- 2012.01.15 Sunday
- 五体肥満足―知られざるデブの生きざま

第1回はコチラから 第2回はコチラから
第3回「デブと成長」(全4回)
ベッタベタの偏見とギットギトの固定観念にまみれた
デブのたぷんたぷんなパブリックイメージを払拭したい。
そんな願いを込めて、我われ大塚ニューコーポは
もぎたてデブのたわわな魅力を伝えるために、
今もっとも太れるクラウドファンディング「CAMPFIRE」において、
このようなプロジェクトを掲げました。
「日本一踊れるデブ・ぎたろー君のポーズ集を作って全国のデブに夢と希望を与えたい!!」
これまで2回にわたって、このプロジェクトの主役である
ダンスカンパニー「コンドルズ」の新人・ぎたろー君の、
デブとしての生態を丸裸にするインタビューを更新してきたのですが…。
日本一の貧弱系ライターの名に恥じない
「ガリガリ博士」ことインタビュアーの福田フクスケが、
デブのデリケートな領域を侵すような配慮に欠いた質問を
浴びせたおしたため、一瞬歩み寄りかけた2人の仲は
ますます一触即発なビッキビキの空気に…。
これは、デブとガリによる言葉のプロレス。
人間の相互理解の可能性に挑戦するドキュメンタリーなのです。
衝撃の事実と肉汁があふれ出す怒涛の第3回がついにゴング!

フクスケ さっきは俺も悪かったよ。「デブのくせに2股かけようとしてたの?」って思ったら、急にイラッときちゃって。
ぎたろー 「デブを理解しよう」っていうインタビュー企画なのに、あなたが「デブのくせに」って言っちゃったら身も蓋もないじゃないですか!
フクスケ ま、結局失恋したって聞いて、溜飲も下がったけどさ。
ぎたろー …あのですね、「デブのくせに」って思ってる人が大塚ニューコーポに一人でもいるって知れたら、記事どころか、CAMPFIREのプロジェクトの根幹にも関わるんですよ? わかってます? もう少し発言に気を付けてください!
フクスケ …うん、ごめんよ。最近、いろいろうまくいかなくてカリカリしてたんだ。一度周囲に根付いてしまったマイナスイメージが払拭できなくて、仕事でもプライベートでもやりづらくてさ。
ぎたろー はあ…そうなんですか。

はあ…そうなんですか(うっめソーダうんっめ)
フクスケ 最近じゃ、自分に与えられたキャラクターから、自分で抜け出せなくなってるような気がして。俺って結局、みんなのコミュニケーションを円滑にするためのネタとして消費されているだけで、一人の人間としては無視されてるんじゃないかなって…。
ぎたろー ふうーん…。

ふうーん…(東京事変解散しちゃうんだあ)
フクスケ だからって、そこでうまく挽回できるほど自分は器用じゃないし…たしかに今は自分にとって大事な時期だとはいえ、自分のことでいっぱいいっぱいになっちゃってる感じも、頼りなくてつまらない人間に見られてるんだろうなあ、とか思うと、もう八方塞がりでさ…。
ぎたろー ……。
フクスケ …あ、ごめんよ、インタビューなのに自分の話ばっかりして。
ぎたろー (小さい声でボソボソと)……とんすか。

…とんすか。
フクスケ …え? とんすか?
ぎたろー …なに言っとんすか。(徐々にグラデーションで声を張り上げていき)デブを前にしてなに甘いこと言っとんすかあ!(フクスケを思いっきりビンタ)
フクスケ (5m横に吹き飛びながら)…ぶべらっ!?!?!?!?!?
ぎたろー デブはねえ、生まれてこの方、自分のイメージとキャラを自分で決めさせてもらったことなんか一度もないんですよ!
フクスケ ぎ、ぎたろー君…?(痛いよ…!)
ぎたろー なんでかわかりますか? デブは、見た目で100%デブであることから逃れられないからです。こんなデブキャラ、自分の柄じゃない。そう思っていても、やんぬるかな避けがたくきっぱりと、デブキャラにされるんです。それを力づくで飲み込んで、受け入れて、その先にやっとデブは自分だけの輝き方を見つけるんですよ。

輝き方を見つけるんだゼェェエエエット!!!
フクスケ 苦労してきてるんだね…(痛い…)。
ぎたろー その点、あなたはパッと見イケてる文科系男子じゃないですか。パッと見イケてるなら、最初のうちにどうにかしなさいよ。なんとかなるうちにキメてこなかったから、今ズルズルになってるんでしょうよ! 甘えたこと言ってんじゃないよ!

はいはい、甘い甘い
フクスケ ぎたろー君、すまなかったよ。デブの背負う宿命の重さに比べたら、俺の悩みなんかゲボクズみたいなもんだった。君にも、デブであることへの葛藤と克服の歴史があったんだね。よかったら、その生い立ちを詳しく聞かせてくれないかな。
ぎたろー わかりました。でも、僕はデブのプロフェッショナルとして、普段からできるだけマジメな話はしないように心がけてきたんです。
フクスケ え、どういうこと? デブはマジメな話しちゃいけないの?
ぎたろー 石ちゃんが苦みばしった顔で体脂肪率の話してるの、聞いたことありますか? モリクミさんが肝臓の数値でナーバスになってるところ、見たことありますか?
フクスケ ない…ね、たしかに。
ぎたろー デブは無邪気で底抜けの笑顔。体を張った笑いやダジャレに終始して、シュールなたとえや考えオチとかは言わない。これは、みなさんが求めていることなんですよ? だから、生い立ちも軽いタッチで話していきますけど、いいですか?
フクスケ もちろんOKさ。俺としても、これまでと原稿のトーンががらりと変わってしまったら、ライターとして未熟みたいに思われるからね! じゃあ、さっそく聞いていくよ!

フクスケ そもそも、ぎたろー君は生まれつき太っていたの?
ぎたろー ウソみたいな話なんですけど、僕が生まれたのは福岡県の「油山」っていう山のふもとで、今は「もーもーらんど」っていう牧場があります。
フクスケ できすぎてるよ! さっそくデブの神様が降りてるじゃないか。
ぎたろー 油っていっても椿油の産地なんですけどね。ただ、太っているのは家系ではないんです。なんでも、親父が僕をたいそう甘やかして、おやつに毎日ケーキとオレンジジュースを与えていたらしくて。だから、物心ついたときにはもう太っていましたね。
フクスケ ぎたろー君が太っていくのを、家族は誰か止めなかったの?
ぎたろー 母親はダイエットさせようと思っていたみたいで、僕に剣道を習わせたんですよ。小学2年生から中学生まで続けて、初段にまでなりました。
フクスケ すごいじゃん! ちなみに得意技は?
ぎたろー 「抜き胴」ですね。ただし、太っているから相手の技をかわせなくて、ほとんど決まらなかったですけど。
フクスケ 持ってるなあwww
ぎたろー 実際は、つばぜり合いからそのまま体格を生かして場外に押し出してました。でも、相手は小回りが利くから、ギリギリのところでかわされて僕が押し出されたりするんですよね。
フクスケ 結局、剣道ではダイエットにはならなかったんだ?
ぎたろー 稽古から帰ると、疲れてお腹空くから食べちゃうんですよ。体はすでにデブとしての基礎ができあがっちゃってたんですね。
フクスケ でも、ぎたろー君は小さい頃から、デブの中でも人気者だったタイプなんじゃない?
ぎたろー いえ、小学生の頃はフツーにいじめられてました(あっさり)。

いじめられてましたよ?
フクスケ あ、えええええ……そうなんだ。…現実って意外とシビアね。
ぎたろー トイレが近いこともあって、すごいからかわれたんですよ。それに僕、「ブタ」とか言われると本気で怒っちゃうタイプだったんで。
フクスケ けっこう気にしてたんだ?
ぎたろー というよりも、自分がデブだってことを認めていなかったんです。体はデブでも、心はイケメンだったんですよね。中高時代も、体を張って笑いをとるのが嫌で、自分は話芸で笑わせるんだってイキってました。
フクスケ ちょうど多感な時期だもんね、思春期とデブは折り合いつかないよ。花田勝氏と貴乃花親方くらい折り合い悪いよ。ちなみに、剣道を中学生まででやめちゃったのはなぜ?
ぎたろー 高校の剣道部が、全国クラスのかなり本気な部活だったんですよ。
フクスケ あー、押し出しがメインの選手はお呼びでないと。
ぎたろー それでどうしようかと思っていたところに、中学の先輩から演劇部に誘われたんです。「入部すれば、学食のコロッケを定期的におごってやる」と言われて、それはいいなと思って演劇部に入りました。
フクスケ 動機がデブすぎるwww イメージ通りじゃんか!
ぎたろー でも、やっぱりそこでも僕は自分のデブを受け入れられなかった。デブをネタにするような役を嫌がってやらなかったんです。
フクスケ 今のぎたろー君からは考えられないね。
ぎたろー まだ自分の中に潜むモンスターの存在に気付いていなかったんでしょうね。

モンスターに気付いてなかったっつうか…
フクスケ なにそのかっこいい言い方! モンスターっていうかデブでしょ?
ぎたろー 自分の特徴を殺してキャラを生かさないなんて、役者としてはダメダメですよね。でも、これまで何かひとつのものに興味を持てたことがなくて無趣味だったんですけど、不思議と演劇だけは興味が持てた。
フクスケ これだっていうものに出会えてよかったよね。
ぎたろー 役者として伸び悩んで、大学時代はしばらくスタッフに専念していた時期もあったんですけど、演劇自体をやめようとは思わなかったですね。
フクスケ 自分のデブ意識が変わった転機みたいなできごとはあったの?
ぎたろー 高校のクラスでカラオケに行ったとき、Kinki kidsの「硝子の少年」を振り付けも覚えて披露したら、ものすごくウケたんですよ。そこで「デブが体を使うとおもしろいんだ」ということに気付いて、それからちょっと意識するようになりましたね。
フクスケ すごい! なんかダンサーとして目覚めるエピソードにもなってるね。人生うまくつながってるなあ。
ぎたろー その後、「ギンギラ太陽's」っていう地元の福岡で有名な劇団に客演したとき、否応なくデブの役をあてがわれて、自分がデブであることから逃れられなくなった。そのとき初めて、自分の中のモンスターと向き合って、デブを受け入れることができたような気がします。

モンスターと向き合えたっつうか…
フクスケ その言い方気に入ってるでしょ? いいなあ、俺も自分の中のモンスターと向き合いたいよ。
ぎたろー その頃、ショーン・ペンの弟で、『フットルース』や『レザボア・ドッグス』に出ていたクリス・ペンという役者と出会ったのも大きいですね。デブとしての役者のあり方は、彼から教わりました。
フクスケ クリス・ペンって、渋すぎるよw ぎたろー君の場合、どっちかというとマイケル・ホイとかサモ・ハン・キンポーから学ぶことのほうが多いと思うけど…。
ぎたろー 小さい頃に『Mr.Boo!』とか『燃えよデブゴン』を観たときは、まだ心にモンスターを飼ってたんで。

モンスターを飼ってたっつうか…
フクスケ ああ、「これは俺じゃない」とw
ぎたろー なんなら、自分はジャッキー・チェンの側だと思ってましたから。
フクスケ モンスターと和解できてよかったね。その後、ぎたろー君は福岡から上京して、一度会社員になるんだよね? ダンスと出会うのは、まだ先なの?
ぎたろー 実は、福岡時代に一度だけコンドルズの近藤良平さんに会ってるんですよ。地元で開催された彼のワークショップに参加して…
フクスケ あ、ちょっと待って。肉の出前がきたみたい。
ぎたろー 食べましょう!
フクスケ いや、でも、せっかくだから切りのいいところまで話してから…
ぎたろー いま食べましょう! すぐ食べましょう!

うわあー!
↓

むっひょーー!!
フクスケ こいつ、話と違うよ…! 全然屈折してないじゃないか…! 直球だ…! 直球デブのおでましだよ…!
ぎたろー うわー、おいしそう! これ、かぶりついていいですか? かぶりついていいですよね? ていうか、もうかぶりついてます!(もぐもぐ…)

やっぱこれだね!
フクスケ こいつ自身がモンスターだったんだな…。
次週、いよいよ最終回!
果たしてフクスケは、肉の虜となってしまったぎたろー君から
自身のダンス哲学を聞き出すことができるのか!?
<つづく>
第4回「デブとダンス」はコチラ
(文責・福田フクスケ)
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