- 2012.01.07 Saturday
- 五体肥満足―知られざるデブの生きざま

第1回はコチラから
第2回「デブと欲望」(全4回)
先入観や固定観念といった色眼鏡で
見られがちなデブを、一人の人間として見つめ直したい。
そんな思いから、我われ大塚ニューコーポは
CAMPFIREという今話題のクラウドファンディングで、
以下のようなプロジェクトを立ち上げました。
「日本一踊れるデブ・ぎたろー君のポーズ集を作って全国のデブに夢と希望を与えたい!!」
そして今回、このプロジェクトの主役である
ダンスカンパニー「コンドルズ」の新人・ぎたろー君に、
デブのありのままの本音を伺うインタビュー企画を敢行したのですが…。
第1回は、日本一のやせぎすライターの呼び声高い
「歩くマッチ棒」ことインタビュアーの福田フクスケが、
デブの気持ちをまったく理解しない無神経な発言を
繰り返したため、いきなり場は険悪なムードに…。
果たしてデブとガリは手を取り合い、
想像力という名の思いやりで歩み寄ることができるのか?
怒号と脂汗が飛び交う緊迫の第2回が始まります!

フクスケ いま、肉の出前頼んだから、もう少し待ってね。飲み物のお代わり、いる?
ぎたろー じゃあ、クリームソーダをもう一杯。
フクスケ …もう撮影は済んだから、本当に飲みたいもの飲んでいいんだよ?
ぎたろー これ言うとがっかりされるかもしれないですけど、ベタに炭酸飲料は大好物なんですよね。肉、炭酸、丼物は、デブを構成する三大栄養素ですから。デブ界のフレミングの法則ですから。
フクスケ 丼物っていうと、どんなのが好きなの?
ぎたろー 普通に牛丼とかカツ丼も好きだし、あと自分でよくやるのは、豚バラ肉を200グラムくらいただ茹でて、ご飯にのせてポン酢とゆず胡椒で食べるやつ。あれは最高ですね!
フクスケ うん、丼物も結局肉だ。 肉、炭酸、肉ってことだね!
ぎたろー でも、僕はどっちかというと炭水化物で太るタイプかな。座右の銘は「チャーハンはおかず」ですから。
フクスケ ということは、お米が好きなんだね。
ぎたろー あ、でもおかずがないとダメなんですよ。僕、カツカレーが好きなんで、家でカレーを用意しておいてカツを買いに行くんですけど、帰る前に我慢できずにカツを歩き食いしちゃって、結局ただのカレーを食べることがよくありますね。
フクスケ あはは、なるほど……って、結局それも「肉大好き」ってエピソードじゃないか!
ぎたろー 「肉大好き」と「ご飯大好き」は一心同体なんですよ! 肉を食べるからご飯が進み、ご飯を食べるとまた肉が欲しくなる。肉がご飯でご飯が肉で。肉が尾美としのりなら、ご飯が小林聡美なんです!
フクスケ たとえに凝りすぎてわかりにくいけど…。ほかに好きなものは?
ぎたろー これもベタですけど、アイスクリームかなあ。今日はがんばったなって日は、自分へのごほうびにハーゲンダッツのラムレーズンをトーストにのせて食べるのがお気に入りですね。
フクスケ 絵に描いたような高カロリーデブフードだね。
ぎたろー 僕、「アイスクリームは飲み物だ」が座右の銘ですから。
フクスケ ふ、ふうん…。さっきからちょいちょいかましてくるけど、なんか無理してない? だいじょぶ?
ぎたろー え、どういうことですか?
フクスケ なんというか、ディテールのそこかしこに、おもしろいこと言おうみたいな「がんばり」がにじみ出ていて、それがちょっと邪魔になってるというか…。正直「フレミングの法則」とかいらないというか……。
ぎたろー いやあ、なんか不安なんですよ。こんなデブのリアルを垂れ流しても、正直みんなおもしろいのかなって……。
フクスケ いいんだよ、自然体で! 混じりっ気なしの、純正デブ100%でお願いしますよ! ジェニュイン・デブでいこうよ! これってさあ、そういう企画だから!
ぎたろー ほんとですか? やっぱり僕、無理してましたかね?

無理してますかねえ…不安なんですよねえ…
フクスケ 無理してた無理してた。なんかねえ、文体が俺の書くおもしろコラムみたいだったもん! こざかしかったもん! もっと本音をぶつけてきてくれていいから!
ぎたろー わかりました、ありがとうございます!
フクスケ じゃあさ、気を取り直して、今度は逆にぎたろー君の嫌いな食べ物って…
ぎたろー 豆腐です。
フクスケ そ、即答だね。他にはな…
ぎたろー 豆腐ですね。
フクスケ 居合い抜きのようなすばやさだな! 速すぎて斬られたかと思ったよ。え、なに、豆腐に恨みでもあるの? うわばき隠されたりした?
ぎたろー だって、豆腐って味ないじゃないですか。ご飯のおかずにならないし。そのくせ、大きい顔してメニューに載ってる感じが腹立たしいんですよ。
フクスケ 味がないことはないと思うけど…。
ぎたろー 僕、豆腐で友達なくしたことあるんで。
フクスケ …なにそれ? なにその興味深い話! そうそう、そういうのだよ! そういうのをもっと放り込んでちょうだいよ!
ぎたろー 大学時代のサークルのコンパで、飲み会コースのメイン料理の鍋を、幹事があろうことか湯豆腐にしたんですよ! ありえないでしょ! メインですよ? チゲとかちゃんことか他にいくらでもあるじゃないですか! それを湯豆腐って! 湯に豆腐って! 病人かと! 禅僧かと! 病人の禅僧かと!

豆腐ってさあ……ねえ? 病人の禅僧かと!
フクスケ そ、そんなにキレることかな…?
ぎたろー 今みたいに激怒したら、サークルの友達みんな引いちゃって…。「そんなに言うならお前が幹事やれよ」って、みんなを敵にまわしちゃったんですよ。
フクスケ そ、そっか……。でも、湯豆腐でそんなにキレられたら、俺もぎたろー君のこと嫌いになるかもなあ……。

フクスケ でもさ、そんなに食い意地が…あ、いや、食べ物への確固たる信念とこだわりを持っていると、彼女になる人は大変じゃない?
ぎたろー そんなことないですよ! 僕、基本的によくしつけられた従順な家畜なんで、女性に対してのわがままはあんまりないです。もちろん、食べることに興味があって、ご飯が作れる人ならいいですけど。
フクスケ 具体的にはどんな女性がタイプなの?
ぎたろー 鈴木京香とか、石田ゆり子、本上まなみ、それに最近だと、入山法子とか、テレビ東京の大江麻理子アナ、松丸友紀アナなんかも好きですね。地味で控えめなんだけど、癒し系でちょっと天然入ってるというか…
フクスケ 湯水のように出てくるね。ていうか、こだわりありまくりじゃないか!
ぎたろー 食べ物にたとえると、やっぱりお米、ご飯ですかねえ。
フクスケ ほうほう、そのココロは?
ぎたろー お米って色が白いじゃないですか? 女性も色白の人がタイプなんですよ。それに、お米って最初は固いけど、炊くとふっくらしてくるでしょ? そこも女性と似てるというか…
フクスケ だいじょぶ? そのたとえ、ちゃんと着地できてる? なんか、はからずも変な意味になっちゃってたりしない?
ぎたろー ええと、あとはですね…うーん、値段が手ごろ…
フクスケ やめよう! その辺でやめとこう、ぎたろー君! 無理しなくていいから! 無理してうまいこと言おうとしなくてだいじょぶだからー!
ぎたろー ご、ごめんなさい…。ただ、僕は世の女性に一言もの申したいんですよ!
フクスケ いきなり江頭みたいなこと言って、どうしたの?
ぎたろー 僕がいま、彼女がいないってことを嘆くと、女の子はみんな「大丈夫だよ、太ってる男の人が好きっていう子、いっぱいいるよ?」ってフォローしてくれるんですよ。でも、いざ「紹介してよ」っていうと、「私の周りにはいないんだけどさ」とか「今その子、ちょうど彼氏いるんだよね」とか言って、お茶を濁されるんです。
フクスケ ああ、そういう気の遣われ方はイラッとするね(笑)。
ぎたろー 「デブ好きの女の子」はツチノコとおんなじ。「いるらしいよ」っていう目撃報告はいっぱいあるのに、誰も実際に見たことがないでしょ。いるなら、早く僕の目の前に連れてこいって話ですよ!
フクスケ でも、世の中にはデブと付き合っている女性もたしかにいるから、あながち「ウソだろ!」とも言えないのが余計タチが悪いよね。
ぎたろー 「デブだからお前とは付き合えないんだよ」ってハッキリ言ってくれればいいのに、悪者になりたくない女の自己保身のせいで、世間の実態以上に「デブ好き女子」が多いかのような報道がねつ造されてるんですよ! デブに夢を見させないでほしいんですよ!

デブに夢見せんでほしかとですばい…
フクスケ それはちょっと気持ちわかるかもなあ…。女性の「やさしさ」って、ときに「やましさ」の裏返しだったりするからね。なんだか、デブの引き受けている理不尽が初めて少しわかった気がするよ。なんか、涙出てきた…。
ぎたろー わかってくれて嬉しいです。
フクスケ じゃあさ、つらい失恋とかもけっこう経験してきてるわけ?
ぎたろー そうですね……。会社員時代に受付嬢の子を好きになったときは、恋わずらいで10キロ近くやせましたね。
フクスケ (興奮して)マジで!? なにその切ない話! 俺の中のオカマ的な部分が、そういうキュンキュンした恋バナを欲しがっているわ! ぎたろー君が会社員だったことも驚きだけど、そんな話はあとよ! まずは悲恋の話を聞かせて! 聞かせてちょうだい!
ぎたろー その子、ミュージシャンのゆずが大好きだったんです。だから僕もCDを借りて聞いてみようとしたら、初期のゆずって片思いの歌が多くて、ちょうど自分の状況に重ね合わせちゃって…。文字通りご飯がのどを通らなくなって、人からも「やせたね」って指摘されるくらい体重が落ちました。
フクスケ そう…あなたも大変な思いをしてきてるのね……。
ぎたろー ええ、当時、遠距離恋愛していた彼女にも、電話越しに「浮気してない?」って疑われるくらいバレバレだったみたいで…。
フクスケ ちょいちょいちょいちょい!
ぎたろー …え、なんですか?
フクスケ いやいやいや、彼女って…。え、なに、そんとき彼女いたの?
ぎたろー はい(あっさり)。結局、そのせいもあって別れちゃいましたけど。

彼女? はい、いましたけど?
フクスケ なんだよなんだよ浮気しようとしてたってことじゃねーかよ涙返せよやせてんじゃねーよ!
ぎたろー えええええーーー!? なんか今、せっかくわかり合いかけてたのに……。
フクスケ 話が違うよ! なんだよ! モテモテデブかよ! 涙返せよやせてんじゃねーよ太っちゃえよ!
ぎたろー いや、あの、それはまあ、結果的になんにもなかったわけですから、ね、いいじゃないですか!
フクスケ もういいよ、じゃあセックスの話しろよ! デブのセックスの話しろよ、みんな聞きたいのはそこなんだから! 興味本位なんだから!
ぎたろー 超感じ悪いじゃないですか!
フクスケ やっぱり正常位は重いから相手に嫌がられたりするの? 股間のシャウエッセンが肉に埋まってやりにくいみたいなことってあるの? 背面座位はさすがにできないよね? シャウエッセンがピヨヨヨ~~~ンってなっちゃうもんね?
ぎたろー あんた、すっかり悪意のかたまりじゃないか!
フクスケ 正常位は彼女の腰の下に枕を敷いたりとかして工夫するの? 「そういえば、たしかに彼女は騎乗位のほうを好んでたかもな…」とか後から思い出したりするの?
ぎたろー もう僕からはなんにも言いませんよ! イエスもノーも言いませんからね!
フクスケ …わかったよ。ちょっといじけたりして悪かったよ。でもね、俺が本当に聞きたかったのは、実はそんな目先のスケベ話じゃないんだ。
ぎたろー あんた今のスケベ話がいちばんノリノリだったよね?
フクスケ それよりも俺が興味を持っているのは、ぎたろー君がいかにしてデブをポジティブなアイデンティティとして確立するようになったのかってこと。今のように自分の体型を生かして活躍するまでには、きっといろんな葛藤もあったと思うんだ。
ぎたろー まあ、そりゃありましたけど…。
フクスケ 今度は、君の生い立ちの話が知りたいな。肉の出前がくるまではあともう少しかかる。ぎたろー君がどんなデブロードを歩んできたのか、教えてくれよ。
ぎたろー 急にまじめになったなあ…。スケベ話のときのあんたの狂気に満ちた目の輝き、僕は忘れないですからね!
<つづく>
第3回「デブと成長」はコチラ
(文責・福田フクスケ)
ぎたろー君×大塚ニューコーポのプロジェクト
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