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第3回 ドゥ・ザ☆男尻鑑賞~ベーコンの軌跡編~

(担当:嘉川轟子)

フランシス・ベーコン(1909 -1992年)
アイルランド出身の画家。「何気ない日常生活を送っていたらふと暗黒世界のフリークスと目が合っちゃった」みたいな悪夢的な画風の絵画で観ている人を不安にさせる、異能の天才。ゲイ。倫理の授業で習う哲学者フランシス・ベーコン(同姓同名)の末裔。ちなみにこの先祖ベーコンは吹雪の日に天啓を受け、屋外で生の鶏肉に雪を詰め込んでいたところ凍死した。



その1.ベーコンの男尻史を概観する
作品No.005『人体の習作(1949年)』(*1)
人体の習作(49年).jpg


作品No.006『電灯を点ける男(1973-1974年)』(*2)
電灯を点ける男(73年).jpg


作品No.007『人体の習作(1987年)』(*3)
人体の習作(87年).jpg


gouko こうして並べてみると、ベーコンの男尻史の変遷を感じることができるわね。

kenage 49年の最初の尻(*1)はシャシャッとしたラフなタッチだけどプリリと美しい、最も「一般受け」する尻だわ。

gouko うむ。そして四半世紀を得て73年の『電灯を点ける男』(*2)、ベーコンの男尻世界がどのように変化したかというと……

電灯を点ける男(尻3つ).jpg

kenage 3つに割れたのね。3つに割れたのです。

gouko 大事なことなので2回言ったわね。

kenage そしてさらに時が流れ87年(*3)。

gouko この人、顔立ちがちょっと兄貴系ね。さぶ系。

kenage ややクドい顔立ちと、あっさりとした尻のコントラストが映えてるね。

人体の習作_87(濃淡).jpg

gouko 「尻ミニマリズム」とも言えるさっぱりした尻だわ。ほぼのっぺらぼうだね。

kenage ベーコンが亡くなったのは92年だから、死の5年前。この尻は悟りの境地よ。

gouko 最終解脱した尻というわけか……深い。割れ目は浅いが、奥は深い。




その2.美術における男尻軽視の傾向を憂う
gouko しかしこれほどまでに男尻賛美を描いた画家はなかなかいないね。

kenage 星の数ほどある美術品の中から男尻を探そうとしても、なかなか見つからないものね。

gouko 前回の話に出たように、キン隠しとしての「便宜上の尻」が散見できるばかり。

kenage みんな尻を見過ごそうとするのよね。尻は見なかったことにしがち。

gouko 「便宜上の尻」には、尻に対する執拗な視線を感じないよね。

kenage 今そこにある尻を直視していただきたい。

gouko でもベーコンは尻を見つめすぎてちょっと違う宇宙へ行っちゃった感じもあるよね。

kenage 男尻ism(ダンジリズム)のさらなる深みへ向かったのよ。

人体の習作_87(尻宇宙).jpg

gouko ベーコンだったら前回の『円盤投げ』の人みたいな「適当に手で盛ったという感じの尻」は絶対描かないね。下手したら3つに割りますよ、あの捻った体勢だったら。そういう男ですよ。

kenage 限りない愛を感じるわよねぇ。男尻への暗い愛。

gouko Cry 愛!

kenage 発音良く言うとなんか胸に迫って泣けてくるわね……(泣)




その3.けなげと轟子は大変なことに気が付く
kenage (ふと泣き止む)ねぇ……ひとつ気が付いたことがあるんだけど言ってもいい……?

gouko (ハンカチで目を拭いつつ)なぁに?

kenage いや確実ってわけじゃないんだけど……もしかしたら、もしかしたらよ?

gouko (言葉尻に食い込み気味で)保険かけてないで早く言いなさいよ!

kenage この『電灯を点ける男』(*2)の尻はさ、3つに割れてるんじゃなくて、ものすごい速さで横に振ってるんじゃない?

gouko …………

kenage マンガ的な表現技法でさ、こうレレレのおじさんの足みたいな……

gouko …………ありうる!!!!

kenage ブレて見えてるの。

gouko おそろしい速さで振ってる可能性がある……!!!!

電灯を点ける男(振る).jpg

kenage この体勢で尻をすばやく振っているなんて……すごい臨場感だわ。

gouko そう言われてみると、何かほとばしってるものが見えてきたよ。ほらここ。

電灯を点ける男(迸る).jpg

kenage ねぇ、ひょっとしてこの電灯、イイと光るんじゃないの?グッと手に力が入って。

電灯を点ける男(点灯).jpg

gouko そうか。そうなのかぁ……ははぁ~絵画って、一生懸命に観てると色んな新事実が判明するものなのねぇ。

kenage 美術鑑賞ってこういうことを言うのねぇ。いや勉強になったわ。


話の下品さが加速する一方で、意外なケツ論に神妙な気持ちを覚えるけなげと轟子。
テンション尻上がりの次週・第4回はついに禁じ手「春画」の世界に手を出すよ!

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