- 2009.02.21 Saturday
- 俺と貴様の男尻まつり
(担当:嘉川轟子)
その1.ベーコンの男尻史を概観する
作品No.005『人体の習作(1949年)』(*1)

作品No.006『電灯を点ける男(1973-1974年)』(*2)

作品No.007『人体の習作(1987年)』(*3)

こうして並べてみると、ベーコンの男尻史の変遷を感じることができるわね。
49年の最初の尻(*1)はシャシャッとしたラフなタッチだけどプリリと美しい、最も「一般受け」する尻だわ。
うむ。そして四半世紀を得て73年の『電灯を点ける男』(*2)、ベーコンの男尻世界がどのように変化したかというと……

3つに割れたのね。3つに割れたのです。
大事なことなので2回言ったわね。
そしてさらに時が流れ87年(*3)。
この人、顔立ちがちょっと兄貴系ね。さぶ系。
ややクドい顔立ちと、あっさりとした尻のコントラストが映えてるね。

「尻ミニマリズム」とも言えるさっぱりした尻だわ。ほぼのっぺらぼうだね。
ベーコンが亡くなったのは92年だから、死の5年前。この尻は悟りの境地よ。
最終解脱した尻というわけか……深い。割れ目は浅いが、奥は深い。
その2.美術における男尻軽視の傾向を憂う
しかしこれほどまでに男尻賛美を描いた画家はなかなかいないね。
星の数ほどある美術品の中から男尻を探そうとしても、なかなか見つからないものね。
前回の話に出たように、キン隠しとしての「便宜上の尻」が散見できるばかり。
みんな尻を見過ごそうとするのよね。尻は見なかったことにしがち。
「便宜上の尻」には、尻に対する執拗な視線を感じないよね。
今そこにある尻を直視していただきたい。
でもベーコンは尻を見つめすぎてちょっと違う宇宙へ行っちゃった感じもあるよね。
男尻ism(ダンジリズム)のさらなる深みへ向かったのよ。

ベーコンだったら前回の『円盤投げ』の人みたいな「適当に手で盛ったという感じの尻」は絶対描かないね。下手したら3つに割りますよ、あの捻った体勢だったら。そういう男ですよ。
限りない愛を感じるわよねぇ。男尻への暗い愛。
Cry 愛!
発音良く言うとなんか胸に迫って泣けてくるわね……(泣)
その3.けなげと轟子は大変なことに気が付く
(ふと泣き止む)ねぇ……ひとつ気が付いたことがあるんだけど言ってもいい……?
(ハンカチで目尻を拭いつつ)なぁに?
いや確実ってわけじゃないんだけど……もしかしたら、もしかしたらよ?
(言葉尻に食い込み気味で)保険かけてないで早く言いなさいよ!
この『電灯を点ける男』(*2)の尻はさ、3つに割れてるんじゃなくて、ものすごい速さで横に振ってるんじゃない?
…………
マンガ的な表現技法でさ、こうレレレのおじさんの足みたいな……
…………ありうる!!!!
ブレて見えてるの。
おそろしい速さで振ってる可能性がある……!!!!

この体勢で尻をすばやく振っているなんて……すごい臨場感だわ。
そう言われてみると、何かほとばしってるものが見えてきたよ。ほらここ。

ねぇ、ひょっとしてこの電灯、イイと光るんじゃないの?グッと手に力が入って。

そうか。そうなのかぁ……ははぁ~絵画って、一生懸命に観てると色んな新事実が判明するものなのねぇ。
美術鑑賞ってこういうことを言うのねぇ。いや勉強になったわ。
話の下品さが加速する一方で、意外なケツ論に神妙な気持ちを覚えるけなげと轟子。
テンション尻上がりの次週・第4回はついに禁じ手「春画」の世界に手を出すよ!
フランシス・ベーコン(1909 -1992年)
アイルランド出身の画家。「何気ない日常生活を送っていたらふと暗黒世界のフリークスと目が合っちゃった」みたいな悪夢的な画風の絵画で観ている人を不安にさせる、異能の天才。ゲイ。倫理の授業で習う哲学者フランシス・ベーコン(同姓同名)の末裔。ちなみにこの先祖ベーコンは吹雪の日に天啓を受け、屋外で生の鶏肉に雪を詰め込んでいたところ凍死した。
その1.ベーコンの男尻史を概観する
作品No.005『人体の習作(1949年)』(*1)

作品No.006『電灯を点ける男(1973-1974年)』(*2)

作品No.007『人体の習作(1987年)』(*3)



その2.美術における男尻軽視の傾向を憂う

その3.けなげと轟子は大変なことに気が付く



話の下品さが加速する一方で、意外なケツ論に神妙な気持ちを覚えるけなげと轟子。
テンション尻上がりの次週・第4回はついに禁じ手「春画」の世界に手を出すよ!
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