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デリカシーの機微が問われる現代社会のさまざまな局面に、ぼんやりと警鐘を鳴らす無神経なコラム。

【2012/04/15(日)~04/21(土)】


【4月15日(日)】
雑誌の連載などレギュラーの仕事が取れるに越したことはないが、
単行本や新書といった単発の仕事も大いに取っていきたいと思っている。

著者の方に打診をしつつ、
出版社に企画の売り込みをかけていこうというわけだが、
あれ、これ、あれだな、
やってること、ライターじゃねえな、
ということにハタと気が付く。

あえて言うなら「出版プロデューサー」か。
書いた途端、もーのすごくうさんくさい肩書きで
びっくりしたけど、いや、そうじゃなくて。

もちろん、編集作業にも加わるし、
語り起こしという形で原稿も書きたいわけだが、
たとえば仮に、著者と企画だけが採用された場合、
「企画を考えた」分の私のギャラってもらえるんだろうか。

実際問題、いい企画を思いついても、
タイミング的に自分が編集や執筆に関われないときだってある。

そんなとき、糸井重里のような人なら「企画」「原案」「監修」として
クレジットされるだろうが、私のような一介のライターが
「企画だけ売ってお金にする」ことは可能なのだろうか。


アイディアが湯水のように湧き出てくる本物のクリエイターなら、
「そんな尻の穴の小さいこと言うなよ」と思うかもしれないが、
絞り出したわずかの思いつきにしがみつくしかない私のような人間は、
正直なところ、自分が考えるのに費やした時間や、
かけた手間ひまはすべてお金に回収したいという
せこい思いが止められないわけよ。

ちょっとずつ盗塁するみたいに、自分の付加価値を
見つけて主張していかないと生きていけないのだ。


今夜の『情熱大陸』を観てたら、
安藤某冬っていう勝ち気な人が出てたんだけど、
あの人、企画を出したり、オブザーバーとして意見を言うことに対して
そこそこのギャラが発生しているわけでしょ?

これまでは、「私どもみたいな名もなきフリーランスごときは
そんな権利を主張する分際ではございません」といった
ムードが漂っていたような気がするけど、

安藤某冬みたいな勝ち気な人が有名になってくれたおかげで、
「とくに功績がなくても、個人がフリーで自分の付加価値を切り売りして
お金儲けをしてもいいんだ」という風潮が生まれてきたと思うし、

それは私がフリーでいる限りにおいて、
とてもよいことだと思うのである。


ま、そんなガツガツと意地汚い話はさておき(意地汚いのは私だけだが)、
今日は大人計画本公演『ウェルカム・ニッポン』を観劇。

いまやすっかり売れっ子揃いのオールスター劇団となり、
劇団員がほぼ総出演するというだけでも貴重な機会なのに、
その「ありがたさ」を無効化するかのように
主人公が思いっきり知らない外国人(しかも出ずっぱり)という、
いつまでも挑戦的な姿勢を忘れないところが素晴らしい。

中年になってもベテランになっても人気脚本家になっても
『マルモのおきて』で国民から愛される俳優になっても、
みんな平等にギャグまかされるし、脱がされるし、濡れ場演じさせられる。

お前ら今はそれなりにいい生活してるけど、
もともとはドブみたいなところから出てきたことを忘れるなよ、
いい気になって決してありがたがられるなよ、という、
これは松尾さんの劇団員に対するわかりにくい愛なんだろうなあ。


物語の舞台は、東京の轍区(わだちく)という、
都築響一『東京右半分』的な場末感漂う町。
うすっぺらでクズで残念で心の腐った人たちが
どうしようもなくそれでも生きていくさまを描いている。

スケッチのような場面の積み重ねで構成されており、
これでもかと繰り出されるスラップスティックな
ギャグやキャラクターの応酬は爆笑の連続。

背景に震災や原発を匂わせつつも直接のドラマ性は持たせず、
それらとは関係なく続いていく彼らの人生に、
やりきれなさがより浮かび上がってくる。

今まさに離婚しようとする夫婦や、
年老いてボケてしまった母親を抱えた男といった登場人物からは、
いつになくリアルな松尾さんの苦悩が垣間見えて、ちょっと切なくなった。


しかし、なんといっても圧巻だったのは、
劇の終盤近く、体育教師の子供を孕んでしまった女子高生が、
子供を産む決意をして教師の母親に電話越しに言い放つセリフだ。

「あんた70歳くらいでしょ。一番おいしいお年頃だよね。戦争からも放射能からもうまいこと逃げ切って、年金もらいながら、ぬくぬくボケていくつもりだろ!そうはいくか、逃がさない!」

「万引きババアだかふんどしババアだか知らないけど、死ぬまで面倒みるよ。日本のいいとこどりして人生逃げきろうとしたあんたが、どうやって無様に死んでくか、見届けてやるよ」

(セリフはいずれも白水社刊『ウェルカム・ニッポン』より引用)

…鳥肌立った。
そして、泣きそうになってしまった。
過激なセリフだが、ただの不謹慎や悪罵じゃない。

滅びゆく者の不幸。
生まれてくる者の不幸。
そして、こんな国のこんな状況の中で、
それでも生き続けていかなければいけない者の不幸。

すべてを引き受ける、重たくてしんどくて切実なセリフだった。

こういうことを言ってのけるから、
松尾さんの作品にはいつもガツンとやられるのだ。


『水曜どうでしょう』は録画したけどまだ未見。


【4月16日(月)】
土日のうちに書かなければいけなかった原稿1本が
終わっておらず、慌てて仕上げる。

小・中学校時代の同級生で現在は芸人をやっている友人に、
ワロップの放送に出てもらおうと思って打診していたところ、
「今夜空いてる?」といきなり連絡があり、会うことに。

よくよく考えてみたら、彼と面と向かって会うのは実に中学卒業ぶりだ。

というのも俺は学生時代、たしかレポートが終わっていないとか
そういうハートウォーミングな理由で成人式をあっさり欠席しており、
普通の人ならそこで再会してゆるやかに結成される
「おな中のコミュニティ」みたいなものからうっかり脱落し、
以来、地元の幼馴染との交流が疎遠になってしまっているのだ。

彼は、高校時代にジュノンボーイのファイナリストに選ばれた
イケメンでありながら(ちなみにそのときのグランプリが小池徹平)、
俳優の道を迷走するうちに芸人の世界に足を踏み入れ、迷走しすぎて
「ジュノンボーイなのにオムツをはいてパンパースマンと名乗る」という
絶望的に迷子なキャラクターに着地したという、なかなかに味のある人物だ。

中学時代は同じクラスで普通に話もする間柄だったとはいえ、
正直、一緒に遊ぶほど仲が良いわけでもなく、
いわゆる「所属グループ」は違っていたわけだが、
こうしておよそ15年の時を経て再会した数少ない友人が
彼だったというのも、おもしろい話だ。

私としては、30歳を目前に同じ迷走する者どうし
多少のシンパシーを感じてのアプローチだった。

のだが、よくよく話を聞くと、彼は芸人以外に
アパレル関係のセレクトショップを経営しており、
そっちがかなり軌道に乗っているので生活は安泰らしい。

世間の28歳として人並みか、あるいはそれ以上の暮らしをしている様子に、
私のシンパシーはかなり一方的だったことを思い知らされたのだった。

ぎゃふん!

いやあしかし、人生どこで曲がり角を曲がり損なうかわからないよ。

…って、曲がり損なったこと前提で話をしている私も私だが、
少なくとも世間のいう「学歴」的にはかなり順風満帆なステージを
上ってきたにもかかわらず、今こうして明日をも知れぬ暮らしをしている
私は、かなりいろんなものを棒に振って生きてきたんだなあと、
己の業の深さにあらためてびっくりした次第である。

みんな、普通の28歳のロールモデルをまっとうし、
それなりに稼いで、それなりの地位になって、
それなりに結婚したり家庭を持ったりして、それなりに生きてる。

その「それなり」が、俺にはちっともできなかったわけで。
つくづく迷子は俺のほうだったのだと痛感したですよ。


あと、俺がぼんやり生きていた中学時代、
みなさん割といろんなことしてたんですね、という
衝撃的な事実もいくつか知った久々の再会劇なのだった。


【4月17日(火)】
ネットの記事原稿2本。

今、雑炊作りにハマッているんだけど、
昨日はカレー雑炊、今日は味噌仕立ての雑炊と、
ともにプロ級の美味しさを叩き出してしまい、
これはもう雑炊屋が営めるのではないだろうかと思っている。

生のゆず皮を削って入れると、なんでもうまいな。

『ロンドンハーツ』『リーガルハイ』『コドモ警察』『たりないふたり』と、
今期は見たいテレビ番組が火曜日に集中しすぎている。

それにしても、『コドモ警察』おもしろいなあ。

発想勝ち、やったもん勝ちの企画ではあるし、
普通なら出オチのコントで終わってしまうところだけど、
脚本の福田雄一がそのツボをちゃんと押さえて成立させてる。
彼は福田界の希望の星だと思う。

俺が福田の足を引っ張っているな。

『リーガルハイ』は、今のところ堺雅人の演技が圧倒的に素晴らしい。
『たりないふたり』は、後半の漫才パートが、前半のトークパートを
フリとして活かしきっているのがお見事としか言いようがない。
山ちゃんと若林、ふたりともいろいろ「抱えてる」感じがすごく好き。


【4月18日(水)】
大塚ニューコーポで「大塚の町おこしをする」という企画を温めていたのだが、
ひょっとするとそれが南大塚商店街の自治会の公認のもとにできるかもしれない、
ということで、今日はその代表の方にご挨拶。

ぜひおもしろいことを一緒に仕掛けていけるといいですね、
ということになり、来月のプレゼンに向けて準備することに。


ぎたろーのポーズ集で、世間に注目される喜びを知ってしまった我われは、
もはや誰も見てくれないサイトの記事なんかでは満足できなくなってしまったので、
今後は世間から確実に注目されることだけをしていきたい所存。

つまり、できるだけ最短ルートを辿らないと、
もう悠長なこと言ってられねえぞってことなんすけどね。


ポーズ集といえば、なんと某出版社の新人編集者の方が
デブポーズ集を「出版」できないか興味を持ってくれたらしく、
大塚での打ち合わせの余韻も冷めやらぬまま、六本木でお会いすることに。

残念ながらというか当然というか、現状での「出版」は
まず難しいだろうという話になったわけだが、それでも
「興味を持ってもらえた」ことがまず嬉しい。

しかし、制作にかかる赤字を回収するためにも、
カメラマンの方にまともなギャラを支払うためにも、
本気でどこかから出版してもらいたい気持ちでいっぱいだ。

アスペクトとか、白夜書房とかに、持ちこんでみていいでしょうか。

『マツコ&有吉の怒り新党』を録画するが、見る暇なく未見。


【4月19日(木)】
スマホ向け放送局「WALLOP」のレギュラー番組
「大塚ニューコーポのパヤッパヤ革命」3回目。

今日のゲストはデブポーズ集でおなじみのぎたろー君と、
OnlyFreePaperをはじめ、「nomazon」「五感書店」など
数々のプロジェクトを立ち上げる石崎孝多さん。

石崎さんの活動がキャッチーだったおかげで、
ネタの仕込みも事前にちゃんとできていたし、
「打てば響くデブ」ことぎたろー君の当意即妙な返しもあって
わりかし番組としては充実していたように思う。


谷村美月が好きなので『たぶらかし』を録画しているのだが、
まだ一話もまともに見れていない。


【4月20日(金)】
某出版社のウェブサイトの編集部に、
企画売り込みのためのご挨拶。

今週、何件か挨拶や打ち合わせをしたことが、
すべて仕事としてつながる可能性のある大事な売り込みだ。
くれぐれも形にしたいなと思う。

ネット記事の原稿を2本。


北海道の熊牧場から熊が逃げ出し、従業員が襲われて死亡した事件。

フジテレビの現地中継のレポーターが「熊坂さん」という
名前だったことに、言いようのないスリル感が襲う。

わざとだとしたら、相当やらかしてるが、
わざとじゃなかったとしても、なんというか、脇が甘いよ。

「ツッコんだら負け」とも思いつつ、
一億総ツッコミ時代である昨今、ツッコまれる側の
うかつにツッコまれないための危機管理もまた重要ではないだろうか。


今、日本でいちばん最先端のバラエティ番組といえば、
NHK教育の障害者情報バラエティ『バリバラ』なわけですが、
「障害者合コン」「障害者が日頃やっているモテテクニック」という
初回の振り切った内容に比べると、やや落ち着いてきた印象。

国営放送でここまでできるんだ、ということを知ってしまうと、
いつまでたってもテレビに障害者が「普通」に出てこないのは、
無用の自主規制がいかにテレビを窮屈なものにしてるかってことっすよね。


【4月21日(土)】
「ももいろクローバーZ春の一大事2012 横浜アリーナまさかの2DAYS」に、
まさかの2日とも参戦することになった。

今日はその1日目。
まさかのセンターステージすぐ横のほとんど最前列という良席。
かぶりつきの距離で見るももクロの5人は…輝いてたなあ。

途中、れにちゃんがこっちを見てにこやかに笑いかけ、
辺り一面が悶死するという瞬間があったが、あれはヤバかった。

かーくーじーつーに、目が合った。

そう思っている人は周りに数十人いたと思うが、
あれは、あのほほ笑みは、絶対に俺に対してだったね!

そう思っていい近さでしたよ、あれは。


1日目は「ももクロ☆オールスターズ2012」と題し、
ゲストが続々登場するという触れ込みだったので、
すわ前山田かNARASAKIか、はたまたバナナマンか山里か、
という前評判が飛び交っていたが、

フタを開けてみれば、在日ファンクはまあともかくとして、
デュークエイセス、ザ・ワイルドワンズ、青空球児・好児、
松崎しげる、横森良造(アコーディオン奏者)といった激シブの面々(笑)。

ももクロを、ハッスル的なプロレスイズムの継承者ととらえ、
おもしろがって見られる向きならともかく、
これはまあ賛否両論あるよなあ、という野心的な内容だった。


でも、あらためて聞いてみるとソロ曲、ユニット曲はどれもいい曲ばかり。
trfからJB、グループサウンズ、演歌ときて、
松井五郎と林哲司まで取り込んでしまうこの感じは、
やはり他のアイドルでは味わえないニヤニヤ感だ。

前山田健一の安定した仕事っぷりからは、
「ライブで盛り上がるか否か」という至上命題に比べたら
楽曲のオリジナリティや独創性なんてささいなことなのだ、
という確固たる姿勢が伝わってきて潔いよね。


それにしても、なんで俺ももクロ追っかけてるんだろう。
そう考え始めると、もはや理由を見出せなくなって
にわかに虚しさを覚える私も確実にいるわけだが、
ん、ま、それは言わないことにしよう。

ももクロで歯車の狂う人生もあるかもしれないが、
ももクロに罪はない。
ももクロに罪はない。


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