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第4回「デブとダンス」(4/4)


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第4回「デブとダンス」(全4回)


ともすれば揶揄や嘲笑、ただの悪口とも受け取られかねない
「デブ」という言葉に、新たな息吹を与えたい。

そこで、我われ大塚ニューコーポは、
ポップでポジティブなデブが明るく生きる姿を見てもらいたくて、
イケてるしヤバいクラウドファンディング「CAMPFIRE」において、
このようなプロジェクトを掲げました。

「日本一踊れるデブ・ぎたろー君のポーズ集を作って全国のデブに夢と希望を与えたい!!」


これまで3回にわたって、このプロジェクトの主役である
ダンスカンパニー「コンドルズ」の新人・ぎたろー君に、
むせかえるような生々しいデブの本音をインタビューしてきたのですが…。

自分の心に潜むデブキャラというモンスターに葛藤し、
ときに反目しながら生きてきた彼の
ノーカロリー・ノーライフな半生は思いのほか壮絶!


階層は貧困、体格は貧弱、人間的には貧相という三重苦を抱え、
「貧しさのヘレン・ケラー」の異名を誇るインタビュアーの福田フクスケも、
最初はぶっちゃけ遊び半分でデブの相手をしていましたが、
自分のキャラを受け入れ、真摯に向き合うぎたろー君の生きざまに
徐々に理解と共感を示しはじめます。

ミスター満漢全席こと、肥やし系男子のぎたろー。
ミスター満身創痍こと、もやし系男子のフクスケ。

体型も生き方もまったく違う2人のトークセッションは、
抱擁で幕を閉じるのか、はたまた決裂に終わってしまうのか!?

感動の最終回が、いま、幕を開ける…!!

gitaro_60-60.jpg上京するとき父親に言われた衝撃の一言

ぎたろー (肉を食べている)モグモグモグモグムグマグモグモグマグ……

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フクスケ …………。

ぎたろー (肉を食べている)モグモグモグモグムグマグモグモグマグ……

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フクスケ …………。

ぎたろー (肉を食べている)モグモグマグm…

フクスケ (意を決して遮り)あ、あのさ! ぎたろー君…今って質問してもいい?

ぎたろー (肉を食べながら)ムグマグ……あ、全然いっすよ。

フクスケ えっとその…ぎたろー君のこれまでの最高体重って、いつ頃で、どれくらいあったの?

ぎたろー (肉を食べながら)ムグムグ…えー、そうですねえ、やっぱり映画『極道めし』に出演したときですかねえ…モシャムシャ……MAXで120キロあったんじゃないかな…ングッゴグ…。今は115キロくらいで落ち着いて…ガブッ…ますね…ンマンマ

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フクスケ …うん、そっかそっか。

ぎたろー (肉を食べながら)シャブッ…基本、食べてるシーンの多い映画ですからねー、チャップチャム…でも、ほかの共演者のみなさんはバヒャリシャムッ…うまく食べる演技をしていたところを…ガブチャリムショッピチャマスカッツ…僕だけ本当に食べてたからなんですけどね…ブシャラムハッ…誰もハプバヌアツ…教えてくんな…シャバ…いんだもんシャバズルジャバザハット……

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フクスケ ストップストップ! 俺もだいぶ泳がせるタイプのインタビュアーだけどさ、これはさすがに止めるよ! 遊泳禁止よ!

ぎたろー …モグ?

フクスケ 食いしん坊が食事に夢中でインタビューの受け答えがままならない、ここまではまあベタなお約束としてアリにしようよ。いいよ、わかりやすくて。でも、食べてる擬音がさ、斬新すぎるでしょうよ! 最後のほう、バヌアツとかジャバザハットとか言ってたし。あと今も「…モグ?」ってもはや口で言っちゃってるしね。

ぎたろー きめのこまかいツッコミをありがとうございます!

フクスケ いいから、そういうのは! せっかく生い立ちを順調に語ってもらって、まともなインタビューみたいになってたんだからさ! 肉がきたから、大事なところで話中断しちゃったじゃない。

ぎたろー わかりました話すよ話しますよ。

フクスケ たしか、それまで演劇をやっていてもデブ役を受け入れられなかったぎたろー君が、カラオケで宴会芸的にジャニーズの振付を踊って「デブがウケる」ことの喜びを知ったんだったよね?

ぎたろー 典型的な説明ゼリフ、ありがとうございます!

フクスケ だから、いいからそういうのは!

ぎたろー でも、説明ゼリフがあるからこそ、前回を読んでいない読者もスッと話に入っていけるし、ただでさえ寄り道が多いこの連載の流れを戻すことができるんですよね?

フクスケ よせやい! 照れるやい!

ぎたろー ただ、今のはちょっと無理やりすぎるというか、いよいよ寄り道が多すぎて企画の趣旨がブレてきてると思うんですけど…

フクスケ うるさいよ! とっととダンスと出会ったときの話をしようぜよ! ニッポンの夜明けぜよ(俺がこの原稿を書いている時間帯が)!

ぎたろー つまり、コンドルズの近藤良平さんとは、福岡にいた頃に実は一度会ってるんだって?

フクスケ ええ、そうなんですよ。2003年に良平さんがワークショップを開いたときに、知り合いの女優さんから……って、逆! 逆!

ぎたろー おおおー。

フクスケ ちょっと長めのノリツッコミしちゃったよ! あと、完全にバカにした感じの「おおおー」やめろ!

ぎたろー 僕、M-1グランプリに出場して2回戦まで行ったことあるんで、一緒に漫才しませんか?

フクスケ おことわりだよ! 話せ! お前もう自分から話せ!

ぎたろー 2003年に良平さんがワークショップを開いたときに、知り合いの女優さんから「ぎたろーは絶対参加したほうがいい」と勧められたんですよ。すごくかわいい方だったので、言われた通りに参加したらなにかご褒美的なことがあるのかな、と思って……(笑)

フクスケ こーのエロブタ!

ぎたろー あ、そういうのはいらないです。

フクスケ ……(´・ω・`)

ぎたろー 定員制なのでオーディションを受けに行ったら、ほとんど男はいないし、もちろんデブなんて僕ひとりだけ。受かったのはいいものの、僕はダンスなんて一切できないわけですよ。

フクスケ ……(´・ω・`)

ぎたろー …ここはなんか返してくださいよ! 「不安だったでしょう?」とか。

フクスケ ……………………………………不安だったでしょう?(棒読み)

ぎたろー でも、良平さんは「できることを当たり前にやるんじゃつまらない」という考えの人。「できるかできないかギリギリのことを一生懸命やるから胸を打つんだ」っていうんです。だから、動けない僕が必死に踊る姿がおもしろいっていう見せ方をしてくださる。そのセンスがすごいなあって感動したんですよ。

フクスケ ……(´・ω・`)

ぎたろー なんで黙ってるんですか! ここ、けっこう大事なところでしょうよ!

フクスケ …なるほど、それで良平さんに付いて上京し、ダンスを始めるんだね。

ぎたろー いいえ、僕、そのあと就職してるんで。

フクスケ ……え、からかってんの? もう俺はインタビュアーとしてやってく自信がないよ!

ぎたろー まあまあ、落ち込まないで。そのときは、良平さんのもとでやることが楽しかっただけで、ダンス自体に興味を持ったわけじゃなかったんですよ。それに、役者だけで食っていける気はしなかったし、高校からもらっていた奨学金を返済するためにも、一度社会人を経験して働こうと思ったんです。

フクスケ それで大学卒業後、まずは就職したんだね。

ぎたろー はい、2004年にヨドバシカメラに入って、新宿西口店勤務になったのを機に上京しました。親には役者になることを反対されましたけど、30歳までに「これで食えるようになる」という道を見つけることを約束して東京に出てきたんです。

フクスケ そのとき、お父さんに衝撃的なことを言われたらしいね。

ぎたろー 急に黒柳徹子みたいな話の振り方をしますね! そうなんです、空港まで送ってもらう車の中で、「もし女ができて、子供ができたらどうするんだ」と聞かれたので、「そのときは、奥さんに役者を続けてもいいか相談する」って答えたんですよ。

フクスケ まあ、普通はそうだよね。

ぎたろー そしたら、「堕ろせって強く言えよ!」って激怒されたんです。「甘いんだよ! 本気で役者になりたいなら、そこは堕ろしてくれって言うんだよ! それが男だろ!」って…。

フクスケ すげー披露しづらいエピソードだよそれ。息子へのエールは感じるけど、単純に「いいお父さんだね」とも言えないし…。「すごいお父さんだね」としか……。

ぎたろー それが、上京前に父親からもらった最後のメッセージでしたね。

フクスケ ……(´・ω・`)




gitaro_60-60.jpg僕が学んだ近藤良平イズム


ぎたろー その後、ヨドバシカメラには4年間勤務するんですけど、貯金もたまったので2008年に辞めて役者に専念することにしました。

フクスケ それから小劇団の芝居に出演するようになったんだね。良平さんと再び出会ったのもこの頃?

ぎたろー はい、コンドルズの公演を見に行ったときに楽屋へ挨拶に行ったんです。そしたら、良平さんが演出するダンススクールの発表会に誘われて、それからダンス界隈にも出入りするようになりました。ある日、コンドルズの次回公演の手伝いにこいと呼ばれて行ったら、チラシの出演者に僕の名前が載ってたんですよ。

フクスケ すごくいい話だなあ、それ。自分のどういうところが良平さんの目に留まったんだと思う?

ぎたろー 業界的に、踊るデブが不足してたんじゃないですかね。僕には技術もないし、人を感動させる素養もないので、「太っているのに楽しそうに踊っている」という一点を評価してもらったんだと思います。デブというコンプレックスも、生かせば強みになるということを教えてもらったのが良平さんですから。自分の動きの何がおもしろいか、実はまだよくわかってないんですけど、見ている人が楽しんでもらえるなら、それは嬉しいですね。

フクスケ とんとん拍子でコンドルズに入ることが決まったのは、やっぱりぎたろー君の魅力なんじゃないかな。

ぎたろー あ、でも僕、単年契約なんで、毎年夏の公演が終わると一度クビになるんですよ。コンドルズには坊主頭ふたりの「ハゲツイン」がいたので、今度はオクダさん(コンドルズの自称「テレビに出られない方、踊れない方担当」のオクダサトシさん)との「デブツイン」を試すために呼ばれたんじゃないかっていうフシがあって…。デブツインが実現した時点で、良平さんの中で僕のブームはすでに終わってるんじゃないかビクビクしてます。

フクスケ 「デブであること」に飽きられたらおしまいだと…(笑)

ぎたろー 「イジられるための素材」という段階からは、そろろそろ脱しないと。勝山さん(コンドルズのプロデューサー・勝山康晴さん)には、ダンスの素養を身につけるためにタップダンスを習えと言われてるんですけどね。

フクスケ でも、去年は映画『極道めし』に出演したり、蜷川幸雄演出の舞台『あゝ荒野』に出演したり、順風満帆に活躍してるよね。1月9日にはついに30歳になって、お父さんにも「これで食っていけます」って言えるようになったんじゃない?

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(ちなみにこの写真は、ネットから勝手に拾ってきたのではなく、広報担当の方の許可を得て掲載していますよ)
©2011『極道めし』製作委員会 ©土山しげる/双葉社


ぎたろー 人に自慢できる話のネタはできたけど、収入的にはまだ全然追いついてないですよ!

フクスケ 早くお父さんに胸を張って「役者になりました!」って言えるといいね!

ぎたろー でも僕、思うんですよ。今って「一億総デブの時代」なんじゃないかなって。インターネット見てくださいよ。みんな上から目線でもの言うでしょ。言葉がひとり歩きして、自分が肥大化しちゃってるんだね。

フクスケ ん? ぎたろー君…?

ぎたろー 理想化された自分に、生身の自分が追い付かなくなっちゃってるんだろうな。目や舌ばっかり肥えて現実じゃ満たされないから、恋愛や結婚もしにくくなってる。知識や理想で着太りして、逆に身動き取れなくなってるんだろうね。体じゃなくて、みんな心がデブなんだよ。

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みんな、心がデブなんすわ。

フクスケ あの…いきなりキャラ変わってない?

ぎたろー ほら、そうやってキャラに縛られて人のことを色メガネで見るのも、心が太っている証拠さ。僕はねフクスケくん、この太った体で踊ってみせることで、自分がいかに余計な脂肪を心にぶら下げて生きているか、みんなに気付いてほしいんだ。

フクスケ しゃべり方まで変わってる…!?

ぎたろー 生身の自分を見てごらん? しょぼいだろ? しょうもないだろ? でも、キミはそのしょうもない体で生きていくしかないんだから。だったらせめて、一生懸命踊ってごらんよ。少なくとも僕は、「ホントの自分を見てくれ!」なんて奢った気持ちで踊ってなんかいない。デブに生まれた不自由と悲しみを背負いながら、「でも、それでもいいんだよ?」っていうスタンスで踊ってる。それを見て、笑ったり感動したりしてくれる人たちがいるなら、僕は満足だ。

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(いつになく凛々しいぎたろー君。服のサイズがなくてどうしてもB系ファッションになってしまうのが悩みとか)

フクスケ ぎたろー君…キミって奴は……。

ぎたろー それが、僕が学んだ近藤良平イズムさ(晴れ晴れとした顔で天に向かってサムズアップ)!

フクスケ ぎたろー君、感動したよ! 俺、キミのこと誤解してたよ! キミは……サイコーのデブだ!

ぎたろー てっへへ! よせやい! 照れるやい!

フクスケ 俺は今まで、心のどこかでデブの気持ちなんか理解できないって思ってた。ネタにして、おもしろがってた。でも、違うんだね。俺だって、実はデブの一味だったんだ。モンスターを飼っていたのは、僕の心だったんだね!

ぎたろー ふふふ…やっと会えたね(©辻仁成)。僕の正体は、キミの心に棲むモンスターそのものさ。

フクスケ つまり…キミは俺自身ってこと…!?

ぎたろー そう、デブがおまえで、おまえがデブでデブが尾美としのりなら、キミは小林聡美なのさ!

フクスケ ああっ! それ2回目だぞ!

ぎたろー てっへへへへ!

フクスケ あっはははは!

ぎたろー お前は森で、私はタタラ場で生きる。ともに生きよう!

フクスケ ていうか、ついでに歌おう! 歌っちゃおう!

ぎたろー音頭

でーぶでぶでぶ でーぶでぶ
キミの心のぜい肉で ひとりのデブが踊ってる
でーぶでぶでぶ でーぶでぶ
この世の夢や欲望の 太りきれない悲しみを
でーぶでぶでぶ でーぶでぶ
明日は笑って済ますため 今夜もデブが踊ってる 

ハァー 太れや太れ 肥え太れ
和式便所は かなりつらい
明日は大盛り食えるといいな
ふとり教育 劇団ふとり
ハァーア そいやさあ ぎたろー音頭


でーぶでぶでぶ でーぶでぶ
サイト開いてたわむれに CAMPFIRE見てみよう
でーぶでぶでぶ でーぶでぶ
財布開いておもむろに カード番号ひかえよう
でーぶでぶでぶ でーぶでぶ
登録しようそうしよう ついでにパトロンなっちゃおう

ハァー 太れや太れ 肥え太れ
残り3日だ けっこうやばい
いつかは姉に会えるといいな
ふとりっ子政策 咳をしてもふとり
ハァーア そいやさあ ぎたろー音頭

こうしてふたりは――

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誰のものとも知れぬ、たゆたう腹の肉の上で――

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いつまでもいつまでも踊り明かしたという……。

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<おしまい>

(文責・福田フクスケ)


残りとうとう3日!

まだ間に合います!

助けてください!

いよいよ後がない崖の淵のポニョ、
背水のデブことぎたろー君に
救いの手を!


ぎたろー君×大塚ニューコーポの
プロジェクト
「日本一踊れるデブ・ぎたろー君のポーズ集を作って全国のデブに夢と希望を与えたい!!」
に、みなさまの支援を
よろしくお願いいたします!
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 現在は支援の募集を終了しています。


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