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かぐや姫+SF小説 第二話

オポリ ゲ ダビーラ ヨムヤムヘレデスオイト ガンダギャンドゥイ(では早速、片栗粉でとろみをつけていきまーす) 
ジャック・ラカン「野菜と梅毒より」


かぐや姫にとって「地球で老人によって持ちかけられる縁談、その後結婚」というシナリオほど、生きる気力をそぐものはなかった。

ボリンガ星人にとって、異星人との結婚はそのまま異星への永住を意味するのであって、話に聞いたことしかないジュレティおばさんの様な悲惨で滑稽な人生を歩むわけにはいかないので、かぐや姫は真剣に考えていた。

そもそもこの星に嫌々ながらも送られてきたのは、無事に帰るため、帰って大人になるためなのであり、ボリンガに帰った後、『ダダビリの昼下がり』や『キーラ・デッセ・オマン―ニンタポの物語―』などで知られる俳優のケゲレー・ウドンコスタのようなタイプの男子と出会えないとも限らないし、割と思い込みの激しいタイプでもあるかぐや姫にとっては、そういう出会いがまず間違いなく訪れるであろうとほぼ確信していた。

だので。

どんな奴が求婚に来ようとも、ヴェンドポ地方出身の女性らしく、言葉とテクニックで首尾よく追い払うような算段を、ほぼ毎夜、ボリンガのある方角の空をじっと眺めながら繰り返していた。

時は来た。

かぐや姫の前には五人の男たちがずらりと並んだ。

地球の男たち、それも強欲にまみれた連中特有の、脂ぎった精神が作り出す汚い笑顔をそれぞれが個性なく浮かべながら、群がっていた。

どいつもこいつもなかなかに高貴な身分らしく、この星での流行を取り入れた奇抜なファッションに身を包んでいたが、異星人の立場からものを言わせてもらえば、どれもこれも見るに堪えない、例えるならばユーゲダの死骸にゼンポニやゲジュンがプンプンたかっているような(まあそれは言いすぎだが)、そういうひどいものだった。

だから無茶苦茶を言った。

仏の御石の鉢も蓬莱の玉の枝も火鼠の裘も龍の首の珠も燕の子安貝も、ボリンガではたやすく手に入る類の別段珍しいわけでもない代物だったが(とはいってもその辺に落ちてるとかそういうことではなく、ウェンジズ爺さんに頼んでインダボ・フェンダボの術を使って出してもらうわけだが)、地球にはその手の超人がいないのでまあ見つけてくるのはどだい無理な話と踏んで、「これを持って来たら結婚してやる」と高らかに宣言してやった。

5人のうち4人までは、まあ精神が淀んでいたのだろうこともあって偽物をこしらえたり、的外れなものを持ってきたり天気が悪くなったので探すのをやめたりしていたが、ちょっと好青年タイプの(俳優でいえばミン・ダッセ!)男が、いささか誠実な探しっぷりであと一歩のところまで肉薄してしまったので、まあ彼には悪いことをしたがサクッと絶命してもらった。

はい残念~

心の中でかぐや姫はニマニマしながら、なんとか縁談の危機を乗り切ったのでいよいよさあやっとこさついに帰れるぞ帰るぞ帰ってやるぞと、盛り上がっていた。

なのに。

かぐや姫の噂を聞きつけたこの国のトップオブセンターオブジアースが、つまりは帝が、「ちんかぐや姫にあいたいちん」と言ってきた。

正直面倒だったが、まあそこ押さえておけば箔が付くのは間違いなかったので、まあとりあえず行ってみた。

だがそれが悲劇の始まりだった。

後世に「ボイヘレンの乱」と語り継がれる宇宙大戦争の序章と、この対面がなろうとは、送られてきた帝からの招待状に描かれた帝の顔に、落書きしそれに飽き、寝て、厠に行きたいとごね、何でさっき言わなかったんだと諭され、さっきはしたくなかったんだもんといじけ、寝て、こんな狭い籠で運ばれる私、を、飛脚がかつぐ荷にたとえ、こんな歌を詠んだかぐや姫は、知る由もなかった。

ニタラグデ イタルデレンヴォ ココタミル ヒングラベベド キニスカヤンゲ

思いがけず名歌が詠めたので、またニマニマしつつ、何度も言うようだがこの時のかぐや姫には知る由もなかったがこの後、えらい大変なことになるのであった。

次回早くも最終回!

続く

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