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第2回 レッツ!男尻鑑賞~西洋絵画・彫刻編~

(担当:嘉川轟子)

男尻――それは女胸の谷間よりも深い、神秘の谷。
ダンジリストけなげ&轟子による男尻祭りもいよいよ本編。
さっそく、この深遠なる谷間へと分け入る冒険の旅へまいりましょう。



その1.油断尻
作品No.001 『円盤投げ』/ミュロン

円盤投げの人.jpg

gouko この人、全体に筋骨隆々だけど、尻はなんていうか妙にゆるんでいるというか……

kenage 「油断してる」よね。あまり作り手の愛を感じられない尻。

gouko 胸や腹の筋肉の描写は精緻なのに、尻への関心は薄い気がする。

kenage こんな捻った体勢してたら尻ももっとこう、キュっといくだろうに。適当に「手で盛った」という感じがするね。

円盤投げ(拡大) 1.jpg

gouko でも「全裸でスポーツ」というのはすごくステキ。

kenage 古代ローマでは本当に全裸でオリンピックしてたらしいわよ。

gouko えええぇっ!ソフト●ンデマンドの企画モノみたい!!

kenage 全員ブラッブラよ。円盤投げなんてしたらあなた、ブンッ!ってなるわよ。

gouko 飛んで行っちゃう!すごいハプニングが見られそう……

kenage まさに「珍プレー」盛りだくさんよね~。まぁ入場行進からすでに珍プレーだけど。

gouko そっか、じゃあ尻なんてみんな見慣れてるのね。

kenage その見られてナンボな緊張感の無さがこの「油断尻」に現れているというわけね。



その2.イノセント尻
作品No.002 『アダムとイブ』/ハンス・ロッテンハンマー

アダムとイブ.jpg

kenage あぁ、これは「えぐれるタイプ」の尻だわ。

gouko そうね。しかも尻エクボのみならず「腰エクボ」もあるわよ。貴重なサンプルだよね。

kenage キューピッドのよう……

gouko そこはほら、まだ禁断の実を食べる前だから。

kenage 淫欲を知らない、汚れなき尻なのね。天使のようにイノセントな尻。

gouko 腰エクボもだけど、V字の筋肉とか太腿もいいわねぇ。

kenage 座ってるから尻ホッペがキュッと持ち上がって……なんか尻の上にも尻があるみたいに見えるわね?

gouko ほんとだ。あれ?ここの部分も尻みたいに見えるよ。いろんなところに尻がある。

kenage キュビズムね。尻だけキュビズムよ。

アダムとイヴ(拡大).jpg

gouko アダム、このリンゴを食べなきゃ良かったのになぁ。食べちゃって人類が淫欲に溺れるその直前の、「イノセント尻」最後の記録だね、この絵は。

kenage でもさ……淫欲な尻もそれはそれでいいわよね……

gouko ……いいわよね……(ゴクリ)



その3.不味い尻
作品No.003 『最後の審判』(オルビエト大聖堂のフレスコ画)/ルカ・シニョレリ

最後の審判(ルカ).jpg

kenage これぞまさに男尻祭りね。

gouko 一個一個の尻がどうとかいうレベルではないけど……なんかすごい色の尻がいるわね? そうとう激しく打ち叩かれた後のような色の尻だわ。

最後の審判(青尻拡大).jpg

kenage 不味そうな尻ね……。これだけ人数がいると、中には「わざわざ後ろ向いて、あえて尻見せてる」みたいな人もいるわね。

gouko 尻見せポーズね。オシリーナこと秋山莉奈さんがよく取ってるポーズ。

最後の審判(オシリーナ).jpg

kenage オシリーナがいっぱいね!キャワイイね!

gouko それどころじゃなさそうな様子だけど。果てしなく修羅場っぽいわよ。

kenage でもさぁ、尻って本来かなり滑稽なものじゃない? 宴会で男の人が尻を出すという余興もあるじゃないの。

gouko たしかに。場が和んじゃうわよね、尻があると。「あ、お尻だぁ (´ ▽`)」って。

kenage でもこの絵は和んでる場合じゃない状況の絵なんだわね。

gouko 修羅場なのに尻出しまくりというアンビバレンツ。

kenage そうか、だからあの尻はこんなにまずそうな色なのよ!せっかく修羅場の絵なのに、プリッとかわいい尻だと和んじゃうもんね、観てる人が。

gouko まぁしっかし本当に不味そうな色ね~……。



その4.便宜上の尻
作品No.004 『剣闘士の学校:戦闘』/ジョルジョ・デ・キリコ

剣闘士の学校:戦闘.jpg

kenage 「修羅場における尻群像」という点で前の絵に近い作品。

gouko 修羅場なんだけど尻は出ちゃってるっていうことの滑稽さも味わい深いよね、逆に。

kenage ほんとね。古代の人は尻まるだしの分、どんな場面でも本気でシリアスにはなれなかったんじゃないかなぁ。

gouko シリアスは尻とassで出来ているのにね。

kenage 誰がうまいこと言えと……しかし改めて観ると「どう考えてもわざと尻見せてるよね?」ってポーズの人がたくさんいるわね。

gouko やっぱり前向いちゃうと、珍プレーが見えてしまうからじゃないの? キン隠しのための尻というか。

剣闘士の学校(拡大).jpg

kenage なんでキンはダメで尻はOKなんだ?

gouko やっぱ尻は谷間であって「そのもの」ではないからでは?

kenage 表面上は「決定的なもの」が見当たらないもんね。

gouko たしかに「ここはダメ」という決定打がないのは尻の強みね。描くのも見るのも「まぁいっか」という気にさせられる。

kenage キン隠しのために描かれた「便宜上の尻」という問題については掘り下げる余地がありそうね。「便宜上の尻」制度のせいで、不自然なポーズをとらされたモデルたちは美術史上に数多いはず。

gouko 尻には文句を付けづらい。なし崩し的にドサクサでOKにさせる「なぁなぁ力」が尻にはあるわね。

kenage このような「尻的感覚」は現代人にも大切よ。その持ち前の和みオーラで「え~局部じゃないですよぉ」とか言いながら、なぁなぁでゴールまで持ち込むっていう。

gouko あれよあれよと煙に巻かれている内に最後まで行ってしまうという、その「尻的しなやかさ」が今求められている強さなのでは……ってあれ? なんの話をしてるんだったかしら私たち……


男尻の薫風に惑わされ、何かとても重要なことに気付いたような、それとも逆に思いきり道に迷ったような、けなげ&轟子のふたり。
次回の第3回は、美術史上に類まれなる孤高のダンジリズム画家、フランシス・ベーコンの男尻世界をふたりが彷徨います。
お楽しみに!
(尻ごみせずに来週もジョインass!)

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