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デリカシーの機微が問われる現代社会のさまざまな局面に、ぼんやりと警鐘を鳴らす無神経なコラム。

第03回「ヘラクレスオオフクダカブト」

福田の蜻蛉日記~すばらしきバグズライフ~
第03回「ヘラクレスオオフクダカブト」



【某月某日】

高校時代の部活仲間の飲み会が地元であってね。

普段、大塚ニューコーポのメンバーといると
あんまり気付けないことなんだけど、
いやあ、着実に来てるわ、結婚&出産ラッシュ

なんというかな、
具体的に日付が決まっているとかじゃないのよ。
むしろ、決まってないにもかかわらず、
「まあ、今の相手と次はもうそろそろ結婚かな」
みたいなことを自然と匂わせてくるあの感じね。

人として段階を踏んで生きている以上、
当然踏むべき手はずとして結婚や妊娠が
視野に入ってきてますよねうちら、みたいな。

意外とそういうところ堅実だな神奈川県民!
というのが偽らざる私の感想であって。

だって、結婚するってことはもう恋愛もセックスも
自由にしてはいけないってことだよ。
自分や相手が心変わりしないという保証と信頼を、
なぜたかだか27歳にして持てるのか。

けっこう本気でわからない虫が今、ここに一匹いるわけ。

みなさん、「自分には人並みの結婚生活が送れる」という
その漠然とした確信はどこから湧いてくるの?
というのを聞きたくて、とうとう聞けなかった福田なのです。

ま、虫なんで聞きたい以前にしゃべれなかったわけですけど。


*****

しかしでもあれだよ。
私が何よりも感動したのは、
虫になってしまったという信じがたい事態にもかかわらず、
同級生たちがこれまでとさほど変わらず
私のことを受け入れてくれたことだ。

みんな私のことを昆虫だとは見なさず、
虫けら同然の人間として扱ってくれた。

「大丈夫だよ、前から虫みたいなところあったし」
「虫になって、むしろしっくりくる感じだよね」
「今まで虫じゃなかったことが不思議なくらいだよ」
「あれ、ていうかとっくに虫だと思ってた」
みんな、私のことを傷つけまいと必死でフォローしてくれる。

私の生態を察してか、会話の中に不用意に
「駆除」「キンチョール」「触角が取れる」
といったフレーズが出てくるのを避けているのがわかるが、
その他はこれまでと変わらずに接してくれている。

みんな、ありがとう。

*****

夜は部員同士で結婚した夫婦の家に泊まりに行ったのだが、
翌朝、玄関先にカブトムシの頭が
いくつも転がっていて
おったまげた。

え、なに?
なんかのサインなの?
ドリカム的に言えば、
「カブトの頭5体陳列 シ・ン・デ・イ・ルのサイン」なの?

もしや、これが昆虫界の通信手段?
虫になった私に、虫神様(そんなのいるのか知らんが)からの
ムシムシテレフォン(そんなの以下略)なのか?

テキパキとパニックに陥りそうになったのもつかの間、
家人に聞けば、夏に入ってからなんとほぼ毎朝、
カブトムシの頭部だけが落ちているのだという。
たぶん、猫やアライグマなどの動物の仕業だろう、とのこと。

そりゃあ、佐川急便のお兄ちゃんが不在連絡票の代わりに
カブトの頭をへし折って玄関に置いていたらすごく嫌なので、
ここはなんとしても動物の仕業であってほしいのだが、
するとあれか、カブトムシを食べる動物にとって、
あのツノの部分はエビフライでいうところの尻尾
ローストチキンでいうところのアルミホイルなのね。

たぶん、ツノの部分を手で持って食べるんだろう。
いやーん、かわいい。

それよりも、毎朝食べ残せるほどたくさんの野生のカブトが
大船に生息していたことに一抹の驚きを禁じ得ないよ。
「え、カントリーマァムって白あんが入ってるの?」くらいの小さい驚きだけど。

俺も食べられないように気を付けなければ。


kagero_03

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