいってわけじゃないんだぜ)
 ルカ福音書 第3章58節


かぐや姫は自分の運命を呪っていた。

姫とは名ばかりの、国王の第11側室の次女にすぎない自分のようなものは、こうして見知らぬ星の臭い植物の内側に身をひそめて佇んでいるのがお似合いなんだよと、昔からウマの合わないジュリトン姫が陰で言っているような、そういう気がなんだかずっとしていた。

早く星に帰りたい。

星に帰ったからと言って、そこそこに虐げられるであろうかぐや姫を待ち受けている運命などたかが知れていたが、それでもこんなところにいるよりはましだと、思っていた。

かぐや姫の生まれたウリウリ系M110星雲ボリンガには、成人女性になるその前に、ユン・ホイズラー博士の開発したニンゲッカイルポージポ装置によって急速に幼児化された後、チンダルーリワープによって適当な星に送り込まれ、伝説など適度に残しつつなんとか生き残れば晴れて大人、生き方が平凡だったり野蛮な獣とかに捕食されて生き残れなければそのまま追放っていうかさよなら、みたいなほとんど罰ゲームの様なならわしがあり、馬鹿言ってんじゃねえようざってえよケツの穴に豚トロぶちこんで雑に割った割り箸でぐちゅっとするぞこの野郎、とだれもが皆一様に思うようなしきたりながらも、黙ってそれを受け入れざるを得ない自分の残念な生い立ちには、嫌気がさすばかりだった。

だが、そうは言っても、ここまで来たからにはきちんと成果を残して帰りたいと思うのがかぐや姫の案外真面目なところでもあり、こうしてヒッテレに似た植物の中に身をひそめているのも、初めの出のテンションを大事にしたいというのと、なにはなくともちっちゃいのは無条件にかわいがってもらえるもの、というのを身をもって知っていたからであった。

だもんで。

かぐや姫を発見したのが耄碌した老人だったのは幸いであった。

既に視神経がいかれ現実と夢の境界が精神的にも視覚的にもあいまいなその老翁は、自分はまだまだボケちゃいないんだと言うことを主張すべく、たまたま切った竹の中から偶然少女が出てきたという事実を、竹藪の中で光っていた竹を見つけ切ってみたら玉のようにかわいい少女がいた、という思いがけずレジェンドな方向に捻じ曲げてくれた。

こうしてかぐや姫は期せずして、この星である程度スペシャルでいられる基盤を手に入れ、そして、ほとんど病気のようなスピードで成長した。

通常、ニンゲッカイルポージポ装置によって幼児化したボリンガ人の女性が、ウンツク製薬のショルタリンBを毎食後2錠ずつ服用した場合にのみ、3年程度で元の状態に戻ることが出来るわけだが、おそらくこの星の大気の状態や老人たちがふるまってくれる食事(かぐや姫は筑前煮と呼ばれるブルレッロからオレペレの実を抜いたような料理が特に好物だった)が何らかの、ベオブラボリンに似た成分を含んでいた結果、そういうことになったのだろう。

そうして、数カ月の間に元の、年相応の姿に戻っていったこともまた、かぐや姫の生涯をいい感じにレジェンディックな装いにしてくれたので、幸いだったと言える。

しかし、こうなってくると気になりだすのは、かぐや姫は果たしていつどのタイミングでこの星から帰ることができるのか、と言うことだった。

ボリンガ星のそもそものならわしでは、「生き残る」と言うことがかなり重要なわけで、それは幼児化したボリンガ星人の女性はしばしば獣の餌食になりやすいからなわけだが、これだけ手厚く過保護に扱われていたらそういう心配もなく、なので要するに、もうすぐにでも帰還できるのではないかと期待してしまうのも無理がないのであった。

だがそううまくもいかない。

テリターリおじさんがよく言っていた「ゲレ イポリーポ ユル フェッタ インヴォス!」というあの諺をつい、思い出してしまう。

ある日、老人たちがかぐや姫に示したのは、この星の背の低い男たちとの「結婚」という、もう元も子もない提案だったのだ。

続く

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